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なりきりチャットに人生を捧げていた大人の思い出話17

退院すると、携帯とPC、フリーメールのアドレスなどなど………ありとあらゆる場所にラインハルトから大量のメッセージが届いていた。
着信履歴の数は………見たくないほどだった。

私は、まず心配してくれていた学校の友達に退院した旨をメールし、ラインハルトには

「入院してました、ごめん。
色々考えたんだけど、なりきりチャットのサイトから登録を解除したいと思います。
私たちの関係も終わりにしたい。」

と、伝えた。
終わりにしたい理由も説明した。

生活を束縛されているようだということ。
それによるストレスが酷く、入院してしまったということ。
束縛に対して何度も苦言は言ったが、改善されることはなかったということ。

話し合いたい、もう一度やり直したい………

そんな内容のメールを大量にもらったが、私はそれに一切答えることをやめた。


どうしてこうなってしまったのだろう。
なりきりチャットの終わりは何時だって悲しい。

まるで本物の恋人同士が突然の別れ話をするように、うまくいかないものだ。

私は何年も過ごしたファンタジーのなりきりチャットのサイトから登録を解除し、所有しているメールアドレス、携帯電話番号などをすべて変更した。

いのりさんが私の前から姿を消した時も、こんな気持ちだったんだろうな。

そう、ラインハルトが消えるのを恐れていた自分が、結果的に彼女の前から消えることになったのだ。

ラインハルトはプレイヤーの私が好きだったのだろうか?
それとも、キャラクターと重ねて見ていたんだろうか?

今となってはそれもわからない。

もっと真剣に向き合えばよかった。
結局、自分は彼女の気持ちから逃げてしまったんだろう。
しかし、限界を迎えているのは確かだった。

「いっちが私のこと捨てたら、死んじゃうかも」
この言葉だけが長い間引っかかっていたが、ラインハルトと共通の知り合いから本人の無事だけは確認することができた。
心底ホッとしたものだ。

「ラブストーリーは2人が結ばれて幸せになったらそれで終わりだけど、なりきりチャットはその後のお話も自分たちで作りあげていけるのが良いよね」
ラインハルトが口癖のように言ってた言葉を思い出す。

なりきりチャットのキャラクターの関係は、プレイヤーの関係が終わったら終わりだ。

それでもいつか、永遠に続く幸せな物語を作れる日は来るんだろうか。

私は、何年かぶりの長い眠りにつきながら、幸せな二人の夢を見たーー

ような気がした。

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