生存確認と私が生きていた証
通勤中、改札を出ようと向かう途中で
私は一瞬で片足が裸足になった
パンプスのヒールのゴム底が地面の格子状の溝にがっつりハマってしまいパンプスもろとも脱げてしまったからだ
あー最悪やと思いながら
ポーカーフェイスでパンプスのヒールを外そうとしたが、
ぴったりハマりすぎていてなかなか抜けない
数秒たった
ちょっと周りの目が気になってきた
力を入れて
えいや!
抜けた!
あ…
ゴム底だけが完全に溝に取り残されてしまった
あちゃー
ま、しょうがないか
私はポーカーフェイスで
パンプスを履き直し、改札に向かった
パンプスのヒールからゴム底がはずれ、金属の棒があらわになる
カツンカツンと音がする1日を過ごした
あのゴム底は今も溝にハマったままだ
私は出勤するとき、
たまにそのゴム底の生存確認をする
「あいつ、まだあそこにいるかな」
と同級生を懐かしむ感覚だ
先日、改札を通る前にその溝(地面)をまじまじと見つめていたら
通りがかりのおじさんも地面を見ていた
何か落とし物を探している人と思われたのだろう
違うんです…!
私はゴム底(あいつ)がいるかどうかの確認をしているだけなんです…!
と心の中で叫んだ(ポーカーフェイスで)
もし掃除されたとしてもあのゴム底はちょっとやそっとじゃ抜けないだろう
しばらくは生存確認が楽しめそうだ
何十年経って私が死んだあと
もし駅の改修工事もなく地面がそのままであれば、そのゴム底は私の生きていた証にもなるだろう
ゴム底は、もはや「あいつ」ではなく「私」だ
なんの話、これ