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シンデレラの策略26-2:秘密の暴露
リチャードの助力のおかげで、屋敷は元のような活気を取り戻しつつあった。使用人も新しく雇い、新しい執事もすでに働いている。主人であるエラは数日後に妃として城へ上がるため、後のことはその執事に任せることになっていた。
「ご主人様。お客様がお見えです」
新しい執事は初老の恰幅の良い男だった。リチャードの紹介で来た彼は、もともと別の貴族の屋敷で働いていたらしい。柔らかい物腰と柔和な笑顔はギルバートにはないものだったので、エラにとっては新鮮だった。
「どなた?」
執事は言いにくそうに
「…ローズマリー・グレイ様です」と言った。
ローズマリーの名前を聞いた瞬間、エラは目を見開き、身体を硬くした。
「お帰り頂きますか?ご結婚式の準備でお忙しいと申し上げておきます」
優秀な執事はすぐにそう提案した。しかし、エラは迷った末通すように伝えた。
―ローズマリー様のことだから、ここで断っても城に乗り込んで来そうだもの。だったら、早めにケリをつけておいた方がいいわ。
エラは人払いをしてローズマリーを待った。
いくらも経たないうちに広間の扉が開かれた。扉の向こうには以前とは全く違う様子のローズマリーが立っていた。
「ごきげんよう、エラ様。どうしてそんなに驚いた顔をされているの?」
エラが驚いたのも無理はない。数日見ないうちにローズマリーの目は落ちくぼみ、金色に輝いていた髪は真っ白に変色していた。彼女の身に何が起こったのか、エラは自分の目を疑った。
当の本人はそれに気が付いていないのか、エラの驚愕に気にも留めていない様子だ。ローズマリーは扉が閉まると、椅子に座りもせず早口で話し始めた。
「先日は大失態を犯しましたが、私はまだ諦めておりません。だってリチャード様を真に愛しているのは、この私なのですもの。リチャード様は、王子という責任の重い地位に就かれています。そんな方をお支えできるのは、本当の愛です。リチャード様もそのうちきっと、そのことに気付いてくださいますわ。だから、あなたにはリチャード様との結婚を諦めて欲しいのです」
ローズマリーはそこまで一気にまくし立てた。彼女の目は異様に輝いている。エラはぞっとして言葉を失った。
―狂ってる。普通じゃないわ。これが本当にローズマリー様なの?
目の前にいる人物からは、舞踏会で優雅に振舞っていたローズマリーの面影すら感じられない。
無意識に、エラは下着の中に隠していたコインへ手を伸ばした。
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