うちの大家さんの話
青森にUターンしてきて、青森の女は強いなぁと思うことが多々あるのだが、風笑堂の大家さんもまた、かっこいい女である。
大家さんは、とにかく決断が速い。白黒はっきりしないことがあると落ち着かないようで、とにかく話が早い。
5月に堂内でハネアリが出て、プチパニックに陥った。羽アリは、シーズンを過ぎると出歩かなくなるので、来シーズンまでに対策をとれば十分間に合うのだが、とにかく早くやって、と、馴染みの業者さんを頼んでくれた。おかげさまで、11月に実施予定だった床下の羽アリ対策はすでに終わっている。
羽アリ騒動が落ち着いたかと思えば、次は漏水問題が発生した。水道メーターの検針のときに通常の3倍近くの使用量になっていたことから発覚した。大家さんに連絡したら、あっという間に業者さんが見に来てくれて、工事の話をぱっぱと進めて、あとよろしくと言って、風のように去っていった。
大家さんを見てると、経営者として大切なことを教えてもらっているような気分にもなる。何を信じて、どこに投資するか。大家さんの見極めはいつも的確だ。
もうひとつ大事なことは、大家さんは縁をすごく大切にしている。この会社さんとは50年の付き合いがあるのよ、なんて、ざらだ。だから縁をないがしろにする人からはすぐに離れる。そういう潔さもまた、経営者には必要なことのように思う。
水道を見に来てくれた会社の方に、大家さんが風笑堂の中を案内してくれていた。「この家がこんなふうになるなんて、びっくりよ。この人たちはね、この縁側と欄間にほれ込んでるのよ」と、嬉しそうに話している大家さんをみていると、わたしもまた嬉しくなるのである。
風笑堂の建物は、築60年の昭和家屋。夏の暑さ、冬の寒さ、アリや漏水、トラブルも絶えない。それでもここは、大家さんの生まれた家。ずっと大事に手入れして、守ってきた家。そんな大切な家を、わたしたちは使わせてもらっている。「あんたたち、10年頑張りなさい」と、いつも檄を飛ばしてくれる大家さんにも喜んでもらえる風笑堂を、これからも作っていきたい。