密室の如き籠もるもの/感想
一日一冊、読める人間だった。そんな事を思い出しながら、三津田信三著の刀城言耶シリーズ初の短編集を読破した。
いつ買ったかという野暮な問いは辞めて貰おう。五年は前だったと思う。新刊指定されていたんじゃないかしら。
当時半分くらいまで読み進めていたおかげもあるかも知れないが、話の内容はほぼ覚えていなかった。
この短編集の面白いところは、まず探偵不在の事件のあらましを丁寧に描写したあと、解決編として探偵が現われる点だと思う。手法としてはよくある手法かもしれないが、短編全てがその方式なものは珍しい気がした。
探偵小説では探偵に根強い人気がつく。探偵不在のパートが長いのは、京極夏彦氏もそうであった。やっぱり案外よくある手法なのかも。
快刀乱麻のごとくという探偵ではないが、すっきりと終えてくれる怪奇小説家だと思っていたら、中編で見事にひっくり返された。一番後味が残り、一番奇妙な終わりだったのではないだろうか。殺人事件にどんな真実があって明かされても、ソレまでの不思議な出来事には決して説明はつかないのだ。そういう案配が美味しい。
刀城シリーズを読みたくなったが、ここは少しだけ我慢して――なにせ積ん読がまだ40冊ある――せっかく同じ時代の読み物を読んだのだからと、京極夏彦氏にとりかかるつもりである。
良い読書の時間であった。