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シンデレラの策略25-2:最終婚約者選び
大広間に案内された直後、最終婚約者選びを始める合図が出されるとすぐに、后の口添えでローズマリーは王の前に進み出た。
「王様、無礼をお許しください。大事な最終婚約者選びの前に、どうしてもお伝えしたいことがございます」
王は軽く頷き、ローズマリーに先を促した。
「私の口から申し上げるのもはばかられますが、エラ様のご両親はすでに他界されており、長いあいだ義理のお母様と二人のお姉様たちと共に住まわれてきました。しかし、最近になってエラ様はご自分こそがベーリング家の後継者であると主張し、お母様たちを屋敷から追い出したそうなのです」
ローズマリーが手を上げると、複数ある扉の一つから兵士に連れられて三人の女性が現れた。
「この方たちがエラ様の義理のお母様とお姉様たちです。私の家の者が街で偶然見つけました」
エラの目の前に立たされた三人は、継母をのぞき怯えた表情をして周りを見回していた。三人とも見慣れたドレスをまとってはいるが、髪は乱れ化粧もしていない。ネックレスや指輪といった宝飾品も一切身につけていなかった。
「私の家の者が見つけたとき、お三方は街の安宿にいたそうです。仮にも貴族の女性が平民の使う安宿に泊まるなんて、考えられません!おかわいそうに…このような仕打ちはあまりに酷すぎます」
ローズマリーの同情を誘うような言い方に、后だけが何度も頷く。隣に座る王は渋い顔をして、ローズマリーと三人を交互に見ていた。
―偶然、ねえ…。なぜ貴族の家の使用人が、平民の使う宿に行ったのか聞いてみたいわ。
エラは無表情のまま内心で毒づいた。リチャードも渋い顔をしている。
ローズマリーが目配せすると、エラの継母が一歩前に進み出た。
「私たちは血のつながりこそありませんが、本当の家族として接してきました。しかし、エラ様はそれが気に入らなかったのでしょう…私は貴族の中でも低い身分の出身ですから」
やつれた顔に涙交じりの声。継母の演技はローズマリー以上に迫真的だった。
「私は嫁いでからずっとベアーリング家を支え続けてきました。エラ様が執事と共謀して金庫をどこかに隠してしまわれたので、泣く泣く家にあった美術品や宝石を売り、最後には屋敷まで抵当に入れて何とか生活を守ろうとしたのです」
「まあ、屋敷まで!」
后がわざとらしく相槌を打った。それに勢いをつけたのか、継母は言葉を続ける。
「ええ。でも、それが良くなかったのですわ。エラ様のお怒りを買って、私たち親子は追い出されてしまいました」
―よくもまあ、そんな嘘がつけること!あなたたちが家計を顧みず贅沢したから、屋敷を売るしかなくなったんじゃない。大体、金庫にはもうほとんどお金なんて入ってないわよ!
エラは怒りで体が震えた。すぐにでも真実を叫びたい。しかし、リチャードが無言で首を振ったので、すんでのところでとどめた。
「王様、このような者を我が息子の嫁にするのは反対ですわ。未来の后には優しく、正義感溢れるローズマリーのような娘が相応しいでしょう」
「…うむ。しかし、一方の主張だけ聞いても物事の正しさは分かるまい。エラ・ベアーリング、何か言いたいことはあるか?」
エラは膝まづいた。ローズマリーには后がついている。下手なことを言えば、后を批判したと捉えられかねない。そうなれば確実にエラの首は飛ぶだろう。
「私は確かにお母様やお姉様に好意を持ってはいませんでした。しかし、お母様たちを追い出してはいませんし、財産を独占してもおりません」
「では、あの者たちが嘘を言っているというのか?」
「私は嘘をついておりません」
「お前が嘘をついていないという証拠は?」
「…ございません」
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