開幕直前!劇団壱劇屋東京支部「九十九のがたり」番外編 vol.3
こんにちは!劇団壱劇屋東京支部 準劇団員の深井です。
7月18日(木)に開幕するワードレス殺陣芝居『九十九 -つくも-』。インタビュー企画の最後にお話を伺うのは、作演出の竹村晋太朗さんです!
作品について、劇団について、たっぷりお話いただきました。
「九十九のがたり」番外編、vol.1とvol.2はこちらから↓
作品について
ーーまずは『九十九』について。今回さまざまな“九十九神”が登場するように、竹村さんの作品では“神様”が出てくることが多いように感じます。竹村さんにとっての“神様”とはどういったものでしょうか?
竹村 公演の挨拶でも良くお話しするんですけど、「世界中で誰か1人は自分のことを助けてくれる人がいる」ということと、「頑張っている人が報われてほしい」と常々思っているんですよね。
そもそも日本人って無宗教とされる人が多いのに、信仰心はどこかある。そこで思い浮かべる神様って、自分が追い詰められた時に縋る最後の砦みたいな。おそらく海外の人と比べると、より軽くより深く、自分の精神にフィットしているのが日本人特有の神様かなと考えています。救われることもあれば、逆に見放されることもありますが。
僕の作品では、比率的には助けてくれる神様が多いかな?前回の『BLACK SMITH』の天神くらいです、やべえやつなのは(笑)。
でも前回もやばい神様のさらに上に助けてくれる神様がいた。だから、神様は助けてくれる象徴みたいな感じです。
ーー神様がたくさん現れる今作ですが、『九十九』ならではの見どころを教えてください。
竹村 人生において、「走る・歩く・食べる・寝る」という行為がすごく人間らしいなと思っていて。ワードレス作品では、どれかしらの要素を絶対に入れるようにしています。今回は全部入っているんですけど(笑)。
”ワードレス×殺陣芝居”でもあるので、アクションにもフォーカスがあたるようにしています。九十九神たちはバラエティ豊かに戦うので、見た目が派手な”人間CG”的な要素でも楽しんでいただけると思います。
普段は攻め入る主人公が多いのですが、今回の主人公・菜花(なのは)は、守るための戦いになるので、そこがいつもと違うところかな。どう楽しんでいただけるかを考えています。
ーー今回は“ワードレス作品”ということで、「ワードレスならではの難しさがある」と前のインタビューで伺ったのですが、竹村さんとしてはいかがでしょうか?
竹村 これ、劇団員のなかでもめっちゃ齟齬があって(笑)。僕だけ、ワードレスも台詞ありの作品も、関係ない派なんですよ。
(近くにいた西分綾香さんに)関係ない派やねん。
西分 伝えたいことは台詞があってもなくても関係ないけど、俳優として演じるノウハウはめっちゃ違う。
竹村 俳優としても関係ない……僕の中ではあまり違いがなくて(笑)。
というのも、台本を読む時に、セリフとセリフの行間が肝だと思っていて。行間中は喋っていないけど、感じていることや考えていることはたくさんあるし。普段の生活の中でも人に喋りかけるより、内省というか、自分で自分に何かを言っていることが物量的に多い。
例えば、人に「あー、可愛いなー」とわざわざ言わなくて、心の中で「可愛いな」と思うとか。とすると、心の中の方が雄弁だったり、話している量が多かったりするのに、なぜか演劇になると台詞の量が多くなるのも変だなと。
あと、元々アクションをやっていて「殺陣ショーにはなりたくないけど、ショーになりやすいのはなぜだろう」と考えたとき、セリフと殺陣が離反してしまうからではないかと思って。
「じゃあもう台詞いらないじゃん!」と、「台詞がなくても人間って雄弁じゃん!」の結果がワードレス作品なので、台詞はあってもなくてもあまり関係ないなと思っています。そこの感覚をできるだけみんなに渡せたらいいんですけど。あんまり悩むなよ、そこじゃないぞ、もっと気楽にやれよ、って(笑)。
キャスト陣について
ーー今回、初のゲストさんもいらっしゃいますが、そのあたりはいかがですか?
竹村 さっきの話ともつながりますけど、僕は内省というか、異常なくらい1人で頭の中で喋る(笑)。ワードレスの演技は、頭の中で話していることをそのまま体現することでもあるので、内省からのアウトプットの方法が人によってそれぞれ違って。ハードめに出力する人もいれば、動きが少なくなる人もいるし。この人はこうやって独り言を言っているんだなと感じています。みなさんの個性が出るのは面白いですね。
ーー劇団員は、今までにない役どころを担うメンバーも多いですよね。
竹村 今までやっていないことや、得意じゃないだろうなと思うことにもチャレンジしてもらっていて。台詞がないこともありますし、アクションの質だったり、絡む相手だったり、新しいところに取り組んでもらっています。いつも公演が終わってから感想をそれぞれ聞くのですが、楽しんでくれているかな……(笑)。
普段はにこにこしている劇団員の子たちが、台詞がなくなると途端に無口な人になりがちで、それもおもろいな~と。逆に、台詞がなくてもおしゃべりな人もいますけどね。藤島さん(藤島望)とか。
ーー竹村さんも「刻」という役を演じられます。役者として、今回の作品についてはどのように考えていますか?
竹村 台詞ありの作品から壱劇屋に出会ってくださったお客さまもいると思うので、ワードレス作品の案内人というか、指標になれたら。先ほどの話にもあった“自分を助けてくれる神様”のなかでも、分かりやすいところにいるキャラクターかなと思います。
あとは……基本的になんでもやりたいタイプの人間なので、今回は久々に殺陣ができて満足ですね(笑)。ゲストの方と絡むアクションシーンもあるので、頑張らないといけないけど楽しみです。
台詞はなくても、周りの役者たちと喋っている感覚はあって、話が通じまくって転がることもあれば、返事が来ないこともあるし(笑)。1回目の稽古では全然話さなかった子が、2回目ではぽつぽつ返事が戻ってくることもあって、改めてそれぞれの個性や変化を感じています。役者として中に入っているからこそ分かるところかな。
ーー”役者”の時と”作・演出”の時とでは、視点は変わってきますか?
竹村 演出として前から見ている時は、ミザンス(舞台上での美術や俳優の位置関係)を綺麗にして、滞りなく物語を進行させることを優先させます。役者として中に入っているときは、芝居で相手を動かすことが優先になるから、そこが真逆かも。本番が始まったら、後でフィードバックするしかないですし。役者モードで、中でかき回す感じになります。
本番中にも、相手のコンディションを見てアクションの速度や芝居の当て方を変えていて。「今日の西分さんには、ここでけしかけた方がいいな」と思ったら、追い詰めていくくらいけしかけるし。
西分 うんうん。(近くでうなずく)
竹村 お客さまが「今日はここを楽しんでるな」というのを感じたら、そこを強く押し出しますし。客席の温度感も毎回違うので。中からも、外からもアプローチできるのは強みですね!
これからについて
ーー2024年の劇団壱劇屋東京支部にとって、『九十九』は2作品目です。今公演を経て、目指すところを教えてください。
竹村 公演のテーマはいつも「傑作をつくろう」です。自分が学生だった頃は、演劇を観るのにチケットが大体3000円くらい。チケット代を捻出して、どの作品を観るかはめっちゃ考えていて。今のチケット代をどう成立させるかというか、絶対楽しんでもらえるようにというのが第一です。
あとは、壱劇屋を“箱推し”していただきたいという想いが大きいです。団体として良いと思っていただけるということは今後に繋がると思っています。メンバーがばらばらになって売れていくというよりは、劇団として運営を続けていくのが目標です。去年くらいから作品を観ていただける機会が増えてきているので、この2年でもう1段階結果を出したいですね。動員数とか、満足度とか。
また、いま作品を跨いで取り扱っている“階段世界”というテーマに一区切りをつける予定です。10月公演の『APOCADENZA』からその伏線が始まっていくものもあるので、ぜひ楽しみにしていただけたら。
個人としては……ずっとポケモンをつくりたくて(笑)。
ーーといいますと……?
竹村 ポケモンって、僕らが小学生の時からずっとありますよね。ゼロからイチを生み出した作品で、マンネリ化せず幅広く展開していて、コンテンツとして成長し続けているのがすごいなと。モンスターを集めて戦わせるゲームから派生して、道を歩きながら捕まえるとか、寝る時に育てるとか、当初想像もしなかったことが実現されていて。そんなコンテンツや文化になるものをつくりたいです。
他には、歌舞伎とかもそうですよね。昔からある文化で、それを愛するお客さまもずっといる。そういうものをつくりたい。オリジナル作品をつくりたい、というのもそうなんですけど。
偉大な先輩方がいろんなことに取り組んでいらっしゃるので、それ以上の目標を設定しなくてはならないなと。新しい文化やコンテンツ、すなわち“ポケモン”的なものをつくるというのが僕個人の目標です。
ーーありがとうございます。これからの展開も楽しみです。最後に、劇場に来てくださるお客さまに一言お願いします!
竹村 気楽に観て、楽しく帰って欲しいなと思います。あとは「一緒につくる」というか、お客さまも含めて盛り上がっていただけたら。そうすれば、みんなでコンテンツをつくれるのかなと思っています。僕らは一生懸命作品をつくるので、一緒に楽しんでください!
[おまけ]
Q.いわゆる“付喪神”のような存在が現れる今作。自分の持ち物の中で、神様を召喚したい持ち物はありますか?
竹村 僕ね、モノを捨てられない人なんですよね……。両親と仲が良いんですが、1回だけ怒ったというか大騒ぎしたことがあって。山ほどあるぬいぐるみのうち、ウルトラマンのクッションを知らないうちに捨てられていて「なんで捨てたのー!!」と。確かに、特別大切に扱っていたわけではないので、「そらそうか」みたいなところもありつつ。捨てられないんです。
大事なものといえば……ノートをめっちゃ書くんですよ。台本を書くために、アイデアを手書きでメモをしています。3、4冊は常に持ち歩いてるかな。全てが詰まっています!!
竹村さんワールド全開のインタビューでした。ここからどんな“ポケモン”が生まれていくのか、楽しみです!
最新作、『九十九 -つくも-』はチケット好評発売中です。この機会をお見逃しなく!
*チケット販売サイトはこちら:http://confetti-web.com/@/99_tsukumo
★カンフェティにて、インタビュー記事を掲載いただきました!こちらも合わせてご覧ください。
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【公演概要】
text&photo by Yuki Fukai
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