独裁者ノート 今は独裁者になるチャンス!
独裁者を取り上げた理由を説明しようと思う。
我々が教わった民主主義は時代遅れになっていて、世界は非民主主義に向かっている。私の妄想ではない。このことは世界の民主主義の状況を示す代表的な指数である民主主義指数に如実に現れている。民主主義指数はEconomist Intelligence Unit(英エコノミスト誌の研究所)が2006年から公開している世界167カ国を対象にした指標である。指標公開以来、ずっと下がり続けている。
香港の抗議活動や新疆ウイグル問題といった人権にかかわる問題を見ても、世界の多数派は中国支持だ。ここで、「あれ? たくさんの国が中国を批判してるんじゃなかったっけ?」と思った方は、メディアに騙されている。いや、騙されているというのは言い過ぎかもしれないが、少なくとも事実をそのまま伝えていない。どちらのケースでも中国支持派の方が多かった。ただ、それをそのまま伝えないメディアも少なくなかった。香港の報道では特にひどく、中国支持派がおよそ2倍だったことを伝えない日本のメディアは多かった。あまりに大本営発表だったので、このことはニューズウィークのコラムに書いた(中国が香港の抗議活動弱体化のために行なっていたこと、https://www.newsweekjapan.jp/ichida/2020/07/post-3.php)。おそらくどんなテーマでも賛否の多数決を取れば中国支持派が多数を握る可能性が高い(中国が本気で協力要請や説得工作を行えば)。
民主主義体制は崩壊しつつある。民主主義を支えているのは主としてヨーロッパとアメリカである。アメリカをのぞくと人口はさほど多くない。GDPも中国を始めとする新興国に押されつつある。新興国=アフリカ諸国、ラテンアメリカ、アジアの多くの国は非民主主義国家である。これを食い止めようと中国への経済制裁などさまざまな手段を講じているが、時間の問題である。中国の邪魔をするために非民主主義国家のインドと手を組むという、民主主義を守るという観点では本末転倒な事態も進んでいる(インド太平洋構想、安全保障としては悪くないかも)。遠からずGDPも人口も非民主主義国の方が多くなる。そうなったら止める手段はない。
民主主義国家の方が進んでおり、非民主主義の国は遅れているのだ、という誤解を持っている人もいると思う。でも、それは違う。民主主義化の後で非民主主義国家になった国も多い。『民主主義の死に方―二極化する政治が招く独裁への道―』(新潮社、スティーブン・レビツキー、ダニエル・ジラット)では、現代においてはクーデターなどではなく選挙において非民主主義的候補者が当選し、独裁化が進むと指摘している。また、『民主主義がアフリカ経済を殺す』(ポール・コリアー、日経BP、2010年1月14日)では、アフリカの多くの国では先進諸国が強引に民主主義化を押しつけた結果、貧困と混乱がもたらされたことが説明されている。
今はいい時代である。独裁者になるために武装蜂起する必要がない。ネット世論操作を武器にソフトに国を支配できる、フェイスブックやグーグルが監視資本主義で利用者を支配しているように。独裁者になるなら、今が好機なのである。
よき独裁者たらんことを!
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