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『虎に翼』第4週18話 梅子さんの哀しさ、悔しさ、そして歓び
■そのセリフに凝縮されたもの
NHK朝ドラ「虎に翼」、この第18話が放送された第4週では、梅子さんの家庭の事情が明らかにされる。
ピクニックでケガをした花岡が入院した病院で、梅子さんはなぜ自分が法律の道に入ったかを明かす。
「どうして今まで話してくれたなかったの?」と聞かれたときに発せられた、梅子さんの「だって何者でもない私を、皆が好きになってくれたから」というセリフ。
このセリフには、梅子さんのこれまでの哀しさ、悔しさ、そして現在の歓び。すべてが凝縮されている。
■梅子さんの孤独
梅子さんは家の中で居場所がなかった。結婚後、子供をすぐに授かったが、それ以来夫は妾を囲って、梅子さんがいる家に寄り付かない。
また、自分が産んだ子どもも、姑に取られて自分で子育てに携わることを妨げられていた。
弁護士である夫は梅子さんのことを見下し、3人の息子のうち、帝大で同じく法律を学ぶ長男も梅子さんのことを見下すようになってしまっていた。
梅子さんはずっと孤独だったのだ。
■梅子さんの挫折
梅子さんは「若い頃、自分に自信があった」と語った。結婚して早々に妊娠、息子を出産。「良き母、良き妻」になると。
梅子さんは元々「枠」の中に入ろうとしていた。世間が決めた、生き方の「枠」。結婚して、夫の家に嫁ぎ、そこで子を産むこと。
しかし、その「枠」はあまりに辛く、理不尽で耐え難いものだった。
先のセリフの「だって何者でもない私を」という箇所からは、そういった過去の挫折した経験があったから出てきたフレーズでもあるだろう。
■明律大学女子部での出会い
また梅子さんは、「闘うことから逃げていた」とも語った。
梅子さんはある時、夫と離婚して、子どもの親権を獲ることを決意した。
その当時の法律では実質上それは不可能だったが、法律を学んで、その方法を見つけたいと梅子さんは考えたのだ。
そして明律大学女子部に進学。そこで寅子たち法学部のメンバーと出会う。
梅子さんはメンバーの中では年長者。いつもほがらかで、おにぎりを作って皆に配ったり、周囲への気遣いを忘れない。
「梅子さんは素敵な女性です」「梅子さんがいなかったら、私は今ここにいない」。
あのセリフには、何よりもこうした言葉をかけてくれる仲間との出会いに対する歓びが表現されている。
梅子さんは、居場所を見つけたのだ。