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夜光・蓄光塗料の種類について調べたので備忘録書いてみた

こんにちは、あいすもなかです。

普段はYouTubeで活動しています。動画制作の過程で夜光塗料について調べたので備忘録的なものを書いてみました。
できる限り詳しく調べたつもりですが、間違っている箇所があるかもしれません。ご容赦ください。

2021年7月14日追記:動画版完成しました!ぜひ御覧ください。


夜光塗料とは

夜光21

夜光塗料ってなんぞや!って方のために説明すると完全に暗い所でも光る塗料です。そして夜光塗料は「自発光塗料」と「蓄光塗料」の大きく2種類に分けられます。
現在自発光塗料はほとんど使われていないため、夜光塗料=蓄光塗料の認識でほぼ大丈夫です。


自発光塗料
放射線の力で自分から光る塗料。ラジウム塗料が有名。
厳密に言うと、ラジウムそのものが光る訳ではない。放射線物質(ラジウム等)から出る放射線を蛍光物質にあてて、蛍光物質が光を出す。

蓄光塗料 
光を吸収して、再放出する塗料。自発光塗料と違い光を当てなければ光らない
現在主流の夜光塗料。参考:フォトルミネセンス ←より正確な原理

そして、これらの夜光塗料はさらに細かく分類できちゃいます。
こんな感じです。

夜光31

自発光塗料の種類

表の通りラジウム系・プロメチウム系・トリチウム系の事を指します。安全性の問題から、現在新規製造されているのはトリチウムのみです。

・ラジウム系

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grenadier - 投稿者自身による作品, CC 表示 3.0, https://commons.wikimedia.org/w/index.php?curid=11527417

ラジウムは銀白色の金属で、半減期は1600年です。1600年経つとラジウムの半分がラドンになっていきます。この変化する事をアルファ崩壊って言うんですが、ラジウムはその過程で放射線を出してます。

ラジウム系塗料は硫化亜鉛(+少量の銅)ラジウムを加えて作ります。
ラジウムが光るのではなく、ラジウムから出る放射線(α線)が硫化亜鉛に当たって硫化亜鉛が光ります。図にするとこんな感じです。

夜光41

…はい。昭和の教科書に載ってそうな図ですが許してください。ラジウムは常に放射線を出しているので、硫化亜鉛も常に光っています。それが便利なので1960年頃までは主流の夜光塗料でした。日本でも戦前から時計や戦闘機の計器に使われていました。ですが数々の問題点が見つかり今では使われていません。

ラジウムガールズ」という言葉を聞いたことがあるかもしれません。
1920年代のアメリカでは手作業で時計に夜光塗料(ラジウム塗料)を塗っていました。その時に女工達はラジウム塗料がついた筆を唇や舌で整えていました。これによってラジウムを体内に取り込んでしまい死者も出てしまいました。これ以前はラジウムは健康によいなんてされていましたが、危険性が明らかになりました。

ラディトール

ここから引用。トリミングしています)
ラジウム入りの水が健康に良いってんで売られてたみたいです。

そしてこの事件後すぐにラジウム塗料が使われなくなった…ということでもないんです。当時の蓄光塗料は光が弱すぎてあまり使いものにならなかったので、ほとんどの場合ラジウムを使い続けていました。ロレックスも1960年代までラジウムを使ったモデルを発売していました。

ちなみにラジウム塗料は数十年で光らなくなります。ラジウムが出す放射線が硫化亜鉛を変質(劣化)させてしまうからです。なので今あるラジウム時計で光るものはかなり少ないです。光らなくなっても放射線は出続けています…

後述するプロメチウムやトリチウムが登場したことで、ラジウムは1967年に時計への使用が規制されました。規制したのはIAEA(国際原子力機関)です。

・プロメチウム系

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引用:https://commons.wikimedia.org/wiki/File:Promethium.jpg

プロメチウムも銀白色の金属で、夜光塗料に使われていたのはプロメチウム147です。

1954年の第五福竜丸事件がきっかけで人々の放射線に対する意識が変化しました。そこで登場したのがプロメチウム系塗料です。プロメチウム系塗料はラジウム系より明るく、安価、そして安全ということであっという間に普及しました。

プロメチウムも放射線(β線)を出しますが、ラジウムよりはるかに弱く時計のガラス1枚で遮断できるようです。人体への影響もかなり少なくなっています。

開発したのは日本の根本特殊化学株式会社。1960年に開発したそうです。
プロメチウムの半減期は2.6年なので数年で光らなくなるみたいです。

1967年には白色のタイプも開発されました。

1960年代〜1990年代にかけて主に日本で使われていました。同時期の海外ではトリチウムが使われていたようです。

ラジウム系と同様、現在では使われていません。

・トリチウム系

トリチウムは三重水素とも呼ばれ気体です。β線を出しながら崩壊し、ヘリウム3になっていきます。半減期は約12.32年です。

トリチウムを使用した時計には「T<25」という表記が入っていることが多いです。(2005年に法改正されるまでは表示が義務、今でも表示しているメーカー多数)Tはトリチウム、<25は放射能量が25マイクロキュリー以下であることを示しています。

トリチウム塗料も放射線を出す関係で現在は廃止されています。ただしガラス管タイプは現在でも使用され続けています。

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shampoorobot - 投稿者所有品, CC 表示-継承 3.0, https://ja.wikipedia.org/w/index.php?curid=2688105による

ガラス管の内側に蛍光塗料を塗り、中にトリチウム(β線を出す)を封入することでガラス管自体が光っているように見えます。また図にしてみました。

夜光51

トリチウム時計は常に光り、前述の塗料より安全なことから軍用時計に多く使われています。ルミノックス(アメリカの軍用時計メーカー)では約25年光るトリチウム時計を販売したりしています。

ちなみにAmazonで買えます。

蓄光塗料の種類

夜光31のコピー

硫化亜鉛系・アルミン酸ストロンチウム系(酸化物系)が主流です。硫化カルシウム系やケイ酸塩系などもありますが、ここでは省略します。

・硫化亜鉛系

1990年代まで主流だった蓄光塗料です。ラジウム系塗料でも蛍光物質として使われていましたが単体でも蓄光塗料として使えます。ただかなり暗い上に耐久性に欠けるため腕時計に採用されることはほぼありませんでした。
安価なため現在でも流通していますが、流通量はかなり少ないです。

・アルミン酸ストロンチウム系

現在主流の夜光塗料です。放射性物質を一切含みません。身の回りにある夜光塗料の99%はこれだと思います。
そして、アルミン酸ストロンチウム系は大きく2つに分けられます。

・N夜光・ルミノーバ

1993年に根本特殊化学株式会社(プロメチウム系塗料の時と同じ会社です)によって開発されました。世界で初めてのアルミン酸ストロンチウム系塗料です。硫化亜鉛系と比べて10倍の明るさ・10倍の発光時間に加えて耐光性もあります。まさに「夢の塗料」です。

「ルミノバ」と呼ばれることが多く、その圧倒的な性能から腕時計用の蓄光塗料としてのシェアはほぼ100%です。(夜光塗料としての世界シェアも80%以上)

あなたが持っている時計が光を当てると暗いところで光り、ロレックスでないなら99.99%ルミノバです。

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左が硫化亜鉛系・右がアルミン酸ストロンチウム系

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暗所での様子

より明るい「スーパールミノバ」を採用している時計も多数あります。


クロマライト

ロレックスが2008年に発表した蓄光塗料です。特徴は青色の光で、ロレックスの時計にのみ使用されています。ルミノバの2倍の時間光が持続するとのこと。

「原料はアルミニウム、ストロンチウム、ジスプロシウム、ユウロピウムを含む微細な 金属酸化物のパウダー」(ロレックス公式サイトより)

「ミルガウス」や「ディープシー」などのモデルに採用されています。


まとめ

・ラジウム系の塗料はすでに光らないものが多い上にもう製造されていない
・自発光塗料(放射性物質使用)で今も使われているのはトリチウムのみ
・トリチウムは光を当てなくても勝手に光る
・現在主流の夜光塗料は「N夜光・ルミノーバ」
・根本特殊化学すごい

参考にしたサイト

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