KAC11th DDR の失格状況について
(こちらの文章は、先に英語版を作成し、日本語で文面を微調整しながら作成した。中国語版はこちら。)
[0. 前言]
KONAMI Arcade Championshipの議論はまだまだ続いています。海外プレイヤーにとって、この第11回目の公式大会に問題なく参加することが、ときとともに難しくなった。プレイヤーの腕前が全体的に上がっていることだけではなく、公式が海外プレイヤーに対してますます酷いプレイ環境をさせていていくことが一番大きいだ。直近の公式eスポート大会であるBPLに、DDR部門に英語解説つけたり司会が英語で行われたり、IIDX部門に日本以外の選手も参加させていたことにもかかわらず、今回の公式大会では、海外プレイヤーがプレイ体験を損するか、不公平なルールに従うかの二択に陥るまでになった。
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目次
[1. 最近のことを振り返って]
[2. 複雑なゲーム環境現状:ゲームプレイ機能が届かない有料コンテンツに]
[3. 一連の変更により失格になる経緯]
[4. 海外におけるゲームコンテンツの差別化]
[5. これからの話]
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[1. 最近のことを振り返って]
今年のKACを発表して以降、参加者が日本語を通じないと決勝戦に参加できないことが要求されていた。8月29日の公式ツイート告知により、こちらの要求が求めていないことがわかって、かつ公式ページに該当の文面が全てなくなった。が、他に外国プレイヤーを失格させる手段を使用する疑惑がまだまだ存在していた。残念ながらその恐れが本当に発生してしまった。
11月9日(アジア時間)、元KACチャンピオンであるCHRS4LFE氏が、今回のKACのDDRオンライン予選にトップスコアを獲得していることにもかかわらず、彼と他3人の北米プレイヤーが、失格扱いと連絡されていることをツイートした。メールのやり取りも添付していた。書類内容によると、「エントリーの規約に則り失格とさせていただき、決勝ラウンドへの出場は見送らせていただきます」とのことだ。
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[2. 複雑なゲーム環境現状:ゲームプレイ機能が届かない有料コンテンツに]
2005年以降、KONAMIが「e-amusement pass」というICカードを販売し、プレイヤーのデータをe-amusementシステムよりアクセスすることになった。該当のデータは、KONAMI IDというアカウントシステムに登録することができる。プレイヤーがKONAMI IDを登録する際に、地域の選択が必要で、一度選択したら地域を変更することができない。なお、一部のゲームコンテンツは、地域を日本に設定しないとアクセスできない。よって、実際に在住している地域に関わらず、KONAMI IDの地域を日本に設定するプレイヤーがほとんどだった。
PASELIは、KONAMIが2010年より導入した電子マネーの一つで、KONAMIのゲームコンテンツを購入するのに必要な電子マネーである。1PASELIは1日本円と相当する。PASELIは、KONAMI IDを経由して、一部のクレジットカードを使いチャージすることができる。日本では、KONAMIのゲームを支払うだけではなく、交通系ICカード(SUICAやPASMOなど)に並んで、ゲームセンターでの決済手段の一つである。日本以外になると、地域の法律の制限により、ゲーム機でPASELIの使用が一切ない。
また、たとえKONAMI IDの地域設定が日本にしたとしても、海外のクレジットカードが全て対応されているわけではなく、PASELIをチャージすることを苦戦しているプレイヤーも少なくはない。一番使用されている、e-amusementのベーシックコースの月額登録には、PASELIが必要だ。そのベーシックコースに登録していないと、一部のゲーム機能(ハンドルネームの変更、ライバル設定、ゲーム画面カスタマイズ、スコア確認など)にはアクセスできない。DDRの場合になると、ゲーム実力向上に必要なゲーム機能(FAST/SLOW表示、ノーツデザイン変更、コンボ表示レイヤー変更など)も、ゲームバージョンによってベーシックコース登録しないとアクセスできないことがある。
日本の場合、PASELIの導入とともに、1クレジットの値段は100玉個数の倍数にすることが必要なく、ゲームモードごとに異なる値段設定ができるわけだ。以降、100円玉が相当するゲームモードが「LIGHTモード」という位置になり、アクセスできるゲームコンテンツが外されていることがある。DDRの場合、新規データでPASELI使用しないと、LIGHTモードにしかプレイできない。合わせて、ハイスピード設定が0.5単位しか変更できない(プレミアムだと0.25単位に変更できる)、ゲーム譜面が一番下のレイヤーになって見づらい(ベーシックコース購入で変更可能)、EXTRAステージに進出不可で隠し曲が遊べられない(執筆時点で20曲以上が隠されている。前のゲームバージョンのA20+までは数年渡って隠し曲のまま)など、PASELI使用するプレイヤーと比べてかなり差別化されている。
海外の場合、ゲーム機でPASELI専用だったゲームモードは、異なるコイン設定により、一応ゲーム機で隠しコンテンツも遊べることができるが、PASELIが必要のベーシックコースは、PASELIが必要だ。その他、PC版のゲーム(BeatmaniaIIDX INIFINITAS, DDR Grand Prix, Sound Voltexクラウド版)など、e-amusementのクラウドコンテンツの購入も、PASELIが必要だ。該当のコンテンツは、KONAMI IDに依存している。近年では、家庭用コンテンツとアーケードコンテンツを連動することが増えてきた。DDRの場合、DDR Grand Prix(家庭用バージョン)の楽曲パックの購入、そしてゲームの起動(月額登録必要)により、同じゲームデータを使ってアーケードでDDR遊ぶと、特典楽曲が先行遊べる。経験上、該当の特典楽曲は、およそ1年経ってから無条件解禁になることが予想されている。
それに加えて、2023年のはじめ頃以降、e-amusement passデータをKONAMI IDから切り離す機能ができなくなり、現時点では正常の手順でe-amusement passのデータを異なるKONAMI IDに反映することができない。
少し長くなったので箇条書きすると、
・e-amusement passは、ゲームデータを記録するICカード。
・PASELIは、日本に流通している。一部のゲームコンテンツはPASELIを使わないとアクセスできない。
・KONAMI IDは、e-amusement passを登録、及びアカウント内のPASELI購入コンテンツを管理できる。長い間プレイしているプレイヤーは、KONAMI IDの地域を日本に設定していることが多い。KONAMI IDからe-amusement passのデータを切り離すことはできない。
・KONAMI IDの地域を日本以外に設定すると、PASELIの購入ができない。
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[3. 一連の変更により失格になる経緯]
【以降の説明に向けて、「KONAMI IDの地域設定が日本」としたアカウントを「日本KONAMI ID」と略し、「KONAMI IDの地域設定が実際の住まい地域」としたアカウントを「本國KONAMI ID」と略す。】
第5回のKACまで、KONAMI IDの地域設定に関わるルールは存在していなかった。第6回KAC以降、「KONAMI IDの地域で登録されている地域と実際に居住する地域が異なる場合、、KONAMI IDの利用規約に反するため、決勝に出場することができない」、及び「実際に居住する地域が異なる場合は、居住する地域情報で登録したKONAMI IDを使用し、エントリーしてください」との文面が追加されていた。
それまでに多くのプレイヤーが、前述の理由でKONAMI IDの地域を日本と設定していた。変更することができないため、新しく本國KONAMI IDを作った。それからe-amusement passのデータを一旦前の日本KONAMI IDから切り離し、新規制作した本國KONAMI IDに登録し、KACにエントリーしました。海外のプレイヤーは、こちらの方法を使い、第10回KACまで問題なく参加していた。
しかし、2023年初にKONAMI IDからe-amusement passを切り離す機能の廃止とともに、今回の第11回KACの参加に、こちらの方法は使えなくなった。多くのプレイヤーは、ゲームデータが日本KONAMI IDに閉じ込められ、本國KONAMI IDに映る手段がない。今回の事件に関わる一人のプレイヤーのNAT8氏が、まさにこの状況により失格とされた。
となると、失格にならないよう、
・本國KONAMI IDの作成
・新規e-amusementデータを作成し、本國KONAMI IDに登録
・KACにエントリー
にしないといけない。だとすると、KAC限定の解禁コンテンツがあり、無条件解禁には更に数ヶ月待たないといけない。ここでジレンマが発生。一つは、メインデータで登録せず、上記の方法でKACにエントリーするが、メインデータではKAC限定のコンテンツが一般解禁までアクセスできない。一つは、上記の方法をKACエントリーしながら、メインデータをKAC限定コンテンツの解禁のみプレイし、試合の公平性に影響しないよう他の課題曲を一切触れないようにする。後者は、ゲームコンテンツを解禁することができるが、KACの失格条件にも引っかかり、失格されるリスクがある。こちらは、まさにCHRS4LFE氏の記載通り、公式が氏ともう2人の失格を下さった原因となった。
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[4. 海外におけるゲームコンテンツの差別化]
通常の手段ですべてのゲームコンテンツを手に入れることがますます難しくなってきた。場合によって完全にアクセス不可の場合もある。直近のイベントで例えると、BPLS3 Triple Tribeイベントでは、DDR20周年モデル(金筐体)、SDVX Valkyrieモデル、BeatmaniaIIDX Lightningモデルの3筐体を使用した解禁イベントだが、1つの筐体を使用しない限り、解禁効率が10%に減少される。該当筐体が設置されない地域では、該当のコンテンツを全解禁するには、10倍のお金が必要となってしまう。
現時点で、日本以外のアジア地域には、金筐体が一切設置されていない。もちろん、金筐体限定のゴールデンリーグ対象曲も、金筐体で遊んだことない限り、一切遊べられない状況になっている。一時期全筐体に開放したアニバーサリーリーグがあって、該当の隠し曲が遊べたんだけど、次のリーグはまた金筐体限定に戻った。
海外においで他のBEMANI機種の話だが、ここ数年間のゲームモード追加により少しずつ追いついたコンテンツアクセス状況だが、現時点で一部の機種はまだ日本に比べてかなり劣っているゲーム環境になっている。
ノスタルジアでは、海外版だと一部の地域においてスタンダードのみ存在し、すぐにExpertとReal譜面を遊べるフォルテモードにはアクセスできない。よって、譜面の解禁により時間かかってしまう。{11月13日更新:韓国にはforteモードが存在。台湾、香港には存在せず。地域によって遊べるモードが異なる。}
BeatmaniaIIDXでは、様々なコンテンツがプレミアムスタートモードに限らえて、海外にアクセスできるスタンダードモードでは、選曲制限(LEGGENDARIA譜面はパス使用しない限り選択不可、特にアリーナモード)や一部の解禁ボーナスがもらえないなど、ゲームコンテンツがPASELIモードより劣っていることがある。
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[5. これからの話]
PASELIを日々使える日本のプレイヤーの方は、PASELIが使えない海外のプレイ環境を共感することが難しいだろう。日本でしか使えないガラケー専用サイトの時代からパソコン時代に移り、ますます海外のプレイ環境が日本に追いついてきた今になるのは、プレイヤーにとってはかなり苦労していた歴史だった。簡単に「(大会の)ルールはルールだから」で完結するのももちろん一理あるが、上記の経緯により、本来ルールを守るつもりだったプレイヤーも、改めてプレイ環境やコンテンツの劣化に陥るジレンマになったわけだ。他のプレイヤーへの影響を最小限とし、公平性をできるだけ保って、最小限のリスクを抱えてゲームコンテンツをコンプしながら参加することは、長い間プレイしていたプレイヤーの立場から考えられなくもない。
今回KAC運営公式の対応により、海外のプレイ環境の不完備の現状はもちろん続いていき、そもそもKACの本質も問われるのであろう。
ゲーム機でゲームコンテンツの競技ではなく、ゲームコンテンツと関係ないルールとの戦いになっている。結果的にルールに引っかかり、今回のように失格になったのは、失格とされたプレイヤーの本心ではないのであろう。
もちろんこの結果に対し、異なる意見が見られる。公式大会だから、公式が記載したルールを従いながら参加するのが基本で、従えないのであれば不参加でいい、との意見はある。公式のルールが厳しすぎるのであれば、自主大会を立ち上げて、適切なルールを設ければいい、との意見もある。今回の公式対応に対して失望し、もうゲームから離れることを決めたプレイヤーもいる。立場はそれぞれだが、もう現時点で今回のイベントに対して多くの方が納得いける結果に変更することが難しいのであろう。
問題は、これからどうすべきだ。今後のイベントに向けて、今のルールを一度見直すべきか。海外プレイヤーにとって、公式大会はルール守りながら参加できるものか。そもそもこの大会自体は、プレイヤーの競技場っていうより、もうアーケードエキスポにお客さんを寄せるためのショーケースに過ぎないイベント舞台なのか。
なににせよ、変更が必要だと思われる。今回の結果に納得いけるかどうかにかかわらず、公式に意見を出してください。たとえ今回の失格決定を応援しても、がっかりになっても、今すぐ失格決定を見直せって話でも、直ちに公式に送り込んでください。
このコミュニティーが大きく、強く存在していることを、より多くの人に知られるのが大事だと思う。なにかが変わるまでまだまだ先かもしれないが、音ゲープレイヤーとしてできることといえば、意見を集結して、音ゲーへの愛を自分なりに周りへ伝えることだ。
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作者について
Iceが2023年11月10日より英語版を作成、11月12日に日本語版を配布。現在もBEMANIゲーム全般を遊んでいる。過去にKACA2011のギタフリ部門を優勝、KAC2012のIIDXファイナリストの経歴を持つ。
この文章の作成には、下記の方から貴重な資料と意見をいただきました。ranatalus (@ranatalus)
Rafraud (@rafraud)