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DTM部屋のお手軽「防音」のはなし。【後編】吸音編

前回の記事に引き続き、DTM部屋のお手軽「防音」のはなし。
【後編】吸音編を書いていこうと思います。

【前編・遮音のはなし】の内容と組み合わせて「防音対策」して頂けるとより高い効果が得られると思いますので、まだ前編をご覧になってない方は、そちらの記事もチェックしてみて下さい。⇩


「それでは、後編として【吸音】について紹介していきます」

無駄な「響き」“反響音”を抑える方法。

突然ですが歌を唄うのは好きですか?
「歌」はお風呂場で唄うと、良く響いて気持ち良いですよね。
お風呂場の壁は、硬くてツルツルしている為「音」が反射しやすいのです。
DTM部屋も、お風呂場ほどでは無いのですが、何も「吸音対策」をしていない状態だと余分な「反響音」が発生している場合が殆どです。

ここからは余分な「反響音」「吸い取る」ための「お手軽防音」のはなしです。

身近な物で吸音対策「新聞紙編」

最近は「新聞」を取ってないお宅が多いかも知れませんが、実は「新聞紙」でも吸音効果があるのです。
新聞紙をリサイクルして作られる「セルロースファイバー」という「断熱・吸音材」があるのですが、その効果を見込んで様々な建築に資材として使われている実績もあります。

使い方は簡単で、机の上に敷いたり、スピーカーの近くの壁に貼ったりして使ってみて下さい。「英字新聞」なんかで工夫すればオシャレな見た目にできるかも知れませんね。

宅録のDTM環境の場合、ニアフィールドでモニタースピーカーを設置することが多いと思います。しかし、それにより必然的に、スピーカーの位置と、机や家具の位置が近くなってしまう為、それらに音が反射して「正確な音」が鳴らせていない場合があります。
新聞紙でなくても、「タオル」や「ランチョンマット」なんかでも効果があります。ちなみに私の部屋では「厚手のフェルト」を使って対応しています。モニタースピーカーからの音がグッと「立体的」に聴こえる様になりますので、ご自分のお部屋での効果的な位置を探してみてください。

近所のスーパーで貰って来よう「紙のたまごパック編」

業務用に使われる事が多い「紙のたまごパック」も効果を発揮します。
上記でも書いた様に「紙」はある程度、音を吸ってくれるのです。
たまごパックは、たまご型に凹凸が沢山あるため、表面積も広く効率的に音を捉えることが出来ます。また、その凹凸により様々な角度に音を反射させるため音エネルギーを上手く分散させる事も出来ます。
部屋の壁に画鋲などで仮止めして、モニタースピーカーからのサウンドがスッキリ聴こえる位置を探してみてください。

スーパーマーケットなどで廃材の「紙たまごパック」を貰える場合もあるので、吸音対策にあまりお金を掛けたくない方は試してみるのも良い方法だと思います。

実は効果がない?!「発泡スチロール編」

発泡スチロールって何故か…防音効果が高いイメージありますよね?
結論から言ってしまうと、あまり防音に向いていない材質なのです。

「発泡スチロール」といえば、子供の頃に工作で扱ったり、家電製品の梱包材を捨てる時に、ポロポロと砕けた白い粒が、静電気で色んなところに付着した経験はないでしょうか?
あの粒は「独立気泡」という構造により、「空気の閉じ込められた粒が1つ1つに分かれている」状態にあります。そのため、ポロポロと砕けてしまいやすいのです。
中に入っている空気と外界の空気は遮断されているので、音を取り込む余地が無く、上手く「吸音」する事が出来ないのです。

実は子供の頃、発泡スチロールを使って「ヴォーカル・ブース」風の、人が1人はいれるくらいの小さな部屋を作った事があります。
当時見ていたテレビ番組で発泡スチロールで防音対策をして効果が高いという様な演出をしていたので、鵜呑みにしてしまったのです。
もちろん防音効果は…ありませんでした。(※誰かが私の様な失敗をしない為にも、この記事を書いています。)

コレがおススメ!「ウレタンフォーム編」

普通の人はあまり聞きなれない言葉かも知れませんが「ウレタンフォーム」という物があります。主に建築用の断熱材や、ソファーや椅子の中に入っているクッション材、食器洗い用のスポンジなんかも「ウレタンフォーム」だったりします。

この「ウレタンフォーム」を使った「吸音材」も開発されています。
ネットやホームセンターで購入する事が出来ますので調べてみて下さい。
有名なメーカーが作っている物だと高価な商品も多いですが、ネットで買える安価な製品であれば3千円~くらいから選べると思います。
こちらは発泡スチロールとは違い「連続気泡」という構造で出来ています。音を取り込む穴が無数に空いている為、効果的に音を「吸音」する事が出来るのです。

表面の形状が「ピラミッド型」や「くさび型」など色々ありますが、物理的に表面積の広いデザインの物がおススメです。
また、スポンジの厚みが、より厚い物の方が低い音域まで吸音できる特性を持っていますし、製品に「〇〇㎏/㎥」と表記がある場合は、この〇〇に入る数字が大きい程、性能も高くなります。

使い方も至って簡単で、重量も軽い事もあり両面テープなどで固定したり、脚の長い画鋲や、虫ピンなどで壁や天井に固定できるので誰でも施工できると思います。手軽に「吸音」してみたい方にお勧めです。

本格的に吸音!「グラスウール編」

こちらも、あまり聞いたことが無い名前かも知れませんが、住宅の断熱材として広く普及しているので、ご自宅の壁の中に入っているかも知れません。

材質としては、ガラス繊維で出来ていて「音」に触れるとガラス繊維同士が振動により擦れて摩擦熱を起こし「音エネルギー」を「熱エネルギー」に変換する事で効果的な吸音を実現します。

材料費としては比較的安価なのでコスト的に導入はし易いのですが、施工するのが大変というデメリットがあります。
なので素人が「DIY」で吸音対策するには少しハードルが高いかも知れません。
ガラス繊維で出来ている為「チクチク」とした繊維が飛散しやすく、皮膚に直接触れると「チクチク」の痛みが数日続く事もあります。

より本格的な「吸音」を求めている方は一度施工を検討してみても良いかも知れません。

「あなたの部屋」はどのタイプ?

遮音や吸音にも「向いている部屋」と「向いていない部屋」が存在します。
ご自分の部屋が、どのタイプかを把握する事で、必要な対策が見えて来ると思います。

例えば「和室」「遮音性能が低い」と言われています。
襖 や 障子 といった「引き戸」においては、構造上、扉と壁の隙間が多く、通気がしやすい傾向にあります。
同様に「音」も、隙間から部屋の外に漏れてしまいやすいのです。
しかし、和室には「音響的なメリット」も存在します。
「襖」「障子」「畳」などは、程よく「吸音」してくれる為、反響音が柔らかく、宅録でレコーディングする音質的には向いている環境なのです。

逆に、鉄筋コンクリート構造のマンションなんかは、壁もコンクリートで作られている為「遮音性能が高い」と言われています。
壁が重い程、遮音の難しい「低音域」でも音を通し難くなるため、音が漏れにくい特性があります。
しかし壁が硬く反響音も必然的に多くなるので、シッカリ「吸音」対策をしないとレコーディング時などには余計な響きも録音されてしまうデメリットもあるのです。

自分の部屋の特性を考え、長所を上手く利用する事で「防音対策」における出費を最小限に抑えることが出来るかも知れません。

ヴォーカル録音は「クローゼットが良い!」のウソ。

宅録でヴォーカル・レコーディングをする時は、クローゼットで録るのが良い!みたいなイメージありますよね?…あの都市伝説はいったいドコから生まれたのでしょう?

結論から言うと、クローゼットの様な極端に狭い環境でヴォーカル・レコーディングをする事はおススメ出来ません。
狭い環境だと「初期反射」の成分が沢山マイクに入ってしまうので、明瞭感の悪いボヤけたサウンドを作ってしまいがちです。
DTMでのミックス作業の時にヴォーカルのトラックだけ馴染みが悪く、浮いて聴こえてしまう場合は部屋の「反響音」の成分が沢山録音されてしまっている可能性が高いのです。
上記で紹介している吸音方法を試したり、マイクと壁の位置をもっと遠ざけるなどの対策をすると音質が改善されるかも知れません。

悪い音の根源?!「定在波」って何?

部屋の中で反響しやすい成分として「定在波」と呼ばれるものがあります。
これは、平行している面の間で反響を繰り返し、ある特定の音域を膨らませてしまう厄介な現象です。
日本の住宅は、きっちり平行な面で構成される様にデザインされる事が多いので、一般的な住宅であればドコでも起きてしまう現象です。

こういう現象を知っているオーディオマニアのオーディオルームや、レコーディングスタジオでは定在波対策として、あえて天井や壁を斜めにデザインしているところも多くあります。

悪い例では、音が正確に聴こえる「モニタースピーカー」を使っていたとしても、スピーカーからの音は物理的に「部屋の反響音」と一緒に聴く事しか出来ないので、その反響音に「定在波」が多く含まれているとモニタースピーカーの音を濁してしまい、明瞭感の低いボヤっとしたサウンドに聴こえてしまうのです。

また、ヴォーカル録音の時なども同様で、「定在波」が悪さをしていると余計な周波数帯域の膨らみをマイクが拾ってしまう為、ミックスでもオケの中に馴染まないサウンドで録音されてしまうケースが多くなります。

定在波を抑制させる方法

「定在波」を抑制させるためには、部屋の角を「吸音」すると効果的だと言われています。部屋の形や大きさが違うと「定在波」が起きる帯域や場所も変わってしまい対処が難しいのですが、部屋の角には「定在波の腹」と呼ばれる重要な振動が多く集まる為、その部分に吸音対策をすると効果的に定在波を抑制させる事ができます。

ただし吸音をし過ぎると「響きの悪い」部屋になってしまう為、音楽の美しい響きも犠牲にしてしまう場合があるので「吸音」する場所や量を上手く見定めながら対策する必要があります。

また「定在波」は中音域~低音域で問題を起こす事が多い現象です。
低音域は波長が長い為、厚みの薄い吸音材では上手く音を吸収する事が出来ません。低い音域の対処が必要な場合は最低でも、20cm~30cm厚みのある吸音材を選ぶ事をおすすめします。

上記で紹介している「ウレタンフォーム吸音材」の中には、部屋の角に設置する用にデザインされた製品もありますので、そういう物を活用するのが簡単で良いと思います。

あとがき

前編に引き続き「DTM部屋のお手軽防音のはなし」を書いてみました。
如何でしたでしょうか?
反響音を上手くコントロールするのは難しく試行錯誤が必要ですが、そのヒントを散りばめたつもりですので、ご自分の環境で試して頂けたなら嬉しく思います。
身近な物でも、毛布や抱き枕、クッションや大き目の縫いぐるみ等、吸音に効果を発揮してくれる物は沢山あります。
是非、あなたのアイディアで「お手軽防音」にチャレンジしてみてください。




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