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なりきりチャットに人生を捧げていた大人の思い出話2

しかしながら、その日はチャットルームには一人しか参加していなかった。
サイト管理人の作家さんでもなかった。
拍子抜けしたような、ホッとしたような気持ちになったが、意を決して参加ボタンを押す。
それからの時間は流れるように過ぎていった。

その日チャットルームに参加していたのは「いのり」さん。
いのりさんは25歳の女性でI県で接客業をしているらしい。

いきなり個人情報かよ、アニメの話をしろよ!

と思われるかもしれないが当時のチャットルームはこういった個人情報をまず話ことで仲良くなっていったように思える。
恐ろしい時代だ。

相手に自分が17歳の高校生であると明かすと驚いたようだった。
17歳ということで驚かれたのは、当時まだPCがそれほど家庭に普及しておらず、一部の大人が買える高価なものだったことが理由だろう。

自分より8つも年上の大人と、好きなアニメについて話す機会など早々なく、この時の気持ちを表すならば「とんでもない世界に来ちゃったな」という感じだった。

その後、いのりさんとは1番の仲良しになった。
いのりさんは物腰の柔らかな大人の女性という印象で、長女の私は自分にお姉さんができたらこんな感じなのかなあと思っていた。
いのりさんを含め毎日様々な人がチャットルームに出入りしていたが、皆良い印象の大人のお姉さんたちばかりで、年下の自分を可愛がってくれることもとても嬉しかった。


なりきりチャットの話題がなかなか出てこなくて申し訳ないが、まだもうちょっとだけ書かせてほしい。
この後、このチャットルームで私になりきりチャットという存在を教えてくれた人物との運命の出会いを果たす。

その人物は東雲といった。

「17歳なんですか!?私もなんです。」

と言われた時は驚いたものだ。

東雲は自分と同い年とは思えないほど沢山のことを知っていた。
面白いサイト、オススメのチャットルーム、ネットマナー、サイトの作り方、IRCの使い方。
インターネットといってもごく一部しか知らなかった自分の世界が一気に広がったのは彼女のおかげだろう。

そして、私になりきりチャットを教えてくれたのも東雲だ。

ある日、東雲が作ったパスワード式のプライベートチャットに仲の良かったいのりさんと二人で招待され、そこで

「2人に友達の管理しているなりきりチャットに是非参加してほしい」

という誘いを受けた。
詳細は後日に話すということで、その日東雲は落ちていった。

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