見出し画像

【投稿】先生との手紙

noteを始めて約1ヶ月半。
機能をよく知らずに始めていた為、ここへきて改めて色々note内をいじってみた。

クリエーターページもまだ抜けている箇所があって慌てて編集し直したが、他にも、様々な会社さんとコラボされていること、様々なテーマで記事を募集していることを知った。

そこで今日は1つ、テーマ応募にチャレンジしてみようかと思う。


私だけかもしれないレア体験
『先生との手紙』

私は新しい環境が苦手だった。
特に、幼稚園から小学校に上がった1〜2年時はかなり苦労をした。

私の家は転勤族。そんなに頻繁ではなかったが、私が年長さんになる年に、引越しをした。
新しく入った幼稚園は3年制の幼稚園。年長の頃には仲良しグループが出来上がっていた。
しかし、友達に恵まれ、同じ組の女の子二人、男の子一人の三人と仲良くしてもらい、組は違うが、同じマンションに住む女の子一人とも仲良くなり、幼稚園時代を楽しく過ごした。
その4人とは幸運なことに、小学校も同じだった。

しかし、入学式の日、私は絶望感を味わうことになる。
小学校はクラスが2クラスしかないにも関わらず、同じ組で仲が良かった3人とクラスが別れてしまったのだ。私はマンションが同じ女の子と一緒に過ごしたが、その子はとてもおとなしかった。一学期はその子と遊びながらゆったり過ごしたが、その子もまた転勤族で、夏休みには引越して行ってしまった。
私はただでさえ溶け込めないクラスに、そこから、唯一仲のいいお友達も居なくなってしまった。

授業に必要なことは話すが、自分のことをペラペラと話すようなことはしなかった。
私達のクラスの先生はとっても優しくて笑顔を絶やさない先生で、タイミングをみて、全ての子に話しかけてくれるような先生だった。
私達の学年は、アクティブで主張が強い子が多い学年だったと後から聞いたが、先生はそのように優しく方だったのでとても人気で、常に先生の周りには児童が5〜6人ついて回っているような状態だった。
私も先生と話したい。そういう思いはあったが、とてもじゃないが声をかけられなかった。

先ほど書いたように、先生から私に声をかけてくれる時もあったのだが、私はいざそうなると、周りの子も返答を聞いているし、緊張してしまって、先生の声かけに首を縦か横に振ることでしか答えられない状態だった。

だが、その反応では先生にも失礼だし、どうにか先生と話したいと思ったのだろう。
私は祖父母に手紙を書いていたことからヒントを得て、先生にもレターセットで手紙を書くことにした。

しかし、渡すのも一苦労だった。結局、先生に近づき、渡さないといけないのだから。
だが、そこは勇気を振り絞った。手紙にも賞味期限がある。伝えたい内容が次の日には変わるのだから。

手紙を書いた翌日、私は緊張しながらも手紙を握りしめていた。先生が朝の会を終え、職員室に戻る前、その時が渡す時だ。
そして、いつものように朝の会が終わり、みんなが一斉に先生の周りに群がる。
いつもより多い…。
私は意を決して立ち上がる。そして先生の視線に入る位置に立ち、一生懸命手を伸ばした。
周りのみんなが驚くも、先生がそれに気付き、しゃがみ込んで私に目線を合わせ、くしゃくしゃになりかけている手紙を受け取ってくれた。
確か、「先生に書いてくれたの?読ませてもらうね」というようなことを言ってもらったような記憶がある。
顔を真っ赤にしながら大きく頷き、慌てて先に戻り、授業の準備をした。

とても汚い字だったと思う。解読不能なものも多かっただろう。でも先生は次の日には返事を書いて私に手渡してくれた。
私は大変驚いた顔をしていたことだろう。
周りにいいなぁと言われた記憶があるが、私はろくにありがとうとも言えずに、それを受け取ってマジマジと見つめていた。

家に大事に持ち帰り、すぐに開封した。
心臓が飛び出るのではないかと思うほどバクバクと鳴っていた。
手紙にはとっても綺麗な先生の字。
黒板と同じだけれど、私にだけ向けられた文字。言葉では言い表せないほどに嬉しかったのを覚えている。

残念ながら内容までは覚えていないのだが、それから何度も手紙のやり取りをさせてもらった。
一度渡せたら二度目以降はなんとかなるもので、手紙を渡すことだけは出来るようになった。
徐々に「先生」と声を掛けることができるようにもなった。

3年生になり担任の先生が代わるまで、相当数、手紙のやり取りをさせてもらい、私は学校で先生に言えなかったことから、普段の何でもない話までいろんなことを伝えた。
先生にはかなりの負担だったと思う。
教職というただでさえ忙しい職に、低学年の相手。それに手紙まで読んで返事を書かないといけないのだから。しかも先生は毎回すぐに返事をくれていた。

本当に申し訳なかったと思うが、私には本当に大切なことで、心の支えだった。

その手紙は、毎年の年賀状へと姿を変え、私がアラフォーになる今でも続いている。

先生は今おいくつなのか分からない。
しかし、私は先生からストップと言い渡されない限り続けさせていただこうと思っている。
それしか私は先生に感謝を伝える術を知らないから。
手紙で教えてもらった様々な気持ちを、どうにか伝えたい。やはり手紙という手段を使って。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?