『呪いの言葉の解きかた』書評 自分自身を縛る言葉に抗うために 著:上西充子
普段の生活の中で、人から言われたことや自分の中で、自身の思考や行動を縛る言葉がある。
例えば、「普通でなければならない」「理不尽に耐えるのが大人」「社会と他人は変えられない」「弱音や愚痴を吐いてはいけない」などなど。
自分が感じたことや思ったことを、押さえつけ、抑圧する。
聞いた瞬間に息苦しさやダメージを感じてしまう、そんな言葉たち。
なにかがおかしいと思っても、どこがどうおかしいのかうまく説明できない、反論できない。
この本では、そのような言葉を「呪いの言葉」と位置付けている。それが「呪い」であると、はっきりと喝破してくれる。
それが「あなたを傷つけるもの」「あなたのことを否定してくるもの」だと、ハッキリ言い切ってくれるのだ。
「そうか、あれは『呪い』だったんだ」と、ハッと気づかせてくれる。そんな力がこの本にはある。
そのような「呪いの言葉」は、日常の様々な場面…労働、ジェンダー、家庭の中に存在する。
また、「政治」の場面においても「呪いの言葉」は多く見られる。
著者自身が、その渦中にあった働き方改革法案の審議。実態は残業代ゼロの働かせ放題。
著者は労働時間調査データの不備を指摘したところ、国会議員から「恫喝」を受け、「学問の自由」を侵害された。
財務省事務次官の女性記者へのセクハラ問題。財務省・麻生大臣はまともな謝罪をせず、「はめられた可能性」「セクハラ罪という罪はない」と、セカンドハラスメントに当たる発言を繰り返した。
また、世の中には政治を「批判してはいけない」という「呪いの言葉」もよく使われる。
「批判するな」という言葉は、そもそもそれ自体が「批判している」し、「批判するな」といって他人の言葉を奪う権限なんて誰にあるというのだろうか。
この本では、「呪いの言葉」に対抗するための知恵も紹介されている。
自分にかけられた「呪い」に抗いたい。そんな人には、是非とも手にとってもらいたい本だ。