君に贈る火星の
小学生になったばかりの頃、家族で海に行った
ひとり砂遊びをしていると、どこかでキラッと光るものが見えた
「なんだろう」
近づいてみると小瓶が落ちていた
中に白い紙が入っていた
コルクの栓がしっかりはまっていてなかなか開かない
「おーい、行くぞー」
向こうで父の声がした
私は急いで小瓶をズボンのポケットに入れ
「あのね、さっき…」
と言おうとしてやめた
父に戻すように言われるかもしれない
私だけの秘密にしよう
机の引き出しに入れ、
毎日こっそり出して開けようとした
3日後、やっと栓が抜けた
「やった」思わず小声で叫んだ
ドキドキしながら紙を開いて見る
「に…る…の?」
漢字が難しくて読めなかった
早く意味を知りたい!
翌日、先生に紙を見せた
もちろん海で拾ったことは内緒で
先生は少し笑って説明してくれた
君とは私のこと
贈るはプレゼントすること
火星は地球の隣の惑星のこと
最後の漢字の意味を知ったとき、私は絶望した
そこには
「君に贈る火星の空気」と書いてあった