シェア
壱(ICHI)
2022年3月27日 19:02
音がある生活が当たり前だから、まったく意識もしていなかったし、そばにいるのが正常と認識していた、だけど、些細なことで、ぼくから音が消えた、足元はぐらついて、道標がいなくなったようだった。耳に入るのは、吐き気を引き起こすような雑音だけ、砂嵐のような、ぐしゃぐしゃした、まるで、阿鼻叫喚とでも言おうか、なにもかもを逆さまにした世界、そんな中に踏み込んでみれば、ぼくそのものの存在すら忘れる、あれ、ぼくは
2022年3月14日 21:32
桜が咲くと、どこからともなく声がして、根元あたりには、その声に呼ばれた次の桜が集まっていた。水の中に潜れば、花びらが水面を覆っていて、魚と一緒に、お祝い事に持っていこうかと、ひとつひとつ丁寧に、手先の器用さを活かして花束を作っていた。心地よい陽の光は、綺麗な影を作り出してくれた、誰も見捨てないし、離れないように手を繋ぎましょう、だから、どうかそんな寂しい顔をしないでほしい。今日から一斉
2022年3月7日 21:09
1人で歩く言葉を追いかけても、どんどん差が開いていくから、あんなことを言わなければと後悔するころには、もう散らばり過ぎて掴めなくなっている。たった1人の友達なのに、背中をさすってあげることも、果たしてそれが正解かどうかなんて考えている、愚かな私をどうか叱って。ある日は、笑顔だったのに、別の日には、表情が変わる君を見ては、天気と同じように変化するのだねって、憎しみを隠した声色で合図を出した。君
2022年3月5日 22:55
浮かぶ泡とゆらゆらしてる水のしたは暗くて、無数の目と手がこちらにおいでと手招きしてる、誰が行くかと一蹴して、急いで水面の壁を突き破る。いつかみた人魚姫もこんな気持ちだったのか、泡になって消えずに、自ら王子の首を狙いに行ったのかな。流木の船に乗って世界をまわる、なんなら木の葉も一緒に付き添って、覗き込んだら、同じ顔がそこにあって、やっぱり呼ばれていることに気がつく。どこからか陽気な音楽が聴こえて