千葉市科学館の勉強会にお邪魔してきました!
先日、千葉市中央区にある千葉市科学館にお邪魔し、勉強会に参加してきました。この勉強会は、科学館で運営のお手伝いや展示の案内などをしてくださっている市民ボランティアの方々に向けたもので、今回は私たちの研究室に所属する修士2年生の千葉めぐみさんが、昨年9月から常設展示していただいているIceCube実験について特別講義をするというもの。千葉さんも、市民ボランティアの一員として1年以上前から活動していて、他のボランティアさんからのニュートリノ研究についてどう案内したらよいかわからないという声を聞き、特別講義をするに至ったそう。今回は2回目だったそうです。
勉強会には、十数名の熱心なボランティアの方が集まりました。
千葉さんは、科学館の10階にあるIceCube実験展示の順路に沿って、展示の見どころとボランティアの方が難しいと思われる実験の内容について説明していきました。
まずは、ニュートリノとはなにか、素粒子とは何かから始まりました。ニュートリノは電荷をもたず、他の物質と相互作用することがほとんどないため、その方向を曲げられることもなく、宇宙の光も届かない遠く離れたところからまっすぐ地球に飛んできます。その不思議な性質を利用して、IceCubeは実験を行っているのですが、それが何かを説明するのはなかなか難しいところです。
ボランティアの方たちは、とても勉強熱心な方が多く、ニュートリノ研究についてはすでによく知ってくださっている方たちも多くいたようです。岐阜で行われている別のニュートリノ実験、カミオカンデ実験とIceCubeの違いについての質問が多く出ました。カミオカンデ実験はタンク内の水を使って、IceCubeは南極の氷で、と環境は違っていますが、どちらも水分の中でまれに反応するニュートリノの性質を使っての実験なので、原理は一緒です。「南極まで行かなくても大きなタンクを作ればいいんじゃないの?」という質問も出ましたが、それぞれの実験で研究している範囲が違うこと、銀河外から飛んでくる高いエネルギーを持つニュートリノを研究をしているIceCube実験では、検出にとても大きな網を張る必要があり、人工的にタンクを作って水をはるには限度があることなどを説明すると、実験への興味を深めてくださったようでその後もいくつもの質問が続きました。
ところで、IceCubeの展示エリアには、自然界に存在する放射線や二次宇宙線などを可視観測できる「霧箱」があります。この箱で、空気中に今まさに飛んできている実際の放射線が見えるのですが、ボランティアの方によると、科学館を訪れる小学生には今飛んできている放射線が実際に見えているという概念がわかりにくく、ビデオ映像だと思って見ている子もいるそうです。また南極点に穴を掘って検出器を埋めることについて質問を受けたりもするそう。限られた展示エリアに表示された説明だけではまったく追いつかないところを、ボランティアの方たちがこうやって実験について理解を深め、足りないところを埋めて見学者の方の疑問に答えてくださるのは大変ありがたいです。千葉さんも、講義の中で展示エリアの壁の画像など、説明されないとわからないディテールや関連する裏話まで一つ一つ丁寧に案内してくれていました。展示を訪れた際に、ボランティアの人からそういった話が聞けたら得した気分ですよね。
また、せっかくの展示が活かせていない、という問題点についても、ボランティアの方の意見を聞くことができました。例えば、IceCube展示の目玉ともいえるIceCubeシミュレーターのコーナーです。三角形になっている展示コーナーの内部が暗くなっていて、その中で南極点の氷河下でIceCubeがニュートリノを捕らえる様子をイメージしてデザインされたライティングが見れるというもの。暗いがゆえにとてもきれいな展示なのですが、入り口がわかりにくくて見学者の方にスルーされてしまったり、暗いので怖がって入らないお子さんの姿も見られるとか。本当に素敵な展示なので、この状況はとても残念です。暗さは展示の特徴上変えるのは難しいですが、どうにか改良できないか、科学館の担当の方と相談していきたいと思います。
ボランティアの方たちにIceCubeについて学んでもらう勉強会でしたが、展示を見てくれた人が、どういったところに興味を持ってくれるのか、そしてそのあとにどのような疑問を持つのか、ニュートリノ研究のどのあたりの説明がわかりにくいのか等、現場を見守ってくれているボランティアの方たちしかわからない話を聞けるとても貴重な機会となり、広報担当としてとても勉強になりました。講義をしてくれた千葉さん、そして参加されたボランティアの方々、ありがとうございました。
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