廃棄プラスチックを救おう!(プラスチックの回収がカギなのだが、実はここが強敵で・・・)
世界各国におけるプラスチック回収の現状と事例
プラスチックのリサイクルは、環境保護と資源の有効利用において重要な役割を果たしています。しかし、国や地域によってプラスチックの回収方法やリサイクルの実施状況には大きな違いがあります。以下では、各国のプラスチック回収に関する事例、規制、努力、成功事例、課題、そして改善策について詳しく紹介します。
1.世界各国におけるプラスチック回収の事例、規制、努力
◆日本
• 事例:
• 日本は自治体が定める細かい分別ルールに基づき、家庭からのプラスチック廃棄物を収集しています。
• 家庭レベルでの高度な廃棄物分別システムを持つ。
• 2019年にPETボトルの84%のリサイクル率を達成。
• 規制:
• 容器包装リサイクル法により、製造者や輸入業者にリサイクルの義務を課しています。
• 容器包装リサイクル法により、企業と消費者がリサイクル責任を共有することを義務付け。
• 努力:リサイクル教育の推進や専用の回収日設定等、住民の協力を得るための取り組みが行われています。
◆ドイツ
• 事例:
• ドイツは「グリーンドットシステム」を採用し、製品にリサイクルマークを付け、消費者に分別を促しています。
• 2003年にプラスチックボトルのデポジット返金システムを導入。
• 2020年にプラスチック包装材の56.1%のリサイクル率を達成。
• 規制:
• 「グリーンドットシステム」により、製造業者は自社の包装材のリサイクルに対して支払いを義務付けられている。
• 包装廃棄物指令に基づき、製造業者にリサイクルの責任を負わせています。
• 努力:高度なリサイクルインフラと消費者教育により、高いリサイクル率を達成しています。
◆アメリカ
• 事例:州ごとに異なるリサイクルプログラムが存在し、一部の州ではリサイクルデポジット制度を導入しています。
• 規制:州レベルでのリサイクル法規が中心であり、連邦政府レベルでの統一的な規制はありません。
• 努力:企業や自治体による回収プログラムが進められている一方、リサイクル率は州によって大きく異なります。
◆韓国
• 事例:
• 韓国は「資源循環基本法」に基づき、家庭や企業からの廃棄物の分別収集を義務付けています。
• 1995年に従量制廃棄物手数料システムを導入。
• 様々な包装材に対するデポジット返金システムを持つ。
• 2019年にプラスチック廃棄物の62%のリサイクル率を達成。
• 規制:特定の廃棄物に対するリサイクル義務があり、製品ごとにリサイクルマークを付与しています。
• 努力:分別収集の徹底と、高度なリサイクル技術の導入により、リサイクル率を向上させています。
◆スウェーデン
• 事例:
• 全国規模のリサイクルプログラムが存在し、住民は細かく分別された廃棄物を指定された場所に持ち込むことが奨励されています。
• PETボトルとアルミ缶のデポジット返金システムを導入。
• 2020年にPETボトルの84%のリサイクル率を達成。
• 規制:
• EUの包装廃棄物指令に準拠しており、リサイクル率の高い国の一つです。
• 包装廃棄物に対する「生産者責任」政策を実施。
• 努力:持続可能な社会を目指し、住民教育とリサイクルインフラの整備が進められています。
2.分別回収と樹脂の種類ごとの再分別が進んでいる国・地域
◆オランダ
• 事例:
• オランダは高度な分別収集システムを導入しており、各家庭には複数の分別用容器が配布されています。
• 1993年に大型PETボトルのデポジット返金システムを導入し、2021年に小型ボトルにも拡大。
• 機械的リサイクルと化学的リサイクル技術を組み合わせて使用。
• 2020年にプラスチック包装材の57%のリサイクル率を達成。
• 成功の鍵:高い消費者意識と分別収集の徹底、リサイクル施設での高度な技術導入により、高いリサイクル率を実現しています。
• 革新的技術への投資と循環経済原則。
• 磁気密度分離等の先進的な選別技術を導入。
• プラスチック製品の選別性向上のためのリサイクル設計に注力。
◆ドイツ
• 成功の鍵:先進的な選別技術と強力な規制枠組み。
• 異なるプラスチックタイプの自動選別に近赤外線(NIR)技術を使用。
• 2019年に包装材法を施行し、高いリサイクル目標を設定。
◆ノルウェー
• 事例:ノルウェーは分別収集システムを全国的に整備し、リサイクル率の向上に成功しています。
• 成功の鍵:政府の強力な支援と企業の積極的な参画、そして住民への徹底した教育が効果を発揮しています。
◆日本(特定地域)
• 事例:日本の一部自治体では、家庭からのプラスチック廃棄物を種類ごとに細かく分別収集しています。
• 成功の鍵:自治体による細かい分別ルールの設定と、住民への教育・啓発活動が功を奏しています。
• 発生源での厳格な分別と先進的なリサイクル技術。
• 消費者が収集前にプラスチックを複数のカテゴリーに分別。
• 先進的な機械的リサイクルと化学的リサイクル技術を使用。
3.回収が進んでいない、または分別後のリサイクルが機能していない国・地域
◆インド
• 課題:
• インフラの整備不足と住民のリサイクル意識の低さが問題となっています。
• 環境へのプラスチック廃棄物の漏出レベルが高い。
• インフォーマルセクターが廃棄物収集で重要な役割を果たすが、適切なリソースが不足。
• 事例:多くのプラスチック廃棄物が適切に回収・処理されず、環境汚染を引き起こしています。
◆ブラジル
• 課題:分別収集のシステムが整っておらず、多くの廃棄物が埋立地に送られています。
• 事例:リサイクル率が低く、回収後の処理が不十分であることが多いです。
◆ナイジェリア
• 課題:
• リサイクルインフラの欠如と経済的制約が障害となっています。
• 正式な廃棄物収集システムが限られている。
• 適切なリサイクル施設や技術の不足。
• 廃棄物管理に関する公衆の意識と教育が不十分。
• 事例:多くのプラスチック廃棄物が不適切に処理され、環境に重大な影響を与えています。
◆インドネシア
• 課題:
• 特に農村部で廃棄物管理インフラが不十分。
• プラスチック廃棄物の不適切な管理レベルが高く、海洋汚染につながっている。
• 公衆の意識不足と不十分な政府規制。
4.改善策と成功事例
リサイクル推進をするために以下の戦略で成功を収めている地域があります。課題に直面している国々は、参考になることでしょう。また、推進している地域も、より高いレベルを目指すために、このような戦略は検討の価値があると思っています。
a) 拡大生産者責任(EPR)制度の導入
• 成功事例:韓国は2003年にEPRを導入し、リサイクル率が大幅に向上。
b) 廃棄物管理インフラへの投資
• 成功事例:シンガポールの統合廃棄物管理システム(最先端の焼却プラントとリサイクル施設を含む)。
c) デポジット返金システムの導入
• 成功事例:ノルウェーのプラスチックボトルのデポジット返金システムは97%の回収率を達成。
d) 公衆教育と意識向上の改善
• 成功事例:日本の包括的な環境教育プログラムにより、廃棄物分別への高い公衆参加が実現。
e) インフォーマルな廃棄物収集者の支援
• 成功事例:ブラジルの公式廃棄物管理システムへのウェイストピッカーの包含により、リサイクル率と生活水準が向上。
f) 革新的な技術の導入
• 成功事例:オランダの磁気密度分離等の先進的な選別技術の使用により、プラスチックリサイクルの効率が大幅に向上。
g) リサイクルプラスチックの市場開発
• 成功事例:EUの循環プラスチック同盟。2025年までにEUのリサイクルプラスチック市場を1000万トンに拡大することを目指している。
h) リサイクル法を整備
• 成功事例:台湾で、政府の強力なリーダーシップと市民教育を推進し、法整備をすることで、リサイクル率が大幅に向上し、廃棄物の減少と資源の有効利用を実現。
i) リサイクルインフラの整備と市民へのインセンティブ提供
• 成功事例:スコットランドで、市民へのインセンティブを与えると同時にインフラを整備することで、リサイクル率が向上し、廃棄物の最終処分量が減少。
j) 回収とリサイクルを推進
• 成功事例:インドネシアで、NGOや企業との協力により、地域レベルでのリサイクル活動が活発化し、環境汚染の抑制に成功。
これらの戦略を地域の状況に合わせて組み合わせて採用することで、各国はプラスチックの回収とリサイクル率を改善できると思います。成功したプラスチック回収には、政策措置、技術投資、公衆の参加、様々な利害関係者間の協力を含む包括的なアプローチが必要であることに注意することが重要です。
5.まとめ
プラスチックのリサイクル(回収)は、各国の取り組みや規制、技術の進展により大きく異なります。成功している国々は、強力な規制、教育活動、技術革新を通じて高いリサイクル率を達成しています。
一方で、課題を抱える国々では、インフラの整備や意識向上が必要です。成功事例を参考にしながら、グローバルな視点でプラスチックリサイクルの改善に取り組むことが求められると思います。