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『虎に翼』第5週25話感想 桂場等一郎という人物 ~権威に追従より、在るべき理念を守る

■言葉数は少なく、いつもしかめっ面

 NHK朝ドラ『虎に翼』、第5週は銀行や政界を巻き込んだ大汚職事件「共和事件」を中心に話が進む。この事件で、寅子の父である直言が贈賄の容疑で逮捕されてしまう。

 その裁判の判事の一人を努めたのが、桂場等一郎である。物語の第1話冒頭シーンから登場する人物であり、この作品の重要人物であることには間違いない。

 普段から口数が少なく、いつも眉をひそめていて、どうにも掴みにくい人間だが、この事件において桂場等一郎の魅力が存分に発揮される。

■「権力の介入」と「司法の独立」

 彼はこの事件の黒幕である水沼淳三郎議員から、「君の正義感を発揮するのは今ではない」と忖度することを迫られる。しかし桂場は一笑に付すかのように、それを全く意に介さず、全員無罪の判決を降す。

 裁判後、桂場は穂高先生と祝杯の盃を交わしながら、酒で柔らかくなった口で語る。

「干渉?そんなもんじゃない。あいつらは私利私欲にまみれた汚ねえ足で踏み込んできたんですよ」

第25話より

 水沼議員から迫られたとき、桂場はいつものしかめっ面から表情を全く変えず、何を考えているのかわからなかった。しかし実は彼は怒っていたのだ。権力が司法に介入したことについて。司法が権威に忖度するなんてとんでもない。返り討ちにしてやると。

■「現実主義」という名の現実追従

 現実の裁判の判例では、最高裁で国会や政権に忖度したとしか思えない判決を出すような事例も散見される。
 また、世の中の風潮ではカッコ付きの「現実主義」が蔓延し、強き者に従い、弱き者が声を上げるのを嘲笑するのが、「現実的で賢い」みたいな風潮が広がっている。

 しかし桂場の姿は、現実によく見るそれではない。桂場は権力に介入されても、諸共せず怯まない。「司法の独立」という在るべき理念を守るために、それを妨げるものと闘う姿勢を貫く。

 「現実主義」を隠れ蓑にして権威に媚びへつらうより、司法という場で、理路整然と在るべき姿を貫き通す。彼のその姿は尊く、筆者の目に映った。

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