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短編小説

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・料理 × ショートストーリー ・『星の約束』シリーズ など短編小説をまとめています。
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#ほぼ毎日note

【改】パンケーキとあの子

分厚く膨らんだ生地。添えられた空気のような生クリーム。たっぷりのシロップ。載せられた食べ物に対して、大き過ぎる皿。 私はパンケーキが好きじゃない。 流行から文化へと定着しつつあるそれは、2人で使うには小さ過ぎるテーブルを占領している。憎らしいほど我が物顔に。 店内にはハワイアンミュージックが流れ、ゆったりした雰囲気を演出しているが、その努力はあまり功を奏していない。その理由は、一つ一つの席が狭すぎるからだ。 おまけに、どの席にも人が座っているから圧迫感は倍増だ。 ち

サラダは料理ですか?(改)

時刻は17時。外はまだ昼間の暑さを残したままだ。 私(桜・さくら)は仕事用のリュックサックを背負い、空いた両手で買い物袋を持ちながらアパートの古びた階段を上り切りった。額から汗が流れて首筋を濡らしたが、両手がふさがっているのでどうしようもない。部屋の前までたどり着いたときには、汗の筋は3本になっていた。 私の部屋、と言っても二人暮らしだから正確には私たちの部屋なのだが、は築15年のアパートの2階にある。アパートは駅からもスーパーからも遠いが、1LDKでそこそこ広く大人2人