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強盗に遭ってナイフで切られて200ドルとG-SHOCK失ったんですよねー

オーストラリアに住んでた頃の思い出を聞かれた時にこれを話すとみんな「海外ってヤバいね」ってなるのがタイトルの一文。
いやほんとにそのまま起こった事なんですけど、別に日本でも強盗傷害事件は全然ある話なんでオーストラリアが壊滅的に治安悪いってわけではないと思います。

それはそれは絵に描いたような事後強盗。
当時、世界的パンデミックの始まり。ビザの関係で数ヶ月だけシドニーの仕事を離れてクイーンズランド州のBundabergという街のバックパッカー(ユースホステル)に住んでいました。
*オーストラリアの88日以上指定地域で農業などをすると一年ビザを延長出来るという制度の為

事件当時、洗濯をしに一階共有スペースにあるコインランドリーに行ったのですが…そんな日に限って珍しく少しの間だしと鍵を掛けずに部屋を離れてました。
そして二階に戻ると見たことのない白人の少年が廊下に。明らかに挙動不審。
僕がその少年に英語で

「ここに住んでるの?」

と聞くと

「ああ、最近。…バスルームは何処?」

「…バスルーム?すぐそこだよ」

みたいなあからさまに不自然なやり取りをしてきたので“これは何かやってんな”と確信した僕は何事もなかったように少年に別れを告げつつ、すぐさま部屋に戻りました。

すると掛けてあったショルダーバックの中の財布から札だけ($200くらい≒1万6千円)見事に抜かれている。走って追い掛けて階段付近で犯人を確保。
*ちなみにこの時は気付いてなかったがG-SHOCKも盗まれていた

「名前は何ていうの?」
「ここに住んでんの?」
「部屋番号は?」

と質問攻めにするとしどろもどろで答えてくる犯人。
同じ階に住んでいて顔見知りの韓国人の男の子も助けに加わり、二人で取り囲んだまま問いただした。すると犯人が興奮しながら暴れ出したので他の部屋からも人が出てきてロビーに集まり一気に事件感。
映画の中のセリフだと思ってた「somebody help!!」を叫んだのは後にも先にもあの時くらいだった。

その時、持っていたトートバッグに手を入れた犯人。カバーに入ったデカいナイフが見えたので咄嗟に奪い取ろうとした僕の指に引き抜かれたナイフが当たり、指先が水平にぱっくりと切れた。
ぺろんと表面の肉が削がれ、読んで字の如く皮一枚でなんとかくっついてるような状態。血はいくらでも垂れてきた。

その場にいた全員が走って隠れ、犯人の少年は混乱したまま叫んでナイフを振り回していた。そしてしばらくして何故かナイフカバーを床に置き、玄関から逃げていった。

現場はひどいパニックでも、そういう時切られた当の本人は不思議と冷静になるもので合ってるか分からない止血をしながら手の指を数えて“よかった、10本ある”と指先が欠損してないことに安心していた。

切られてすぐは傷口の痛みもそこまで感じなかったけど、車で病院に運ばれている頃には激痛としか言いようのない痛みに襲われていた。

医者待ちの図。運ばれた救急外来の処置室にて

受付に到着すると先に他の患者が数人並んでいましたが、必死にタオルで止血しながらもハーフパンツ血まみれの僕を見るとドン引きで列を譲ってくれました。
強盗に遭って切られたというと受付のおばさんはもっとドン引きしてすぐ別室に通してくれた。

8針縫われた中指

縫ってる間に警察が来て犯人は捕まったと報告を受けた。17歳のオーストラリアンの少年で、地元の不良グループの一員、窃盗などの前科持ちだった。

その夜、警察署で被害者として調書を取られて2時間くらいかかった。もちろんカツ丼は出ない。


それからは弁護士に相談したり州の犯罪被害者救済機関に申請したりで大変だった。やり取りのメールも見たことのない難しい単語ばっかりで、この事件を機に英語力はかなり伸びた気がした。

そしてちなみに今回の件で被告は僕を切った傷害はもちろん認めたが先に盗んでいたお金と時計については認めず、まさかの一切返ってくることはなかった。現地の警察ちゃんと仕事したのか、と思ったがオーストラリアの司法がそう言うなら何も言えない。

その代わりに長い時間掛けて苦労した甲斐あって州の機関Victim Assist Queenslandから申請が認められてそこそこまとまったお金が口座に振り込まれた。

結果ちょっとにんまりしながらシドニーに戻った僕は特に怪我の後遺症もなく元気にサロンワークに復帰していたのでした。
忘れた頃に裁判で確定した内容が長々メールで送られてきた。ギリギリ未成年だった被告はそこまで重い刑罰を受けない。正直、あれは塀から出たらまたやるんだろーなーと思う。

結局のところ、被害に遭わないようにこっちが安全管理するしかないんだなと思う。起こった事件は裁かれるけど事件を未然に防いでくれるものはそうそうないんです。
治安のいいとこに住むとか、危なそうな人とは関わらないとか…安全に長生きしたければそういうのは自分の責任なんだなという教訓をくれた出来事。

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