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振り幅の広い短編集

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1ページ完結の短編をまとめました。
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#ショートショート

幸か不幸か【ショートホラー】

幸か不幸か【ショートホラー】

言われてみれば、確かにずっと左の肩が重かったの。

でもあたし、デスクワークだし、インドア派だし、オタクだし。スマホとPCを見てる時間が大半だから、そのせいだと思ってたの。

それがついこの間、同僚の紹介で知り合った変な女の人がね、言うの。「左肩、ついてますよ」って。

ゴミでもついてたかと思って右手で軽く払ってみたら、その人、急に泣き出して「辛かったね、つらかったねぇ」って両腕ごとあたしのことを

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弥立つ果ての銀世界 #旅する日本語

あさみが「温泉行きたい」と言うから渋々蔵王まで車を出す。

中古の軽自動車はずんずん進むが、わたしの頭は引越のことでいっぱいだった。

来週には関東圏の実家へ帰る。就職先で夢破れたわたしには希望もお金も思い出もなかった。

それなのに一昨日から応援に来た幼馴染のせいで一向に進まない。

「帰ったら荷造りね」

「えー今日くらい良いじゃん」

ブレーキを踏むとタイヤが空滑りした。

あさみは銀世界に

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手品師は薔薇を添え、鳩を出さない

手品師は薔薇を添え、鳩を出さない

「私の愛を受け取ってくれないか?」

差し出されたのは薔薇の花束。それも禍々しいほどの深紅が漂う愛の塊だ。

芳しいを通り越してくらくらするような花の香りは妖艶な年上の女性を彷彿とさせる。熟成されたベルベットの花びらの艶やかさが幾本も集まるとまさに壮観の一言で、ピンと張りつめたフィルムに包まれた美しい人は頑強な茨の城で守られ、その気高さを一層増して見せている。

なるほど、薔薇の花束が女性の憧れと

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欠ける、満ちる、食べる。

欠ける、満ちる、食べる。

中国や台湾では、どこも欠けていない満月を「円満・完璧」の象徴ととらえている。中秋節の満月の日に、家族が日本の正月のように集まり、食事をしながら満月に見立てた丸い月餅というお菓子や、文旦という果物を食べる習慣がある。
引用:https://www.gldaily.com/inbound/inbound2611/

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理由なき否定ほど、腹の立つものはない。

結婚前に勤めていた職場の上司は「な

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圧力鍋の真実。

圧力鍋の真実。

貧乏ゆすりで筋肉痛になると知っている人がどれだけいるだろう。

いつも通り朝7時に目を覚ますが、体を起こそうとすると太ももとふくらはぎが拒否する。

妻のゆりが「あなた、朝ごはんー」と呼ぶのにも応えられないまま足の違和感の正体を探るが、昨日はよく晴れた一日なのに一歩も外に出なかったという罪悪感しか思い出せない。

いや、一度だけ外へ出た。ベランダに出て一本だけタバコを吸った。気分転換のために手を出

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物足りなさを分け合って。#文脈メシ妄想選手権

物足りなさを分け合って。#文脈メシ妄想選手権

履き慣れない5センチヒールに足がくたくたになった頃、「なんかアイスでも食べなくない?」という彼と休憩がてらにコンビニへ立ち寄った。もうすぐ午後10時を回るコンビニは人気が少なく、店員さんが一人もくもくと品出しをしている。

そのすぐ横を通り抜けて、わたしと彼はアイスのコーナーへ向かう。キンと張り詰めた冷気が漏れ出す棚に手を添えると、アルコールで火照った体が少しだけ冷めていく気がする。

「どれにす

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次に別れるときは「またな」って言うよ #原稿用紙二枚分の感覚

次に別れるときは「またな」って言うよ #原稿用紙二枚分の感覚

くすんだ緑色のフェンスの前に、千代紙の花で飾り付けられた看板が立っている。「卒業おめでとう」と手書きされた文字は、少し歪んで右に逸れていた。

後輩が書いたんだよ、と遥香が話す。そうなんだ、と返事をして、僕は着古した学ランの横で左手をぶらぶらさせていた。

学校裏の細道に並ぶ桜の木は、まだ満開になりきらないのに、はらりはらりと花弁を手離していた。くすんだカルピス色の空に、渦を巻いた風が薄紅

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【短編】幸せは夜とコンビニご飯の間に。

【短編】幸せは夜とコンビニご飯の間に。

「遅くなっちゃったし、今日はコンビニご飯にしよっか」

彼がそう言って上着を着ていた。季節は春、しかし外は肌を刺すような寒さで、買ったばかりの春コートは活躍する場を失いつつあった。

わたしも彼にならって上着を羽織り、スマホ1つだけ持って家を出る。

今は電子決済サービス戦国時代、カードがたんまり入ったお財布を持ち歩かなくても買い物ができる。便利な時代だ。

彼と繋いだのとは反対の手をポケットに突

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【短編】女達の戦い、時々ブロッコリー #同じテーマで小説を書こう

【短編】女達の戦い、時々ブロッコリー #同じテーマで小説を書こう

僕の彼女は、スーパーモデルだ。

しがない一般人が何を言う、気でも狂ったのかと思われるかもしれないが、本当のことだから仕方がない。それに僕はスーパーモデルと付き合ったのではなく、彼女がスーパーモデルになったという順番なので、誤解のないように。

しかし彼女が世界に羽ばたくまでの道のりは、決して平坦なものではなかった。先々に立ちはだかる羨望、嫉妬、足の引っ張り合い。そして行く手を阻む、ブロッコリー。

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【短編】ぼくはチチチ星人じゃない

【短編】ぼくはチチチ星人じゃない

「おまえ、チチチ星人なんだろ。だからそんなに耳がとんがってるんだ」

さくら組のゆうせいくんがいった。ぼくは口をぎゅっとさせて「ちがうよ」といったけど、ゆうせいくんは聞いてくれない。

「チチチ星人はにんげんをおそって食べちゃうんだ。だからきゅうたと仲良くしたら、食べられちゃうんだぞ」

ゆうせいくんが大きなこえでみんなにいった。

チチチ星人は、よるにだけしゅつげんするナゾの異星人だ。おひさまの

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【短編】パンダにも理由がある。

【短編】パンダにも理由がある。

パンダとしての人生を全うすべく、わたしは日夜研究に励んでいる。

自分がパンダだと気がつくまでに、随分と時間がかかってしまった。わたしは人間の手によって取り上げられ、人間に囲まれて育ったせいで長いこと自分を人間だと信じ込んでいた。

今にして思えば、人間たちとわたしとでは大きな隔たりがあることにも、恥ずかしながら気付かずにいた。人間は二足歩行なのに歩くわたしの足は四本で、肌がスベスベなのも足の裏く

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【短編】プレゼントはいりません。

【短編】プレゼントはいりません。

クリスマスをテーマにした短編小説です。

2〜3分程度で読めます。
以下本編です。

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朝起きると、ベッドサイドに見覚えのある箱が置かれていた。

サンタクロースかな、と考えて自分の歳を思い出す。私は29歳。サンタさんはとっくに卒業したはずだ。

黒いベルベット張りで重厚感のある小箱。光り物が入っているかは明らかだった。

私はベッドから起きだし、軽く体

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「恩師」はいつも後からやってくる(後編)

「恩師」はいつも後からやってくる(後編)

前編はこちらから。

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ごめん、前置きが長くなったね。

三年生になった春、私は学年が一つ上がったくらいで何も変わらないって思ってたんだけど、一つだけ変わったの。それまで部活の顧問だった先生が産休に入って、別の先生に変わった。前の先生はみんなから「ひろこちゃん」なんて呼ばれてるようなゆるーい人で、部活も対して熱心にやってなかった。まだ若いから押し付けられて

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「恩師」はいつも後からやってくる(前編)

「恩師」はいつも後からやってくる(前編)

自分で言うのもなんだけどさ、昔は分かりやすく優等生だったんだ。

勉強は割とできたし、先生に反抗とかしなかったし、スカートも怒られないくらいの長さにしてたし。部活でもそこそこ活躍してたしね。

あの頃の私は流されるままにいい子ちゃんしてて、今で言う「悟り世代」の先駆けみたいな感じだったわけ。大人の言うことには下手に逆らわない、常識はそれなりにってね。まぁ何事も無難にやる器用さもあったから。

友達

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