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分身たち

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書いた言葉は、自分から生まれた自分だと思っているので。詩がいます。
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#ポエム

【詩】ワイヤレスイヤホン

【詩】ワイヤレスイヤホン

音がある生活が当たり前だから、まったく意識もしていなかったし、そばにいるのが正常と認識していた、だけど、些細なことで、ぼくから音が消えた、足元はぐらついて、道標がいなくなったようだった。
耳に入るのは、吐き気を引き起こすような雑音だけ、砂嵐のような、ぐしゃぐしゃした、まるで、阿鼻叫喚とでも言おうか、なにもかもを逆さまにした世界、そんな中に踏み込んでみれば、ぼくそのものの存在すら忘れる、あれ、ぼくは

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【詩】さくらさく。

【詩】さくらさく。

桜が咲くと、どこからともなく声がして、根元あたりには、その声に呼ばれた次の桜が集まっていた。

水の中に潜れば、花びらが水面を覆っていて、魚と一緒に、お祝い事に持っていこうかと、ひとつひとつ丁寧に、手先の器用さを活かして花束を作っていた。

心地よい陽の光は、綺麗な影を作り出してくれた、誰も見捨てないし、離れないように手を繋ぎましょう、だから、どうかそんな寂しい顔をしないでほしい。

今日から一斉

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【詩】ソーシャルネットワーキングサービス

【詩】ソーシャルネットワーキングサービス

1人で歩く言葉を追いかけても、どんどん差が開いていくから、あんなことを言わなければと後悔するころには、もう散らばり過ぎて掴めなくなっている。
たった1人の友達なのに、背中をさすってあげることも、果たしてそれが正解かどうかなんて考えている、愚かな私をどうか叱って。
ある日は、笑顔だったのに、別の日には、表情が変わる君を見ては、天気と同じように変化するのだねって、憎しみを隠した声色で合図を出した。

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【詩】濃霧注意報

【詩】濃霧注意報

浮かぶ泡とゆらゆらしてる水のしたは暗くて、無数の目と手がこちらにおいでと手招きしてる、誰が行くかと一蹴して、急いで水面の壁を突き破る。いつかみた人魚姫もこんな気持ちだったのか、泡になって消えずに、自ら王子の首を狙いに行ったのかな。
流木の船に乗って世界をまわる、なんなら木の葉も一緒に付き添って、覗き込んだら、同じ顔がそこにあって、やっぱり呼ばれていることに気がつく。
どこからか陽気な音楽が聴こえて

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