入学式
同期がこぞって社会に飛び込んでいった春、私はスーツに身を包み、院生として新たな一歩を着実に踏み出した。
はずだった。
代表者のみが出席するとはつゆ知らず、丁寧にアイロンをあてたスーツを着て、張り切って入学式に参上した俺。
結果ものの10秒ほどで会場を追い出された。
もう死ぬほど恥ずかしかった
背中を丸めて足速に去る私に向かって、周りのスタッフや取材陣から浴びる
『おめでとうございます!!!』(大声)
頼むからやめてくれ!!!!!!!!!!!!!!
スーツの女が退場しなきゃいけない理由は一つだろうよ!!!!そっとしといてくれよ!!!!!!!!
自分に非があるのは重々承知なんだけど、こんな時人間は余裕のよの字もない。恥ずかしくて情けなくて穴があったら入りたい。でもそうはいかない。穴がない。
おぼつかない足取りでヒールをカコカコ鳴らしながら急いでチャリに跨った
なるべくスーツ姿がバレないように
"間違えて来ちゃったヤツ"だとバレないように
上着で精一杯隠しながら全速力で帰る、まだ涼しい気候のはずなのに、背中には冷や汗が垂れまくっている。
なのに笑っていた。肩を震わせマスクの下で笑っていた。
羞恥心と面白さのWパンチを自分に食らわせている。
なんてイタいヤツなんだろう。ドMなのか。
笑いながら、独り言を言いながら、
自転車に乗りながら、スーツを着ている女
こわあ。
ちなみにチャリは全速力だ、片桐はいりにそっくりだった漢文の先生くらい飛ばしてたと思う
やっとの思いで家に着いた
よかった、家まで10分、マジさんきゅーな
そこからのことはほとんど覚えてないけど、玉ねぎチヂミ失敗して更に萎えたんだよな
あ、そういえば会場近くでスーツのメンズ2人見つけたんだ。チャリを押しながら2人でとぼとぼ歩いてた(ように見えた)
…………ってフワちゃんだったら行ってたなあ。あんたたちと全力ハグかましたかったよ
あとそんな寂しそうな背中で帰るんじゃないよ、今日はおめでたい日なんだから。
私が言えたことじゃないけどさ。
そんな調子で、ドラマあるある「そんなことある?」をリアルにやってしまった。
「あ〜ンやっちった(^_-)☆」では到底済まされない年齢の女の新生活が、走り出しから滑りまくりのスタートを切ったのである。
そんな私的超面白エピソードのお披露目機会は、未だ現実世界で日の目を見ていない。
残念ながらきっともう話すこともないだろうから、noteにて供養させていただたこう。
みなさんは、小さな青文字で書かれた注意書き、見落とさないようにね。
青こそ、重要。
ありがとうございました。