懐メロと懐古
流行った曲には、印象的なフレーズが多いと思う。
懐メロ特集を見ていた小学生の私は、大人びた歌詞が好きだった。
まる子ちゃんでおなじみのさくらももこさんのエッセイで、ちあきなおみの喝采を歌ったり、女の操を歌っていたというエピソードには自分にも似たような覚えがある。
サビしか知らなくても、口ずさんでいた。
たとえば、「今はあなたしか愛せない」とか。
これでピンと来る人は、私の年代にはたぶん少数だ。
テレサ・テンさんの「時の流れに身をまかせ」の一節である。
「♪だからお願い そばに置いてね~」からのメロディラインが綺麗で昔から好きで。
あるとき、口ずさんでいたら母親がぎょっとした顔で私をみた。
「その歌どこで覚えたの?」と。
今となっては自分で思い出して笑ってしまう。そりゃそうだ、小学生が「今はあなたしか愛せない」なんて、なんの意味も分かっていない。
今でも分かるとは言えない。でも、なぜかそんな大人びた歌詞が好きな子どもだった。
難しいもので、大人には、子どもらしい音楽や本を好んだ方がよく見られる。
その辺のバランス感覚、難しかったなぁ。
大人は子どもを大人扱いしてくれないけれど、お利口な子は好かれる。子どもらしい子は手がかかる、と思われる。
(そう思う大人ってどうなの、と思うけれど)
ふとそんなことを思い出した。