わが町バンザイ!
福島県の海岸線を眺めると東向きのほぼ一直線であることが分かります。地図を北から真っすぐ線を引くと、茨城県の手前で海岸線が南東向きに折れ曲がります。この折り目が塩屋崎灯台ですから、灯台として抜群のロケーションです。この南東向きの海岸線に中之作はあります。港のすぐ裏が山ですので人が暮らせる平地が少なく、海に面した道路沿いと谷沿いの細い道に住宅が密集して建っています。(どうぞ地図で確認してみてください)
南東の海に面していて西側が山ですので、この町の住宅は南東向きが多いです。やっかいな夏の西日がほとんどないので「蒸し暑い夜」がありません。そんなわけでクーラーどころか扇風機すらない家がたくさんあります。海水温度は水の熱容量のおかげで急激に変化しませんので、天気のいい日は陸との温度差で海から山へ、山から海へと心地よい「海陸風」が吹きます。海の熱で空気が撹拌されるので急激な気温上昇や、極端な寒さも緩和されています。つまりこのような条件の港町は、内陸の盆地などと比較すると一年を通じて気温の差が少ない過ごしやすい地域となる条件が揃っています。
気象データを調べてみましょう。残念ながら中之作にはアメダスの観測地点がありませんので5㎞程離れた小名浜の値を参考地として見ていきます。
http://www.data.jma.go.jp/obd/stats/etrn/index.php?prec_no=36&block_no=47598&year=&month=&day=&view=
(知りたい地点を選ぶと様々なデータが検索できますのでお試しください)
過去30年間の8月の最高気温の平均値が27.5℃で、最高気温が35℃を超えた日は過去100年間で5回だけです。ちなみに、最高気温の平均値は、東京:30.8℃、仙台:27.9℃、福島:30.4℃、水戸:29.6℃となっていて、夏に中之作から出たくないのはこれが原因なのだと納得しています。
https://www.data.jma.go.jp/obd/stats/data/mdrr/atlas/maximum_temperature_08.pdf
(8月の最高気温平均値図)
冬の快適性は気温以上に日照です。太陽の光が降り注ぐだけで暖房不要となりますので、多少気温が低くても日射取得熱が多ければ快適になります。古い民家は南側の窓が大きく連続していますが、太陽熱の集熱装置と解釈することができます。冬の季節風であるシベリア気団からの北西の風は、日本海で大量の水蒸気を吸収し日本列島中央部の山脈にぶつかり上昇し雪を降らせます。日本海側の豪雪地帯はこのシベリア気団がによるもので、連日の雪雲により日照時間が驚くほど少ないのが特徴です。雪を降らせた後の空っ風が吹くのが太平洋側です。特に、山脈を二つ超えた地域の空っ風は雲ができにくく、冬季日射量(12月~2月)が特に多い地域は、群馬県前橋市:609.5時間、山梨県甲府市:596.2時間などです。「空っ風」のイメージがある地域は冬の日照時間が非常に長い地域だと言えます。ただし、どちらも盆地ですので夏の気温の高さは強烈で、8月の最高気温の平均値で前橋:31.3℃、甲府:32.5℃と、近寄りたくない気温です。(←比較してしまった地域のみなさまゴメンナサイ!)
気象庁のサイトで小名浜の冬季日照時間を確認すると551.1時間で、全国でもトップレベルです。ちなみに仙台:437時間、福島:398時間、水戸:530時間となっていますので、これらの地域との比較では夏も冬も省エネで暮らせることになります。更に付け加えると中之作はすぐ後ろが山ですので、北西の季節風「空っ風」が地面をたたきつけることが少なく日照時間は長いですが、冷たい風が吹き荒れるような日はさほど多くありません。
https://www.data.jma.go.jp/obd/stats/data/mdrr/atlas/sunshine_02.pdf
(2月の日照時間図)
このように、「夏の気温」と「冬の日照時間」をもとに地域ごとの快適性を比較すると、ボクの住む中之作がどれほどいいところなのかがよく分かります。余談になりますが、そもそもの空調費が少ない地域ですので断熱性能をほんの少し良くするだけで暖房費はほぼゼロになります。我が家は12月24日~3月3日が暖房期間です。それも1台のエアコンをタイマーで1日3時間だけ動かせば家じゅう快適になります。