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片想いのmusic(第2話)


6 ウルフ

時計を見ると、夜の8時を回っている。
体育館の中は、異常なほどの熱気で満ちている。
ステージから見て後ろ半分は、椅子やテーブルが並べられている。
テーブルの上に置かれたお菓子は食い散らかされ、ペットボトルは汗を吹き出している。

軽音楽部の演奏は続く。
2回出演する部員はそのまま裏で待機するが、坂本達の出番は1度だけなので、演奏が終わって、フロアーに下りた。
さきほどまでは四人まとめてもみくちゃにされていたが、今は後ろの椅子に座り、休憩をしている。
周りに生徒をたくさん引き寄せている坂本健吾。
しかし、その健吾以上に人を集めているのが、中村貴志。
元々整った顔立ちだからモテそうなものだが、口数が少ないせいか、近寄り難い存在に見られていた。
今日、そのイメージすら吹き飛ばした。

『さぁ、次は我が軽音楽部の新入生No.1バンドだ!』

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