なりきりチャットに人生を捧げていた大人の思い出話4
レイカの演じる受キャラクターの雰囲気は独特だった。
レイカ本人のお茶目で、可愛らしい性格と、小悪魔的な雰囲気の二面を併せ持っていた。
「魔性の受ってやつかな?」
という会話をいのりさんとしたことがある。
レイカの相方の攻キャラクターはリアルが忙しい人だった。
チャットルームに顔を出す頻度も少なく、レイカはいつも寂しいと言っていた。
その相手を寂しがる様子も、ますます「魔性の受」感を際立たせていたのかもしれない。
この後、平和だったチャットルームが一変する出来事が起こる。
ある日東雲と、相方の攻のCさんが険悪な会話をしていた。
カップル同士の痴話喧嘩か?それともそういうシチュエーションのなりきりなのかな?なんて呑気に見ていたがどうやらそうでもない雰囲気だと気づく。
同時に、レイカからガラケーにメールが届いた。
「二人でIRCで話せないかな?」
このタイミングということは、この二人に関係あることなのかな、なんて思いつつ指定されたIRCのサーバーに入る。
そこでレイカに告げられた話は衝撃的なものだった。
「Cさんと浮気しちゃったの」
えっ!!!??
浮気ってなんだ?
そういう雰囲気のなりきりをしてしまったってこと??
エロいチャットしたの?
質問ぜめにする私にレイカはそうだと頷く。
「そしたら東雲に見つかって………すごく怒ってて。今別れ話をしているみたい。」
「でもCさんと東雲に別れて欲しい訳じゃないの、私とCさんはお互い相手がいる状態だったから燃えたんだよね。
そういうシチュエーションだから良かったんだよ、わかる?」
わか………る?わからない!!
「そうだよね、いっちはいのりさん一筋だもんね。」
もう唖然である。
でも浮気っていっても実際に恋人とかではないし、こんなことで私たちの仲良し関係が壊れてしまうのか?
そんな考えで頭の中がいっぱいになっていた。
次の日、東雲と二人で話す機会を設けた。
いつまたCさんがレイカと関係を持つかわからないので別れる。
レイカとはもう前みたいに仲良くは話せそうにない。
そんな話を告げられた。
恐れていた事が起こってしまった。
なんとか関係を修復できないかと考え、いのりさんも色々と協力してくれたがどれも無駄に終わった。
レイカとはその後何度も話し合ったがダメだった。
自分の相手がチャットルームに来なくて寂しい、Cさんも連絡を取ってくれなくなった。
自分はこのまま一人なのか?
そう言って悲しむレイカを慰めていた時
「いっちが相手になってよ」
と告げられた。
「寂しいからお願い」
受キャラクターの言葉だった。
私はその誘いを断ることはできなかった。