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しゃべるピアノ

わたしの家にはしゃべるピアノがあった。
子供の頃、何て言ってるのかさっぱり分からなかった。
男の人、女の人、おじいちゃん、おばあちゃん…色んな人の声がしていた。

月日は流れ、
どうやら落語家がしゃべっているらしいということが分かった。
わたしはピアノ落語家の落語を聞くようになった。
ピアノ落語家はずっと一方的にしゃべっているだけだった。
中でもわたしのお気に入りは「時そば」だった。
落語について色々調べると
落語家が高座に上がる前に出囃子があることを知った。
わたしはピアノで出囃子を弾いてあげることにした。
出囃子があると落語家のしゃべりが、心なしか饒舌に聞こえた。
一緒に盛り上げている感じがして、とても楽しい時間だった。

月日が経った今、そのピアノから落語が聞こえることはなくなった。
ある日ふと懐かしくなり、ピアノで出囃子を弾いてみた。
無言。
「ひぃふぅみぃよぅ…」とつぶやいてみた。
しばらくして「今何時でい」
と聞こたような気がした。

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