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なりきりチャットに人生を捧げていた大人の思い出話3
チャットルームに残されたいのりさんと二人で「なりきりチャットってどんな感じかな?」という会話になった。
「こんな感じじゃない?」
と私はお互いが好きなアニメの、好きなBLカップリングの攻のセリフを打ち込む。
それに応えるようにいのりさんが受のセリフを返す。
それを繰り返してなんとなくいい雰囲気になり、恥ずかしくなったので
「あーなるほど、こんな感じか〜!」
とか
「ドキドキしたね!」
とか照れ隠しのような会話をしたのを覚えている。
その日を境に、いのりさんとはIRCなど、他の人が見られない環境で二人きりでなりきりチャットを楽しむようになった。
自分が攻キャラクターで相手が受キャラクターということは変わらず、初めはいい雰囲気だったのがどんどんエロいチャットに進展してゆくのにもそう時間はかからなかった。
そんなこんなで、東雲が「友達の管理しているなりきりチャット」に我々を招待する頃には、いのりさんの演じる受けキャラクターとの関係がすっかり出来上がっていたように思う。
しかし、その後も東雲が招待してくれたなりきりチャットでは刺激的な日々が待っていた。
そこは同じアニメ作品の、同じBLカップリングが好きな者たちのみで構成された場で、同じ攻キャラクターと同じ受キャラクターのなりきりが何組もいた。
このチャットルームで出会い、関係を育んだ人も、私といのりさんのように仲の良い者同士で始めた人も、様々だ。
東雲は受キャラクターを演じており、相手の攻キャラクターの人(仮にCさんとする)も紹介してくれた。
東雲の演じる受キャラクターは東雲本人のように元気で明るく、知的な印象で、いのりさんの演じる受キャラクターともまた違って新鮮だった。
いのりさんの演じる受キャラクターは、包容力のある大人の雰囲気をまとっており、内心ではやっぱりいのりさんが一番だな、なんて思っていたりもした。
なりきりチャットに顔を出す一方、いのりさんや東雲と出会った神同人作家のサイトのチャットルームにもちょくちょく顔を出していた。
神同人作家のサイトのチャットルームに、新しくよく見かける人で「レイカ」という人がいた。
レイカはとんでもなく絵のうまい人で、都内の大学に通っているらしい。
大学生ということで、歳が近いこともありレイカとはすぐ仲良くなった。
時期的に大学受験を控えていたので、進路の相談もよくしていた。
レイカは歳の近いお茶目なお姉さんという印象だった。
17歳の東雲も自分と同じ理由でレイカとはすぐ仲良くなり、「レイカもなりきりチャットに誘ってみようか」なんて話になった。
最初は「こんな世界があるなんて」と驚いていたようだったが、レイカも生粋の腐女子であり、BLなりきりに馴染むまでに時間はかからなかった。
レイカは受キャラクターを演じ、相手になる攻キャラクターがいないことから
「いい人いないかな(笑)」
といつも言っていた。
ここで
「あ、じゃあ私は攻キャラクターやってるしたまにレイカの相手になろうか?」
なんてならないのが不思議なところである。
暗黙の一夫一妻、一棒一穴主義の世界だった。
私にはいのりさんが演じる受キャラクターがいる、その事実が全てだ。
初めは寂しがってたレイカだが、相手のいない攻キャラクターを見つけ、すぐに仲良くなったらしい。
これで仲良しのいのりさん、東雲、レイカ、全員相手もちだ。
めでたしめでたし………
とはならなかった。