清航館通信 2021年12月号 「中之作の冬は朝の海を楽しむ」
中之作に移住して9回目の冬が始まりました。我が家の前の海は南東を向いていますので、日の出が見れるのは秋分の日から春分の日までです。夏の間は日の出の方角が北寄りにずれてしまうので、少し散歩しないと日の出を楽しむことはできません。しかし冬の朝陽は南側に移動し我が家の目の前の海から昇るので、窓から見る日の出は毎日の楽しみでした。日の出の時間が近づくと窓から外の様子を確認するのが日課となり。水平線に雲が無い日は面倒だと言う家族を強引に外へ連れ出し、真ん丸で真っ赤な太陽をみんなで楽しむのは当たり前です。雲の量がちょうどいい日は刻一刻と変化する朝焼けを長時間眺めていましたし、太陽が雲に隠れている日でも、雲の切れ間から放射状に光が漏れる「天使の梯子」と呼ばれる薄明光線(はくめいこうせん)を見かけることありますから油断しません。朝陽が好きすぎて会う人みんなに「中之作の冬は朝の海を楽しむ場所だ」と言い続けてきました。
ところが今年、港に面した我が家から港の外を眺めることができる場所に防潮堤が完成しました。太陽は防潮堤から昇りますので、早朝にカメラを持って外に出る気持ちがすっかりなくなってしまいました。
港の残念な話をもう一つしましょう。防波堤に囲まれた港の入り口には船の出入りのために紅白の小さな灯台が建っています。港の防波堤は二重に配置されてあるので、入り口の灯台は2組あります。更に沖の防波堤の先端にも灯台がありますので、夜になると複数の灯台の点滅が確認できます。港の入り口を示す防波堤灯台は陸から眺めると左側が赤で、右側が白い灯台です。夜間の照明の色はそれぞれ赤と緑で全て違ったリズムで点滅しています。海の安全を守っている灯台ですが、防波堤の先端まで歩いていくと想像以上に大きくて驚きます。白いタイル貼りで清閑な立ち姿が魅力の防波堤灯台でしたが、つい先日解体され、白いポールの先端にライトが設置されただけのなんとも簡易な物に付け替えられました。
防潮堤も灯台も必要だから設置しているのでしょうが、その風景を楽しんでいた者からすると機能優先で全く情緒が無いんです。もう少し配慮があってもいいのではないかと愚痴りたくなりますが、そんな目で港を眺めている人は少数派なんでしょうね。
(2021年12月に書いた文章です)