2023中華人民共和国棒球総括と雑感
こんにちは、中国棒球_maniaです。
今回は年末なので2023年の中華人民共和国棒球を振り返っていこうと思います。
先に書いておきますが、筆者が中華人民共和国棒球を追い始めたのは今年ということもあり、知識不足が露呈する場面が散見される可能性があります。また、U18やU15等も書くべきだと思いますが、しっかり追えてないので今回はトップチームのみについて書いていきます。
クレーム等は歓迎ですので、事実と異なる内容がありましたら私のX(@ichiaki63)までリプかDMください。
このnoteでは主に
①WBC2023
②全国棒球錦標賽
③中国棒球联赛(途中の江蘇の韓国遠征もちょっとだけ)
④杭州アジア大会
⑤北京猛虎隊茨城遠征
⑥来年以降の期待等
について少しずつ書いていきます。
①WBC2023(3月、4敗プールB5位)
まずは2月から開催された薩摩おいどんカップに参加、苦戦するも最後の方は何勝かした。ここではパドレス傘下でロースター外の秦子墨や予備ロースターの陳嘉績(天津)らも出場したという情報がある。
3月に東京ドーム開催されたWBC2023には海外勢から真砂勇介(ソフトバンク→日立製作所)とアラン・カーター(LAA)(あと、朱権)、MLBDCのコーチであるレイ・チャン(張宝樹)や梁栄基が現役復帰をし出場。初戦の日本戦では梁培(北京)のホームランや楊晋(上海)が大谷翔平からヒットを放ち、終盤まで善戦した(7回終了時1-4、試合終了時1-8)。
問題は2戦目で、先発の趙富陽(江蘇)が(梁培の落球もあったが)炎上、ただ鄭超群(江蘇)やカーター(LAA)が好投を見せ7回には逆転。2大会ぶりの勝利まであと2アウトまで迫ったが、ピンチで登板の朱権(韓国・KTウィズ)が初級激甘チェンジアップを投じ、逆転被弾。そのまま敗戦した(5-8)。
後のオーストラリア戦(2-12)、韓国戦(2-22)は普通にコールド負けを喫した。
中国代表はWBCよりもアジア大会に比重を置いており、実績の少ない若い選手も多く出場した。その中で王翔(上海)や王唯一(江蘇)は今季大きなステップアップを見せたが一方で張昊(四川)や林強(河南)は頭角を表すことができなかった。
日本戦では先述の通り大谷からヒットを放つ、日本代表からホームランを放つ、また大谷や村上からアウトを奪うなど中華人民共和国棒球の前进を示すプレーもいくつかあった。しかし投打において他国とパワーの差が歴然としていた。
投手はスピードもそうだが伊健(広東)や張昊(四川)を筆頭にストライクを取ることに苦労しており、打撃では当初4番を務めた大_陳晨(江蘇)が大会ノーヒット、寇永康(上海)も苦戦し海外勢の真砂や現役復帰のレイ・チャンが打線を引っ張る形となった。
守備面では曹傑(江蘇)が普通のファーストゴロも捕れない、チェコ戦では欒臣臣(江蘇)がカーターの球をなかなか捕れないなどと課題も見つかった。
②全国棒球錦標賽(優勝は江蘇ヒュージホース)
2023年の中国国内での野球は全国棒球錦標賽からスタートした。全国棒球錦標賽は9チームがAとBの2グループに分かれ総当たり戦をし、A組1位vsB組2位、A組3位vsB組4位…で試合をし、決勝、3、5、7位決定戦を行う方式だ。
正直な話あまりチェックできておらずあまり言うことがないのだが、天津体育学院の選手として出場しWBC予備ロースター、アジア大会の代表に選ばれた陳嘉績はショートで良い守備を見せていた。決勝ではWBC日本戦に先発した王翔(上海)が敗れたが好投を見せた。
③中国棒球联赛(優勝は上海奥盛レッドイーグルス)と途中の江蘇の韓国遠征もちょっとだけ
中国棒球联赛はいわゆるCBLと呼ばれるもので、中国棒球における最大の大会になる。
5月に行われる無錫ラウンドは10チームが参加、総当たり戦を行い下位の2チームが脱落し成都、天津での総当たり戦を経て決勝ラウンドが行われ、優勝チームを決定する。
CBLでは江蘇の二軍的な立ち位置であるチームが山東ブルーホエール(山東藍鯨)として参加した。WBC経験者の小_陳晨(2023参加)、杜曉磊(2017参加)、若手投手の張胤梵らが在籍する。
無錫ラウンドで下位2チームになったのは河北体育学院と天津体育学院。この2チームを除外し成都ラウンドと天津ラウンドを行い、上海と江蘇が決勝ラウンド(3試合制)、北京と四川が3位決定戦(一発勝負)に進出した。
3位決定戦は北京が勝利し北京が3位、決勝ラウンドは上海が2連勝で優勝を決めた。
CBLはまともに情報公開をしないため個人成績は分からないのだが、タイトルのみ公開される。
実績のあまりなかった黎凝佶(江蘇)が最優秀防御率と奪三振王の二冠輝き、王斌(上海)が打点王を獲得、また希望之星(新人王みたいなもの)は周奕(広東)が受賞した。
その他のタイトルは下記の通り。
また、成都ラウンドが終わってから天津ラウンドまでの間の期間で江蘇が韓国遠征を行い、韓国の独立リーグのチームと対戦した。3試合が雨天中止となったが、最終戦のLGツインズ二軍戦以外は全て勝利した。
試合結果しか分からないので何とも言えないが、この遠征には山東に所属する選手から変則左腕司馬宇傑や小_陳晨ら一部選手が参加した。
④杭州アジア大会(4位)
10月に開催された杭州アジア大会は今年の中華人民共和国棒球において最大のイベントとなる。
中国ではWBCのような競技ごとの大会よりもアジア大会やオリンピック等のスポーツの総合的な大会を重視しており、非常に大事な大会だ。
中国は前回大会まで8大会連続で4位となっており、日本台湾韓国の3強を何とか崩したい、という感じである。
初戦は予選通過国であるラオスに15-0で5回コールド勝ち、2戦目はアジア5番手であるフィリピンの変速右腕を打ちあぐねながら王唯一が5回無失点の好投を見せ2-0で勝利。
3戦目の日本戦、中国の先発はWBC日本戦と同じ王翔(上海)。1回表の中国の攻撃は1番梁培(北京)2番李寧(上海)の連続ヒット、3番寇永康(上海)の進塁打で一死二三塁とするも4番王斌(上海)、5番陳嘉績(天津)の連続三振で無得点に終わるも、150超えの速球を投じ巨人からドラフト2位指名を受けた森田駿哉を上位打線は初回から捉えており、1回裏は王翔が完璧に抑え、地元開催というのもあり中国が押している雰囲気だった。2回表、森田を攻め立て一死満塁とすると1番梁培(北京)がレフトへタイムリーを放ち先制。
王翔は5回無失点の好投で降板。2番手の索旭迪(北京)が6回から登板、制球が怪しかったが6回はピンチを凌いだ。しかし7回先頭から2者連続四球で降板、蘇長龍(天津)が火消しで登板。ここの蘇長龍が三振捕邪飛(四球)三振と最高の投球を見せピンチを凌いだ。8回は4番手の黎凝佶が登板。8回は2三振を含む三者凡退と完璧な投球。しかし9回は四球と安打で無死一二塁とし鄭超群が登板。三振と併殺とここも最高の火消しで中華人民共和国棒球史上初の日本戦勝利を掴んだ。
特筆すべきなのはグループリーグ3試合で失点0で終えたということではないかと捉えている。投手層の厚さ、守備面の前进を世界に示す結果になった。
しかし以降の試合は苦戦。
台湾戦では1-4と善戦するも敗北。韓国戦ではWBCほどの点差ではないが1-8で敗戦した。
3位決定戦では黎凝佶(江蘇)が先発。曹傑(江蘇)のタイムリーで先制し一時逆転を許すもアジア大会絶好調寇永康(上海)のツーランで逆転した。その後黎凝佶は4回2失点で降板。王翔(上海)が5回から登板した。5回は完璧な投球を見せ、7回まで無失点も8回に崩れ、蘇長龍(天津)に交代。火消しに失敗し逆転を許すとそのまま3-4で敗戦した。
9大会連続の4位という結果に終わったが、内容は以前よりも格段に良くなっている。
投手陣では王唯一(江蘇)が140後半を計測、その他にも王翔(上海)や黎凝佶(江蘇)も上位国相手に堂々のパフォーマンスを見せ、伊健(広東)や華旦才譲(広東)も好投を見せた。リリーフではベテラン蘇長龍(天津)と鄭超群(江蘇)がしっかり試合を締めた。
野手陣では梁培(北京)が.368とリードオフマンとして最高のパフォーマンス、陸昀(北京)も健闘しWBC絶不調の寇永康(上海)も3番や4番を担いホームランも放つ大活躍だった。
守備ではWBCで普通のファーストゴロすらまともに処理できなかった曹傑(江蘇)が好守備を連発し、大きな成長を見せた。一方で中華人民共和国史上最高遊撃手楊晋(上海)は怪しい守備やエラーが何度か見られた。
⑤北京猛虎隊茨城遠征(3勝3敗)
11月末から12月にかけて北京タイガースが来日し、茨城県にて社会人チームやクラブチームと6試合を戦い、3勝3敗と言う結果だった。
打線は日本出身の梁培や陸昀をはじめセカンドを守る胡天元らも日本の社会人レベルの投手にしっかり対応できていた。また最終戦では若い盧斌斌が2HRを放った。
投手陣では最終戦で索旭迪が7失点したものの、本格派右腕張濤や斉鑫、日本出身の米嘉弘は連日好投を見せた。
若手左腕劉子駿は四球を連発する場面が目立ち、少し残念な結果に終わった。
CBLにおいて江蘇や上海より下の順位であった北京が日本の社会人レベルのチームと互角に張り合っていて、国内レベルでの中華人民共和国棒球の前进がしっかり見えた形になり、私は非常に満足している。
⑥来年以降の期待等
2023年は中華人民共和国棒球全体として非常に前进が見られた年になったのでは、と感じている。
来年以降は国内投手陣全体の球速アップ、またそれに打者が対応することで国際大会でさらに躍進することができるのでは、と考えている。
現状梁培や李寧等ある程度経験を積んだ選手は日本や韓国等上位国のボールにしっかり対応できているが王斌や陳嘉績ら代表経験の少ない、若い選手は手も足も出ていなかったように感じた。
やはり今の国内環境だけではなかなか打撃面で他国と張り合うのは難しい。
そのためには投手陣のレベルアップは不可欠だ。国内リーグを見ているとスピードもそうなのだがストライクを取ることに苦労している場面が非常に多く見られる(特に下位のチーム)。まずはその状況を抜け出して欲しいと思っている。
また、チームによっては同じ投手が一生投げているようなチームもあり、壊れてもおかしくない状況に晒されている投手がいる。CBLドラフト的なものを導入し、もう少しだけでも戦力の均衡化を図るのは出来ないのか。地元を離れる選手は寂しさもあるかもしれないが、戦力均衡とまではいかなくてももう少し選手層の格差を埋める制度の制定を期待したい。
また、少しだけ選手個人にフォーカスを当てると北京が上海江蘇と張り合うには索旭迪の成長が不可欠である、と感じている。北京の打線は上海や江蘇に見劣りしないレベルだが、投手層が薄い。というかそれなりに計算できるメンツはいるが、エースと呼べる人材もあまりおらず若くて球が速く良いスライダーを持っている索旭迪はそのポジションに入れると確信している。現状は制球が悪く、特に立ち上がりに苦しんでいる傾向がある。来季はしっかり制球を改善し、北京の大エースとなって欲しい。
おわりに
ここまで2023年の中国棒球をざっと振り返りました。
来年は私も中国棒球及び野球そのものに対しての知識や知見を深めていきたい、と思っております。
来季はU23のアジア選手権が中国で開催されます。中国にはなんとか3強(日本韓国台湾)の壁を破って欲しいと思っています。中華人民共和国棒球の前进を期待しましょう。
最後までお読みいただきありがとうございました。