【Wordで同人誌 よもやま話4】セクション区切りと隠しノンブルの設定の仕方
Wordで組版をして小説同人誌を作っていると、本の扉ページや章タイトルページを少し変えたり、奥付など事務ページを作りたくなります。
特に本を開いた時に出迎えてくれる最初の美しい扉ページ、各話をしっかり区切ってくれる1ページ丸ごとの章タイトルページなどは、同人字書きの夢のひとつとも言えます。
しかし初期状態のWordのヘッダー/フッターはすべてのページで共通で、これでは本の扉ページに画像を入れても、章タイトルページを頑張っても、ヘッダーが少し邪魔になってしまいます。
そんなときに使う機能が「セクション」区切りで、これはWordの文章を実質分割することができる機能です。
セクション区切りを入れると、セクションごとに別々のヘッダー/フッターを設定たり、扉ページだけ隠しノンブル(製本時にノンブルを見えなくする方法)にしたり、このようにサイズの異なる用紙を混在することさえも可能です。
ヘッダー/フッターまで含めたレイアウトの自由度を増すためには欠かせないセクションという機能ですが、一方で【Wordの鬼門】と言っていい程癖が強く、使用が難しいのも確かです。
闇雲にセクションを入れたり設定を間違えると、途端にヘッダー/フッターまで含め、今までやってきた設定自体が消えてしまい、自力では直せなくなったという声は多いです。
ということで、理解しないで使うのは(少なくとも時間のない入稿間際で初めて使うようなことは)、避けた方が良い機能だとも私も思っています。
今回はそんな字書きの夢でありながら、Wordの鬼門のセクションの使い方について解説します。
Wordの組版に限らず、ビジネス文書や論文などの文書作成全般で使える知識ですので、ヘッダーとフッターの設定がうまくいかない……という方は目を通してみるとお役に立つかと思います。
1.セクション機能を使う前にすべきこと
①原稿データの基本の部分をヘッダー・フッターまで作り込んでおく
よもやま話の1と2を見ながら、必ず原稿データ用の基本となる原稿サイズ・行数・文字数・余白・ノド設定・奇数/偶数ページ別のヘッダー/フッターまでは必ず作り込んでおいてください。
ヘッダーやフッターに章タイトルなどを表示したい場合は、それも設定しておきます。
(今回はフィールド機能で見出し1が表示されるようにしています)
もし塗り足しや疑似小口染めをしたいなら、その設定の完了もこの段階に含まれます。
そこまで含めてセクションを入れる前に「本文用の原稿データの基礎」は完成させておいてください。
セクションを入れてしまったあとで直すのは、とても大変です。
②本の構成を考える
セクションは必要なところに最低限にしたいので、まず作る本の構成を考えなくてはなりません。
ここではよくある小説本の構成にしてみます。
見出しになりそうな部分は「■」を先頭につけました。
扉ページ、目次、各章タイトルは奇数ページで1ページ使って表示し、そのあとに改ページが入って本文などが続いていくイメージです。
そうしたら、各ページが奇数・偶数どちらのページで始まって欲しいか考えます。
見開きを挟んだ奇数・偶数ページの振り分け構成はこのようになります。
この例だと、扉ページ、目次、章タイトルは奇数ページです。
奥付は必ず偶数ページになります。
目次と章タイトルは奇数ページにしたいので、本の扉ページの直後と、目次の直後に調整用の空白ページが必要になりそうです。
あとがきの始まりを偶数ページにしたのは、章タイトルとは少し変えて、文の始まりに「あとがき」で始まるようにする想定です(よくありますね)。
③隠しノンブルにしたいページを考える
隠しノンブルとは、糊などで本が綴じられて見えにくくなる、ノド側の位置に入れたノンブルです。
製本時、ノドの中にノンブルが綴じ込まれるので、挿絵だったり、飾り枠やタイトルの入った本の扉ページ、章のタイトルページなど、ノンブルが邪魔になってしまうところでよく使われる技法です。
今回の構成として、本の扉ページと目次は隠しノンブルにしたいとします。
④ヘッダー/フッターの章タイトルを非表示にしたいページを考える
小説の文章ページに関しては、ヘッダーのノンブル横に、章のタイトルが表示されていることはよくあります。
ただ、章タイトルページに限って言えば、ノンブルはそのままでいいとしても、ヘッダー章タイトルは非表示にしたいかもしれません。
章タイトルのページはこんな風に、ノンブルだけにするとスッキリしますね。
※章タイトルをページの真ん中に持ってくる方法はよもやま話の3「カスタマイズ:偶数行の原稿ページの真ん中に見出しを表示する(行取り+改ページ)」を参照してください。
⑤ヘッダー/フッターなどレイアウトを変更したい箇所を元に、セクションを入れる(区切る)位置を決める
目標の本のレイアウト構成がまとまりました。
これを見ると、本の扉ページと目次は「隠しノンブル・ヘッダー章タイトル非表示」で共通しているので、同じセクション(区切り)でまとめて良いでしょう。
次に、章の方に目を移すと、章1タイトルは「ヘッダー章タイトル非表示」にしたい。
ですが本文の奇数のページでは「ヘッダー章タイトル表示」にしたい。
奇数ページのヘッダーデザインが二種類必要になります。
とすると章のタイトルと本文の間にセクション区切りを入れないといけないのか、というとそうでもありません。
Wordには「セクションの先頭ページを別指定する」という機能があります。
この機能を使って、各セクションの1番最初のページのヘッダー/フッターデザインを別に指定することができます。
セクションの先頭ページ機能を使うので、章タイトル2の直前にだけ、セクション区切りを入れます。
あとがき文に関しては見開き2ページにする想定として、小説部分とは変えてヘッダーからタイトルは消したいと思います。
最後の奥付ページは必ず偶数ページになるので、ヘッダーの章タイトルは元々表示されませんし、隠しノンブルにする必要もありません。
特に「あとがき」のあとで区切って変える必要はなさそうです。
なので最終的にセクションを入れる箇所は以下で良さそうです。計3箇所ですね。
2. セクションを入れて各設定をしていく
①原稿データのバックアップを取っておく
まず、事前準備で作り込んでおいた原稿用のWordファイルをコピーして、元のファイルはバックアップとしておきます。
セクション設定はコピーしたファイルを「【ファイル名】_セクション設定中」などバックアップと見分けがつくようにして始めます。
セクション設定は失敗しやすく、直しにくい作業なので、最初からやり直した方がいいこともよくあります。
また、作業の都合上、元々入っているテキストはすべて削除の上で作業を始めます。小説などを既にそこで書き始めていた場合、そのデータも消えてしまいます。
なのでこの原稿ファイルのバックアップ作成はぜひやっておいてください。
②「次のページから開始(N)」セクションを入れる
Ctrl+Aで文章を全選択して文章を削除し、一旦原稿の中身は空の状態にしておきます。
この時点で文章を全て削除した状態で始めます。
※繰り返しますが、原稿データのバックアップを取って始めてください。
次に、原稿ファイルの1ページ目に、決めた構成を打ちます。
(今はフィールドで設定した「見出し1」スタイルが文書内にないので、ヘッダーにエラーが出たりしますが、無視してください)
セクション区切りを入れる箇所の末尾に、カーソルを合わせます。
「レイアウト」タブ→「区切り」をクリックし、「セクション区切り」の「次のページから開始(N)」を押します。
すると、セクション区切りが挿入されて、ページも改行されました。
同じように、残りの章2、あとがきにも「次のページから(N)」のセクション区切りを入れます。
③見出し1スタイルを設定していく
決めた構成の、見出しになる部分「■」に一旦全て見出し1スタイルを指定します。
すると奇数ヘッダーのノンブル横に各見出し1が表示されます。
ここで入れるセクション単位の見出しは、一旦はすべて同じアウトラインレベル(今回なら見出し1)に統一しておくと作業しやすいです。
アウトラインレベル闇際の設定の仕方についてはよもやま話3の「」「2. アウトライン(見出し)レベルとは」を見てください。
④一番後ろの、独立したセクションのヘッダー/フッターから設定する
ここからいよいよセクションの設定をしていきますが、
というのは、後で説明する「前と同じヘッダー/フッター」という機能が絡んできます。
「前と同じヘッダー/フッター」機能がONの状態で、原稿の1ページ目の扉ページ用に隠しノンブルなど大きな設定変更をしてしまうと、そこから後ろのセクションまで同じように隠しノンブルに変更されてしまうのです。
後ろのセクションから設定を変えていく方が、その設定を見落としていても影響範囲が少なく済みます。
「セクションを入れたら他のページのヘッダー/フッターまでおかしくなった!」というトラブルの多くはこれのせいだと思います。
後続のセクションに影響が出るのに、「前と同じヘッダー/フッター」のON/OFFは見逃してしまいやすい設定です。
そのため、作業的には何となく前の方のセクションからヘッダー/フッターをいじりたくなりますが、後→前のセクションに向かって設定変更を進めた方が良いでしょう。
ではあとがき・奥付のセクションの作業をしていきます。
確認用に、あとがきページに適当なテキストを入れて、見開きでの状態を見られるようにしました。
今は奥付にも見出し1を指定しているので、このくらいのテキスト量だとヘッダーのノンブル横の章タイトルが「奥付」になっている状態ですが、正常です。
あとがきのセクションの、章タイトルが表示されている奇数ページのヘッダーをクリックします。
するとヘッダーの編集画面に切り替わって、「奇数ページのヘッダー ―セクション4―」と表示されています。
セクション区切りを入れる前は、「奇数/偶数ページのヘッダー/フッター セクション1」だけで、「セクション4」というのは存在しませんでした。
こは
「奇数/偶数ページのヘッダー/フッター」だけではなく、「セクション別」でもヘッダー/フッターのデザインが変えられるようになりました。
セクション4の奇数ページのヘッダー編集画面で、「ヘッダーとフッター」タブから、「前と同じヘッダー/フッター」設定を確認します。
ここがONになっていると、グレーで凹んだように見えます。
「前と同じヘッダー/フッター」をOFFにします。
これで、このセクションの奇数ページのヘッダーは、前のセクションのヘッダーと連動しなくなりました。
そのままヘッダーに表示されている見出し部分の一番最後にカーソルを合わせて、
キーボードのBackSpaceを1度か2度押してヘッダーのタイトルを削除し、ノンブルだけ残します。
その状態で前のセクションの章の奇数ページに行くと、こちらはちゃんとヘッダーの章タイトルが残っています。
この一連の操作は何をやったかというと、
奇数ページの「前と同じヘッダー/フッター」をOFFにして「あとがき」セクション以降のヘッダーと小説部分のヘッダーの設定を前のセクションと切り離す。
前のセクションと設定を切り離した「あとがき」のセクションに対し、改めて必要な設定をする。
というものです。
これで、「あとがき」セクションでは、奇数ページのヘッダーのタイトル表示がなくなったことになります。
ちなみにそれは、何ページあとがきを書いても同様です。
偶数ページのヘッダー/フッターの設定も確認します。
こちらは「前と同じヘッダー/フッター」をONにしておきます。
偶数ページに関しては、この文書内においてはすべてのヘッダーが右寄せノンブルのみの表示で共通していますから、「前と同じ」にすることでその設定で統一されるようにします。
なお、あとがき・奥付のセクションでは「先頭ページのみ別指定」のチェックが外れていることを確認してください。
このセクションでは使わない設定なので、OFFにしておきます。
⑤章と本文がセットになっている、章のセクション群の設定をする
今度は章1と章2のセクションの設定です。
こちらはいずれも章タイトル+本文という構成で共通しているセクションです。
この2つのセクションでは同じヘッダー設定を使用したいと思います。
一旦「ヘッダーとフッターを閉じる」で本文の編集に戻ります。
次に、奇数ページに目次、章1タイトルが表示されるようにページ数を調整します。
今回は本の扉ページと目次ページのあとに「白紙」ページを入れて調整していきます。
まず、本の扉ページの直後の、白紙ページ予定の先頭にカーソルを合わせます。
「挿入」タブ→「ページ区切り」をクリックします。
するとカーソルを置いていた場所に「改ページ」が入ります。
まだ目次が偶数ページなのでもう一回、今度は目次の直前の白紙ページ予定の行末に(赤丸)カーソルを置いて、「ページ区切り」を入れます。
すると目次が3ページ目になります。
その状態で、目次の後ろの白紙ページの先頭で同じように「ページ区切り」を一回入れます。
すると奇数ページ、5ページ目に章1タイトルがきます。
目次の後ろには既に先に入れたセクション区切りが入っていますから、これで必要なページ区切りの挿入は完了です。
そうしたら、章1の本文をテキストを3ページほど増やします。
奇数/偶数ページ別のヘッダー・フッターの表示を確認するためにテキストをふやすので、ちょっと量が必要です。
サンプル用のテキストはこういったところでテキストを作って、コピーするといいでしょう。
⑥章1(セクション2)の設定をする
章1の、章タイトルがある最初のページに移動します。
この章タイトルは、ページ調整で奇数ページになっているはずです。
まずは、章1(セクション2)の奇数ページのヘッダー/フッターの編集画面では、「前と同じヘッダー/フッター」をOFFにします。
偶数ページは、「前と同じヘッダー/フッター」をONにします。
「あとがき」のセクションでの設定と同じですが、偶数ページに限っては、文書全体で右寄せのノンブルがあるだけです。
なので偶数ページだけはすべてのセクションで「前と同じヘッダー/フッター」をONにします。
ここまで終わったところで、章1のタイトルページを見ます。
この章タイトルのページですが、同じタイトルがヘッダーの方にも表示されています。
章タイトルのページは、最終的には常に奇数ページで見出しだけを真ん中に表示してこのようにしたい希望がありました。
章タイトルページのヘッダーでは、タイトルが表示されないように設定を追加したいと思います。
章1(セクション2)の最初のページのヘッダーをクリックして、ヘッダーとフッターの編集画面を開きます。
「ヘッダーとフッター」タブで「先頭ページのみ別指定」のチェックを入れ、「前と同じヘッダー/フッター」をOFFにします。
すると、ヘッダーからノンブルとタイトルが消えて、ヘッダーの表示も「1ページ目のヘッダー ―セクション2―」に変わってしまいました。
ヘッダーが真っ白になってちょっとびっくりするかも知れません。
ですが、章1セクションの次の奇数ページを見てください。
こちらではちゃんとノンブルもヘッダーのタイトルも表示されていますし、表示も「奇数ページのヘッダー ―セクション2―」です。
「先頭ページのみ別指定」は各セクションの1ページ目だけ、別のヘッダー/フッターを指定できる機能です。
この先頭ページのヘッダー/フッターの設定は、偶数/奇数ページのヘッダーとは独立しています。
「先頭ページのみ別指定」にチェックを入れるとヘッダーのノンブルやタイトルが消えてしまったのは、章セクションの「1ページ目のヘッダー/フッター」が元々は存在しなかったからです。
それをこれから設定していく必要あります。
つまり先頭ページの設定とセクション・奇数偶数ページ機能を合わせることで、急にこれだけの種類のヘッダー/フッター設定を個別にすることができるようになったという訳です。
先頭ページ(各セクションの1ページ)目のヘッダー
先頭ページ(各セクションの1ページ)目のフッター
奇数ページのヘッダー
奇数ページのフッター
偶数ページのヘッダー
偶数ページのフッター
設定を続けます。
章の先頭ページでは、ヘッダーのタイトルは消したいですがノンブルは表示したいので、再度フィールドからノンブルを入れ直します。
入れ方はよもやま話3の「カスタマイズ:フィールド機能と見出し機能で章タイトルをヘッダーに表示する」で解説しているので、ここでは簡単に説明します。
再び章1の「1ページ目のヘッダー ―セクション2―」設定を開いてカーソルを合わせ、「挿入」タブ→「クイックパーツ」→「フィールド」を押します。
フィールドの設定を選び、「OK」を押します。
すると、章1の最初のページはノンブルだけの表示になりました。
章1の他の奇数ページのヘッダーはこれまで通りです。
⑦後続の章セクションの「前と同じヘッダー/フッター」と「先頭ページのみ別指定」をONにする
これで章1の設定は完了しました。
次に続く章2のセクションは章1と同じヘッダー/フッターの設定を引き継がせます。
確認しやすいよう、章2の方の方も章タイトルが奇数ページにくるように調整しておきます。
さらに章1と同じくらい文書を足して、奇数/偶数ページのヘッダー/フッターが全て確認できる状態にします。
それが終わったら章2(セクション3)のページのヘッダーとフッターの設定で、今度は偶数・奇数ページ両方で「同じヘッダー/フッター」をONにします。
章2の奇数/偶数ページのヘッダーとフッターの設定が「前と同じヘッダー/フッター」になっていることが確認出来たら、また章2の最初のページに戻ります。
しかし、奇数・偶数すべてのヘッダーやフッターの設定で「同じヘッダー/フッター」をONにしたはずなのに、章タイトルとノンブルが表示されてしまっているかも知れません。
この状態だった場合、章2の最初のページのヘッダーとフッターの設定でも、「先頭ページのみ別指定」をONにすれば反映されます。
※前と同じヘッダー/フッター設定もONにしてください。
すると、章2の先頭ページも、章1と同じようにノンブルだけになっています。
章2では、先頭ページのみ別指定設定と前と同じの設定、両方ONにすることで章1の先頭ページのヘッダーを引き継ぐことができるのです。
続く章2の奇数ページを見てみると、こちらもちゃんとノンブルと章タイトルが表示されているかと思います。
うまくいっていなかったら、章2のセクション(セクション3)の奇数・偶数ページのヘッダー/フッター部分で、「前と同じヘッダー/フッター」の設定になっているか確認し直してみてください。
これで章1と章2の連続した、同じヘッダー設定を使うセクションは無事に設定できたことになります。
この「先頭ページのみ別指定」設定はセクションの頭のページだけ別指定できて非常に便利なのですが、しかし章2のように後続のセクションでは、設定がOFFになってしまっていて、混乱する場合があります。
そうした場合は落ち着いて、前のセクションと設定を同じにしたいセクションの「前と同じヘッダー/フッター」と「先頭ページのみ別指定」をONにしてください。
章3、章4などがある場合も同じで、この設定を確認してONにしてください。
ここまでできたら、最初に設定した「あとがき・奥付」セクションも再度確認してみてください。
こちらは手順通りにやっていれば奇数ページのヘッダーに関しては「前と同じヘッダー/フッター」設定をOFF、先頭ページもOFFになっているため、章のセクション群とは違うヘッダーのままになっているはずです。
【各セクションの設定作業の中間まとめ】
これまで説明してきた設定をまとめます。
どこの部分に変更を加えて、どこを前と同じにしているのかをしっかり把握することが、セクション機能では必要になってきます。
変になってしまった場合はよく確認してみてください。
【Tips】「セクション区切り」「奇数/偶数ページを別指定」「先頭ページのみ別指定」「前と同じヘッダー/フッター」の併用は、パターンが爆発的に増える
これらの機能を全て使用すると、ひとつのセクション内だけでも都合6か所ものヘッダー/フッターのスタイル設定が個別にできるようになります。
先頭ページ(各セクションの1ページ)目のヘッダー
先頭ページ(各セクションの1ページ)目のフッター
奇数ページのヘッダー
奇数ページのフッター
偶数ページのヘッダー
偶数ページのフッター
「前と同じヘッダー/フッター」の指定を、それぞれの箇所でON/OFFできてしまいます。
また、どこをON/OFFにしているのかWordで一覧にして確認する方法もありません。
※ちなみに先頭ページには偶数/奇数ページのヘッダーの区別はないので、「奇数ページが先頭だったら」や「偶数ページが先頭だったら」といった設定をすることはできません。
おそらく、元々が英語圏(横書き圏)での開発なので、奇数・偶数で互い違いにノドがあるような縦書き文書対応での欲しい機能が備わっていないようです。
更にセクション別でも変更できてしまいますので、極端な話、セクション数×6箇所もヘッダー/フッターを個別に設定することができてしまいます。
セクション機能を使い始めると、こういったページのヘッダー/フッター部分の管理調整を自力でやらねばならないところが、混乱の原因になっていると思います。
3. 扉と目次ページに隠しノンブルを入れる
ここまでセクションと先頭ページの設定をやってきましたが、いよいよ応用の隠しノンブルです。
セクション機能を使う目的として、この隠しノンブルの需要が高いのではないかと思いますので解説します。
①隠しノンブルの基本知識
隠しノンブルは、最初に説明したように、ノド側の製本時に隠れる部分にページ数を入れる方法です。
入れる位置としては、印刷所によって指定されている場合もあります。
その場合は印刷所の指示優先で従いましょう。
隠しノンブルについて、共通する一般的なことですが、まず隠しノンブルを塗り足しの範囲には入れてはいけません。
※塗り足しと仕上がりのサイズについてはこちらを参照してください。
原稿作成の基本 | 同人誌印刷の緑陽社
次に、仕上がりの内側に配置するとしても、あまりノド側を攻め過ぎると製本作業の際、断裁ズレで隠しノンブル自体が切れてしまう可能性があります。
ノンブルが断裁で切れたり、数字が小さすぎても(最低でも6pt=2.1mmくらいは欲しい)、製本作業をする人が確認しづらくなってしまうので、乱丁や落丁の原因になったりします。
一般的には、裁断ズレは3mm程度は発生する可能性があると言われます。
なので仕上がりサイズのあまり端の方、切れてしまうかも知れない部分に重要なものを配置するのは避けるべきです。
以上を考えると、隠しノンブルも本の仕上がりサイズの端から3mm程度は内離して配置する必要があります。
文字のサイズはあまり大きすぎると今度はノドから見えてしまうので、6pt(2.1mm)……となると、隠しノンブルが入る場所としてはノド側5mm~6mm程度の範囲に収まるでしょう。
今回は塗り足しなしの原寸サイズの原稿データとして、隠しノンブルを入れます。
②1ページ目のヘッダー内を削除する
今回の構成では扉ページ・目次ページのヘッダーで、タイトルは非表示、隠しノンブルにするので、調整します。
セクション1の1ページ目のヘッダーをダブルクリックして、設定を開きます。
「先頭ページのみ別指定」のチェックが外れていることを確認し、ヘッダーの中身をキーボードのBackSpaceで削除します。
これで本の扉・目次セクションの奇数ページのヘッダーが空になりました。
ちなみに本の扉ページから目次まではセクション1、つまり前のセクション存在しないので、「前と同じヘッダー/フッター」設定は無効になります。
③隠しノンブルをフィールドとテキストボックスで作る
空になったセクション1の奇数ページヘッダーに、隠しノンブルを設定していきます。
ページ数は「1」など直打ちせず、フィールド機能を使って自動でページ数に合わせてカウントされるようにします。
フィールドはこれまでヘッダーに直接入れてきましたが、実はテキストボックスにも入れることができます。
(これまでヘッダーに直接入れていたのは、数値指定で上下を移動できるので、その方が奇数・偶数ヘッダーで設定が別でも高さが合わせやすいのです)
ヘッダー部分にカーソルを合わせたまま、「挿入」タブ→「図形」→「テキストボックス」※横書きをクリックします。
ヘッダーにマウスを持って行くと「+」のような十字のマークになるので、そのままクリックするとテキストボックスが挿入されます。
テキストボックスの中身はまだ何もないので、ここにページ番号が表示されるようにします。
テキストボックスにカーソルが合った状態で、「挿入」タブ→「クイックパーツ」→「フィールド」を押します。
フィールドで、ページ番号を入れる設定を選んで「OK」を押します。
すると、ページ番号がテキストボックスの中に表示されました。
このようにフィールドはテキストボックスにも挿入できますし、見出しなどのスタイルも設定できます。
ただ、見出しスタイルをテキストボックスに入力しても、ナビゲーションウィンドウに表示されません。
また、テキストボックスの配置を思うようにするにもコツがいりますし、設定がうまくいっていないとテキストボックスがページに取り残されたり改行で位置がズレたりもます。
そういった問題もあるため、各章の見出しスタイルはなるべく本文に書き込むことをおすすめします。
(装飾性の高い扉ページにしたい場合など、テキストボックスを使わなければ実現できないこともありますので、その場合は使用しましょう)
④隠しノンブルの見た目を整えて配置する
続きです。今はテキストボックスの背景に色(今は白)がついてしまっていますし、黒い枠もあるので見た目を整えてから位置を動かします。
テキストボックスの横に出ている赤丸で囲ったマークをクリックすると、「レイアウトオプション」が開きます。
「前面」、「ページ上の位置を固定する(N)」にチェックを入れます。
テキストボックスの枠線の辺り(矢印が四方に向かってる十字みたいなマークになる位置)でダブルクリックすると「図形の書式」が開きます。
「図形の塗りつぶしなし(N)」と、
「枠線なし(N)」をクリックします。
すると枠と塗りつぶしの色が消えましたが、まだ枠もフォントサイズも大き過ぎます。
まずは、枠の中の文字を選んで、「ホーム」タブからフォントサイズを6ptにします。
フォント指定の横の▼で選べる最小サイズは「8」ですが、手打ちするとそれ以下のサイズも入力できます。今回はその方法で6ptを指定しました。
隠しノンブルを入れるのは奇数ページ想定なので、ノドは右にきます。
フォントを右揃え(右寄せ)にしておきます。
それが終わったら、テキストボックスの枠のボックス境界辺りを右クリック→「図形の書式設定(O)」をクリックします。
すると、「図形の書式設定」が開きます。
まず、図形の書式設定から「図形のオプション」の矢印の十字のついたような四角いアイコンを押して「テキストボックス」の設定を開きます。
設定を以下に変更します。
垂直方向の位置:上下中央揃え
文字列の方向:横書き
左余白:0mm
右余白:3mm
上余白:0mm
下余白:0mm
テキストの回転、図形のサイズ調整、折り返しなど全てチェックを外す
テキストボックスがこんな感じに細くなるので、サイズ調整をします。
テキストボックスの「〇」部分を引っ張りながらサイズを調整します。
図形の書式設定で右3mmの余白はそのまま、幅は文字が3桁入る程度広げます。
文字が上下左右どこも切れていなければOKです。
テキストボックスの枠の境界部分をまた右クリックして、今度は「その他のレイアウトオプション(L)」をクリックします。
すると「レイアウト」が開きます。ここからテキストボックスの配置を数値や左右中央揃えなどで合わせられるので、入れていきます。
以下の設定にします。
基準はすべて「ページ」にしてください。
水平方向の配置:右揃え/基準:ページ
配置:上/基準:ページ
垂直方向の下方向の距離:5.5mm
一度配置・上にしてから下方向の距離のラジオボタンを選び直す
→ここは好みです。縦の位置は大体通常ノンブルと同じくらいになるよう、ヘッダー位置にしました文字列と一緒に移動する:チェックを外す
→隠しノンブルはページ上の位置を固定したいのでOFFにしましたオーバーラップさせる:チェックを入れる
→図形などの重なり合わせを許可するかの設定です。隠しノンブルなので図形や画像と重なることもありますから、これはONにします。アンカーを段落に固定する:チェックを外す
→固定された段落に合わせて動かないよう、これもチェックを外します
「OK」を押します。
すると隠しノンブルが、ヘッダー辺りの、ページ右端にくっつきました。
仕上がりサイズの3mm内側に入れるため、図形の書式の右の余白で3mm取って、レイアウトの「基準」をページにして右寄せにすることで、隠しノンブルのノドからの距離を数値で調整できるので便利です。
もし逆に偶数ページで隠しノンブルを入れたい場合は、文字は左揃え、図形の書式で左に3mm余白を入れて、右クリック→レイアウトの設定で左揃えにするといいと思います。
目次のページも確認してみると、ちゃんとノド側に隠しノンブルが入っています。
これで、本の扉・目次セクションの隠しノンブルの設定も完了しました。
あとはテキストデータを流し込んだり、スタイルで見出しの見た目を設定したり、章が増えたら必要箇所にセクションを増やしたりしてください。
【各セクションの設定のまとめ2】
最終的な各セクションの設定を設定をした順にまとめます。
ヘッダー/フッターがおかしくなった場合は、どのセクションの先頭ページ/ヘッダー/フッターにどう変更を加えて、どこを前と同じにしているのか、よく確認してみてください。
【Tips】見出しの前の改行やセクション区切り、ページ区切りを消す
こういう改行が消せなくて困ることがあります。
次の行の見出しの頭にカーソルを置いてBackSpaceを押しても何かうまくいかなかったり……。
そういう場合は、改行部分にカーソルを置いて、「Delete」キーです。
同じように、改ページやセクション区切りも、先頭にカーソルを置いて「Delete」キーで削除できます。
尚、セクションの削除には要注意の点がありまして、これもまた「ヘッダー/フッターの設定がおかしくなった」という嘆きの原因だと思います。
「4.セクション機能の注意点・補足」の「⑥セクションを削除すると、後ろのセクションのヘッダー/フッター設定で上きされてしまう」を読んでから実行してください。
【Tips】「3」始まりのページ番号にしたら、セクションを切ったところからページ番号がリセットされてしまう
よもやま話2で「3」始まりの設定の方法を書きましたが、セクション区切りを入れたらページ番号にトラブルが起こる場合があります。
セクション毎にページ番号がリセットされて、「1」や「3」から始まるようになってしまったという問題です。
その場合は、番号が狂ってしまったセクションのヘッダー/フッターの編集画面を開きます。
次に「挿入」タブ→「ページ番号」→「ページ番号の書式」を確認します。
「ページ番号の書式」が「前のセクションから継続(C)」になっているか確認してください。
「前と同じヘッダー/フッター」や「先頭のページの別指定」と「ページ番号のカウント」の設定はまた別になっていますので、ページ番号が狂っていたらここを確認してください。
【Tips】扉ページに装飾用の画像を入れたら画質が悪くなってしまう場合の解決方法
Wordファイルは画像を挿入することができますが、画像を入れたら画質が落ちてガビガビになったりぼやけてしまった……というトラブルが発生することがあります。
小説に挿絵を入れたり、隠しノンブルを設定した扉や章タイトルページにこのように画像で枠を入れたいということはよくあります。
セクション機能そのものとはずれますが、画像劣化の回避方法だけ説明しておきます。
まず、画像を入れる前に、設定を行います。
メニューの「ファイル」をクリックします。
ファイルメニューが開いたら、「オプション」を開きます。
※画像のように「その他」の中に畳まれている場合もあります。
「Wordのオプション」が開くので、「詳細設定」→「イメージのサイズと画質」の中の設定を次のようにします。
ファイル内のイメージを圧縮しない(N):チェックを入れる
規定の解像度(D):高品質
あとは「OK」を押してオプションを閉じ、ファイルを上書き保存して設定を保存してください。
この設定が終わった後は、画質を落とさずに画像の挿入ができるようになります。
それでも差し込んだ画像がジャギジャギしているようでしたら、まずは挿入している画像自体が十分に高画質かどうかを確認してください。
あまり小さい画像だと、この設定をONにしていても引き延ばすとぼやけたり、縁がジャギジャギします。
それでも駄目、あるいはPDF化の際に画像が荒れるようでしたら、アカツキユウさんの記事が詳しいので参考にしてみてください。
ラスター画像とベクター画像の種別もあったり、その関係の可能性もあります(記事内で解説してくださっています)。
4. セクション機能の注意点・補足
手順だけでは触れられなかった注意点を補足しておきます。
①セクション区切りの「偶数ページから開始」と「奇数ページから開始」は使わないこと
まず見出し通りなのですが、セクション区切り機能の「偶数ページから開始(E)」と「奇数ページから開始(D)」は使わないでください。
この機能は文字通り、セクション区切りを入れたら次のページが奇数/偶数になるかどうかを指定できる機能です。
この機能を使うと、たとえば「8ページ」の直後に「偶数ページから開始(E)」の区切りを入れると、次のページが画面上では「10ページ」になります。
しかも、表示自体は奇数ページと同じように、ノンブルが左寄せになっています。
では「9ページ」はどこにいってしまったかというと、印刷やPDFデータを作成したときに現れます。
「8ページ」と「10ページ」の間に、自動で白紙の「9ページ」が差し込まれるのです。
ただこれは見ての通り、ヘッダーやフッターも一切ない、ただ「真っ白なページ」が挿入されるだけに過ぎません。
調整された「10ページ目」も本来であれば偶数ページなのに、ノンブルが奇数ページと同じ左寄せになってしまっています。
このように、奇数/偶数ページ別のヘッダー設定が狂ってしまいます。
少なくとも同人誌の原稿データ作成では、問題が多くて使うことができない機能です。
(もしも自動で挿入される白紙ページが、ノンブル入りのヘッダー/フッターで、続く奇数/偶数ヘッダーも狂わなければ神機能だったのですが…)
「セクションを入れた後に印刷したら真っ白なページが何故か挿入される」「奇数/偶数ページのヘッダー・フッター設定が変になった」というトラブルの何割かは、この「偶数ページから開始」と「奇数ページから開始」のセクション区切りをうっかり使ってしまったからだと推測しています。
ですが少なくとも、「次のページから開始」するセクション機能を常に使うようにすれば、真っ白な白紙ページが勝手に挿入されて入稿時に知らず……というトラブルは回避できます。
②偶数/奇数ページの割り当ては、改ページ区切りで調整する
前述のとおり「偶数ページから開始(E)」と「奇数ページから開始(D)」は使えませんので、奇数・偶数ページの割り振りは手動で調整が必要です。
たとえば扉・目次ページが偶数ページになってしまうと隠しノンブルが出なかったりしますし、奥付は偶数ページになるようにしないと、真っ白なページが挟まってしまいますので、ページ調整が必要です。
その際、画像の例のように、大量の改行で調整するのは極力避けましょう。テキストの行の増減があると後続のページ調整がずれやすいですし、たくさんあると削除もちょっと手間です。
改ページ区切りで入れた方がスマートです。
原稿を書き上げてページ調整の仕上げの段階に入ったら、章の最後のセクション区切りの手前に、改ページ(ページ区切り)を入れたり削除したりして、奇数・偶数ページを構想通りに調整してください。
また、改ページ(ページ区切り)の入れ方は二種類あって、挿入タブから入れる方法と、
「レイアウト」タブの「区切り」→「改ページ(P)」で入れる方法があります。
手動で奇数・偶数ページを割り振り調整するのは手間ですが、よもやま話2で説明したように見出しが使えていれば、ナビゲーションウィンドウで章の頭にはワンクリックで飛べます。
前から順に確認していくといいでしょう。
③「前と同じヘッダー/フッター」の設定は個別に要確認
「前と同じヘッダー/フッター」機能は便利な反面、色々な設定が絡むと複雑になりやすい部分です。
※なお、最初のセクション(セクション1)だけは「前」がないのでこのように「前と同じヘッダー/フッター」機能が薄くなっていて使用できません。
以降のセクション(セクション2以降)からは使用できるようになります。
セクション2以降のヘッダーとフッターメニューは、このようになっており、「前と同じヘッダー/フッター」機能を切り替えることができます。
この「ヘッダーとフッター」メニューでは、ヘッダーとフッターのどちらにカーソルを合わせていても、以下の設定はセクション内で連動してくれます。
先頭ページのみ別指定
奇数/偶数ページ別指定
しかしTipsでも触れましたが「前と同じヘッダー/フッター」機能は、先頭ページ、奇数・偶数ページのヘッダー/フッター各所でONとOFFを個別に設定できるようになっています。
先頭ページのヘッダー
先頭ページのフッター
奇数ページのヘッダー
奇数ページのフッター
偶数ページのヘッダー
偶数ページのフッター
極端なことを言えば、セクション3だけ、
先頭ページのヘッダーは「前と同じ」
先頭ページのフッターは「空白」
奇数ページのヘッダーは「前と同じ」
奇数ページのフッターは章タイトル表示
偶数ページのヘッダーは隠しノンブル
偶数ページのフッターはノンブルのみ
という滅茶苦茶なこともできてしまいます。
この「前と同じヘッダー/フッター」設定が個別に設定可能な項目であることを知らないと、うまくヘッダーとフッターの設定が直せなくなります。困ったら思い出してみてください。
④「前と同じヘッダー/フッター」で引き継げるのは直前のセクションだけ
セクション2でヘッダーの設定を変えたけれど、セクション3ではセクション1と同じヘッダーにしたい、ということはよくあります。
ですが前と同じにできるセクションは、常に直前のセクションだけになります。
つまりセクション3はセクション2と同じヘッダー/フッターしか「前と同じ」にはできないのです。
しかし直前のセクションとしか同じにできないとしたら、今までの設定で偶数ページのヘッダーだけは、本の扉・目次のセクション~あとがき・奥付セクションまで全て同じにできているのは変だな、と思うかも知れません。
これには理由があります。
最終的な各セクションの設定を前から順に見てみると、偶数ページのヘッダーを設定しているのは、セクション1だけです。
続く★マークをつけたセクション2~セクション4の偶数ページのヘッダーは「前と同じ」をONにしています。
このように例外として、「前と同じヘッダー/フッター」がセクション2~3のすべてでONになっている箇所は、一番前のセクション1の偶数ヘッダーの設定を文書全体で共通させることができます。
偶数ページのヘッダーはこの方法ですべてのページを共通にしています。
ここまで説明してきた通り、「前と同じヘッダー/フッター」設定は確認もしづらい上に注意点も多く、セクション設定の難解さに本当に拍車をかけていると思います。
頭がこんがらがってきたら、どこに区切りを入れたのか、文書全体で共通させたいヘッダー/フッターはどこか、先頭ページが同じなのはどこからどこのセクションか、他と独立したヘッダー/フッターを使用したいセクションはどこか……など紙に簡単に書き出して整理した方がいいと思います。
こういう感じにして、セクションなど書き込んでいくと先頭ページにすべきところ、偶数/奇数ページで設定するべきところ、とわかりやすいと思います。
図を書いてもいいし、このようなメモで整理するのでもいいので、困ったらやりやすい方で整理してください。
⑤セクションを入れた後に、ページ設定の用紙サイズ・余白・行数・一行の字数などを設定するのは避ける
記事の最初に言った通り、セクション機能は、ひとつの文章の中で余白設定や用紙サイズでさえ途中で変更できてしまうほど強力な機能です。
しかし何度も言いますが、特に後から「レイアウト」→「ページ設定」の部分を調整するのはおすすめしません。
非常に不便な点があって、セクションを入れたあとは、ページ設定のすべてのタブの「設定対象」の初期値が「このセクション」になってしまいます。
調整の度、毎回ここを「文書全体」として選び直さなければなりません。
「設定対象が文書全体ではありませんがよろしいですか?」といったエラーも出ないので、結構忘れてしまいがちです。
特に行数・文字数を調整する時は何十回もこの設定を開いては、良さそうな設定を模索することになります。
なので先にセクション区切りを入れてしまったあとでレイアウトのページ設定関連を調整すると、ページ全体の余白・行数・文字数の設定をしていたつもりが、気づけばセクション毎に行数や字数や余白を変えて設定してしまっていた……という事故に繋がります。
尚、設定がこんがらがって修正がどうにもできなくなった場合の最終手段は(そして時にその方が修正は早くできます……)、バックアップファイルの段階からやり直してしまうことです。
その場合に備え、セクションを入れる前の原稿データやテンプレートはバックアップを残しましょう。
⑥セクションを削除すると、後ろのセクションのヘッダー/フッター設定で上書きされてしまう
セクションを削除した時に、削除した箇所の後ろのセクションが上書きされるという現象が起こります。
これは、正確には「セクション区切り」を削除した場合に発生します。
たとえば、こういった4つのセクションがあるとします。
それぞれの設定はこうです。
わかりやすいようヘッダーに位置の違う四角記号を置いて、色で分けています。
セクション1先頭ページ(オレンジ)
セクション1偶数ページ(オレンジ)
セクション1奇数ページ(オレンジ)
セクション2-1先頭ページ(ブルー)
セクション2-1偶数ページ(ブルー)
セクション2-1奇数ページ(ブルー)
セクション2-2先頭ページ★前と同じヘッダー/フッター
セクション2-2偶数ページ★前と同じヘッダー/フッター
セクション2-2奇数ページ★前と同じヘッダー/フッター
セクション3先頭ページ(グリーン)
セクション3偶数ページ(グリーン)
セクション3奇数ページ(グリーン)
ここで、セクション1の最後のセクション区切りを削除するとします。
すると、セクション1だった部分のヘッダーの設定(オレンジ)が、後ろのセクションのヘッダー(ブルー)に置き換わってしまいました。
(ページ数が減っているのは、セクション区切りが改ページも兼ねていたからです)
直感的な操作としては、セクション1後ろの区切りをなくしたら、そこから後ろの2-1と2-2セクションもオレンジになりそうなものですが、動きが逆なんです。
前のヘッダー/フッターの設定を優先した状態で削除したかったら、まず削除するセクション区切りの直後のヘッダー/フッターをクリックして、「前と同じヘッダー/フッター」を押します。
するとこんなメッセ―ジが出るので、「はい(Y)」を押します。
すると、先頭のページのヘッダーだけがセクション1と同じものに変わりました。
この作業を、偶数、奇数ページも繰り返します。
セクション2-2はセクション2の設定を引き継ぎますので、こちらは自動でオレンジ色になります。
この状態でセクション1の後ろのセクション区切りを削除すると、セクション1のヘッダー(オレンジ)を残したまま削除できました。
えっと思うかも知れませんが、セクション区切りを削除すると、その直後のセクションのヘッダー/フッター設定が上書きされる仕様なのです。
もう2パターンセクションの削除の動作を見てみます。
同じスタイルのセクションが続いてる部分のセクション(青)削除は簡単です。
赤い枠で囲ったところ、セクション2-1と2-2の境目を削除します。
セクション2-2では「前と同じヘッダー/フッター」設定をONにしています。
するとことちら、2-1セクションに「前と同じヘッダー/フッター」が上書きされてオレンジ色になることもなく、うまく削除できています。
ではセクション2-2の最後、セクション3(緑)との境目のセクションを削除すると…
セクション2-2が緑になってしまいました。
ちなみにセクション2-2、セクション3両方とも、「前と同じヘッダー/フッター」設定はOFFになっています。
つまり元々のセクション3ヘッダーの設定全てそのまま、セクション2-2に上書きされることになります。
なお、「前と同じヘッダー/フッター」が絡んでいると、この確認のポップアップが出ないこともあって、知らぬ間にすっと後ろのセクションのヘッダー/フッター設定が上書きされてしまっている…ということもあります。
ちなみに、セクション1の中身と一緒に区切りを削除した場合は特に問題は起こりません。
このセクション区切りの削除については本当に直感的ではないなあ…と思うのですけども、仕様なので従うほかありません。
ヘッダー/フッターレイアウトが切り替わるところのセクション削除は要注意です。
まとめ セクション機能は便利だけど設定に癖がある
以上がWordの鬼門とも言えるセクションの設定でした。
便利ではあるのですが、しかしこれまでのような長々とした説明が必要な程設定が複雑で(細かくできるとも言えますが)、罠ポイントが多数で、トラブルが絶えない機能です。
しかし扱いがやっかいながら、装飾要素のある原稿データ作成のためには必須の機能です。
せっかく同人誌を作るのですから、そんなセクションの罠を乗り越えてでも、隠しノンブルを駆使した素敵な扉ページや、すっきりとした章の扉ページは是非作ってみたいと思われる方は多いでしょう。
同人誌は夢を形にするものですから、この記事がそのささやかな一助にでもなれば嬉しいです。
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塗り足し設定とヘッダー/フッターを利用した飾り枠のつけ方と、疑似小口染めについてやる予定です。