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2005年3月制限環境について


はじめに


私は2005年3月制限は当時公認大会や遊戯王デュエルCGIでプレイしていて、選考会予選の最中に公認大会に途中で出られなくなってしまったため、最後まで走り切ることはできませんでしたが、当時それなりに考えていたのではないかと思います。

2005年3月制限の環境デッキといえば変異カオス、ガジェットで、2005年3月制限で行われた日本代表選考会においても、変異カオスの使用者が3名、ガジェットの使用者が1名日本代表に選出されています。
選考会集計ヘッドライン: 遊戯王フロンティア (seesaa.net)

すべてのデッキが公開されているわけではありませんが、公開されているデッキを見る限り、全体の使用率でも変異カオスの方が多くなっているものと推測します。
ただこれは変異カオスの方がガジェットと比較してより強力なデッキであったというよりも、①ガジェットが当時としては高価なカードで金銭的なハードルが高かったこと、②ガジェットの研究が広く行われていなかったこと、③変異カオスが公認大会で勝ちやすいデッキであったことが要因として考えられます。
変異カオスが公認大会で勝ちやすいデッキという点について補足すると、2005年3月制限は強欲な壺、天使の施し、いたずら好きな双子悪魔のいわゆる三種の神器とそれらを使い回す聖なる魔術師のアドバンテージによって一方的なゲームになり、短期戦(2〜3ターン程度で実質的な勝敗が決定)になるゲームもありますが、両者の引いているカードの強さに極端に差がない限り、サウザンド・アイズ・サクリファイスによるロックによって長期戦に持ち込みやすいデッキとなっています。長期戦になればなるほど、強力なカードを両者が引き込みやすくなっていくため、プレイとデッキ構築の差が勝敗に反映されやすくなります。変異カオスは言葉を選ばずに言えば自分よりも弱いプレイヤーに負けにくいデッキで、世界大会を目指すプレイヤーにとっては公認大会において勝ち数を積み上げるのに適したデッキだと言えます。
そして当時はCSのような非公認の大型イベントはほとんど開催されていなかったため、選考会の予選である公認大会で使ってきたデッキと同じようなデッキを選考会に持ち込むプレイヤーが多かったのではないかと思います。実際、私は2004年3月制限の選考会では予選の公認大会で使ったデッキとほとんど同じデッキを選考会に持ち込みました。

2005年3月制限の選考会において変異カオスが多かったのは、上記のような要因によるもので、使用者数はデッキの強さを反映していないと考えています。
私は変異カオスとガジェットの相性関係はややガジェットが有利であると考えています。
度々アドバンテージという言葉を使用しますが、断りのない限り、フィールドと手札の枚数を合計数の差のことだと理解ください。

変異カオスについて


スケープ・ゴートは変異カオスが登場する以前からも相手モンスターの直接攻撃や強制転移に対する防御カードとして採用されていました。2004年3月制限の頃はパワーカードの多さから、デッキの自由枠が少なく、スケープ・ゴートが入ることはあっても突然変異(+月読命)が入ることはありませんでした。

当時公認大会や選考会で使用したカオスの再現
今思えば公認大会レベルでは第六感のようなパワーは高いが不安定なカードは不必要であり、安定的なカードを投入するべきであった。

2004年9月制限になると、混沌帝龍-終焉の使者-等のパワーカードやサイクロンの規制によって自由枠が増えたことで、突然変異(+月読命)を入れる余地が生まれ、スケープ・ゴートが防御に加えて、突然変異と組み合わせることによって切り替えしとしても使われるようになりました。

2004年9月の制限改定によって自由枠が増加した。


スケープ・ゴートは相手モンスターの直接攻撃に対する防御カードとしてのみ使用した場合、トークンは相手のモンスターによる戦闘破壊などのカードを消費しない方法で処理されてしまえば、いずれ1枚分のアドバンテージを失ってしまうことになりますが、突然変異を組み合わせることによって、相手のモンスターを除去しつつ、サウザンド・アイズ・サクリファイスが盤面に残るため、スケープ・ゴートの1枚分のアドバンテージを取り返すことが出来ます。

例えば、首領ザルーグの直接攻撃に対してスケープ・ゴートを使用し、トークン1体戦闘破壊され、突然変異からのサウザンド・アイズ・サクリファイスで首領ザルーグを装備した場合

自分:スケープ・ゴート、突然変異の2枚を消費し、サウザンド・アイズ・サクリファイスとトークン2体が残る。
対戦相手:首領ザルーグ1枚を消費する。

サウザンド・アイズ・サクリファイスが例えば月読命によって無償で処理されてしまえば、1枚分のアドバンテージをつけられてしまうことになりますが、サウザンド・アイズ・サクリファイスをカードの消費することなく処理できるカードはカオス・ソルジャー-開闢の使者-、同族感染ウイルス(+キラー・スネーク)、月読命など限られており、1枚でもカードを消費して処理した場合、両者にアドバンテージは生じないため、スケープ・ゴート+突然変異を発動した側は残ったトークン2体によるライフカットとトークンを処理する仕掛けを要求することで有利な状況を作り出します。また、サウザンド・アイズ・サクリファイスは放置されれば月読命と組み合わせることによって、アドバンテージを稼ぐことが出来ます。

2005年3月の制限改定でも禁止カードの入れ替わりこそあるものの、変異カオスに大きな変化はありませんでした。
変異カオスに大きな変化をもたらしたのは、2005年5月に発売されたサイバネティック・レボリューションで、このパックに収録されたサイバー・ドラゴン、サイバー・ツイン・ドラゴン、サイバー・エンド・ドラゴンの3枚が環境に大きな変化をもたらしました。

従来の変異カオスは大嵐、カオスソルジャー開闢の使者、突然変異、同族感染ウイルスの4枚を使った仕掛けにおいて、カオスソルジャー開闢の使者の除外効果を使った後に突然変異から特殊召喚するレベル8の融合モンスターの最高打点が攻撃力3500のメテオ・ブラック・ドラゴンであることから、同族感染ウイルスと合わせても5100のライフポイントしか削ることが出来ませんでした。しかし、サイバー・ツイン・ドラゴンの登場によって、上記の4枚で7200ものライフポイントを削ることができるようになりました。これにより対戦相手がいたずら好きな双子悪魔や早すぎた埋葬のライフコストを支払ったり、クリッターのような攻撃力1000程度のモンスターを追加することで、8000ライフを削り取ることができるようになったため、変異カオスのワンショットが容易になりました。
これにより、それまでは存在しなかったサイバーポッドやメタモルポッド、手札抹殺を絡めたワンショットとデッキ破壊に特化した変異ターボというデッキタイプが生まれました。

変異ターボはサイバーポッド、メタモルポッド、手札抹殺といったワンショットに必要なパーツを集めるカードがそれまでの構築と比較してより多く投入されているため、相手がワンショットに必要なパーツを集めきる前に動くことが出来るようになりました。
また、威嚇する咆哮のようなワンショットを妨害するカードを発動されたり、必要なカードを集めきれなかった場合も、デッキ破壊プランに移行することで対応することができ、変異カオスのミラーマッチにおいて優位性がありました。

変異カオスvsガジェットの相性関係について

当時はガジェットの研究が広く行われていなかったこともあって、変異カオスvsガジェットの相性関係について考察した文章は読んだことがありません。

変異カオスvsガジェットの相性について考えるにあたり、スケープ・ゴート+突然変異でイエロー・ガジェットを除去した場合を考えてみたいと思います。
イエロー・ガジェットは手札にグリーン・ガジェットをサーチしているため、イエロー・ガジェットを装備したサウザンド・アイズ・サクリファイスが地砕きのような1枚のカードによって処理されてしまった場合、(その後の戦闘2体のトークンが戦闘破壊されてしまえば)変異カオス側はスケープ・ゴート+突然変異と2枚のカードを消費したのに対し、ガジェット側は除去1枚を消費しており、変異カオス側は1枚分のアドバンテージを失っています。

もちろん、キラー・スネークをコストにした突然変異であれば1枚分のマイナスアドバンテージは発生しませんが、キラー・スネークは制限カードであるため、再現性の高い動きとは言えません。

変異カオスはスケープ・ゴート+突然変異のような基本の動きの中でアドバンテージを失っていくため、ガジェットに対して不利なデッキと評価しています。

http://kiros.seesaa.net/article/4855861.html


例えば、上記の変異カオスであれば、強欲な壺or天使の施しorいたずら好きな双子悪魔+聖なる魔術師が決まればガジェットのアドバンテージに追いつくことが出来るだろうと思いますが、逆に言えばそれくらいしかガジェットのアドバンテージに対抗する手段がありません。
上記の構築では、変異カオスが上振れるか、ガジェットが事故を起こすかしないと勝てないだろうと思われます。

また、変異ターボであればレベル制限B地区やグラヴィティバインド-超重力の網-といった永続によってガジェットの攻撃を封じることができますが、メインにハリケーン(とデビル・フランケン、リミッター解除)を採用したガジェットは、魔導戦士ブレイカー、大嵐、サイクロンに加えて、ハリケーンによって永続に対処することが出来るため、そのようなガジェットまで考慮すると、永続を採用するだけでは十分な対策とは言えません。

変異カオスとガジェットの構築にもよりますが、7:3〜6:4くらいでガジェットが有利だと考えています。

以下ではガジェットに対する対処法についていくつか考えてみたいと思います。

・ガジェットを戦闘破壊する(対処法①)



ガジェットは召喚成功時の効果でガジェットをサーチすることによって、手札の1枚のガジェットがフィールドと手札のガジェットの2枚なることで、1枚分のアドバンテージを生み出します。
サーチした手札のガジェットは召喚することで、再びフィールドと手札のガジェットの2枚となってアドバンテージを生み出すことから、カードを1枚以上消費してフィールド上のモンスターを除去するカードに対してガジェットは強く、カードを消費しない方法でフィールドのガジェットを処理しなければ、ガジェットの召喚によってアドバンテージを毎ターン広げられていくことになります。
カードを消費しない典型的なガジェットの処理方法は戦闘破壊です。
もっともガジェット側も戦闘破壊を防ぐために、ガジェットには一般に月の書のような表示形式を変更させるカード、収縮のような攻撃力を増減させるカード、炸裂装甲のようなモンスターを破壊する罠カードが採用されています。
また、2005年3月環境にはサイバー・ドラゴンが存在しており、イグザリオン・ユニバースや賢者ケイローンのようなサイバー・ドラゴンの攻撃力を下回る攻撃力・守備力のモンスターはキラー・トマトのようないわゆるリクルーターや異次元の女戦士のようなモンスターを除いては戦闘破壊によってアドバンテージを失うリスクを伴います。
そのため、サイバー・ドラゴンによる戦闘破壊リスクによるアドバンテージの損失リスクがなく、ガジェットを戦闘破壊できるキラー・トマトをはじめとするいわゆるリクルーターと王宮のお触れ(速攻魔法が表示形式の変更や攻撃力の増減効果を持っており、モンスターの破壊効果を持っているのは炸裂装甲のような罠カードあるため)を搭載したデッキであればガジェットを戦闘破壊によって処理しやすく、ガジェットに対して有利に戦えそうに思います。
ただ、変異カオスに対してリクルーターを有効に機能させることが難しいことから、変異カオスが半数程度存在する環境においては、(ガジェットに対しては強くとも)リクルーターを中心としたデッキは使用しにくくなっています。
2005年9月制限においてRRC(ロイヤルリクルーターカオス)が使われるようになったのは制限改定によって変異カオスが消滅したことが大きいのではないでしょうか。
このように変異カオスの存在も踏まえると対ガジェットは戦闘破壊することによりアドバンテージを離されないようにするのではなく、別のアプローチによる攻略を考える必要があるのではないかと思います。

・ガジェットを永続で無力化する(対処法②)

カードを1枚以上消費してフィールドのガジェットを処理するとアドバンテージを失っていくため、カードを消費しない永続によって対処します。

①攻撃を封じる。
レベル制限B地区、グラヴィティバインド超重力の網の攻撃宣言を封じる永続魔法・罠カードによってガジェットが攻撃宣言を封じます。フィールドにガジェットを召喚する目的は究極的には攻撃によって相手のライフポイントを0にすることであるため、攻撃宣言ができない状態を維持できればフィールドのガジェットに価値はありません。この時代にはエクシーズ召喚は存在しないため、ガジェットがランク4モンスターとなってレベル制限B地区、グラヴィティバインド超重力の網をすり抜けて攻撃してくることはありません。

②スキルドレインでサーチ効果を無効にする。
2005年3月制限ではスキルドレインは強いが、スキルドレインと組み合わせるカードが弱いため、スキルドレインに依存したデッキになりがちです。森の番人グリーンバブーンがあれば…

③王虎ワンフーによって召喚・特殊召喚されるガジェットを破壊する。
地砕き、月の書のようなガジェットがメインデッキに複数枚採用しているカードによって処理されてしまうため、永続魔法・罠に比べてガジェットに押し付ける要求がやや低いです。

④王宮のお触れによって罠を無効化し、ガジェットを戦闘破壊する。
ガジェットはフィールドのガジェットを魔法・罠によって守ることによって獲得したアドバンテージを維持します。王宮のお触れはガジェットの効果そのものを無効化するわけではありませんが、罠を無効化することによってガジェットの戦闘破壊の実現を補助します。

レベル制限B地区、グラヴィティバインド超重力の網によって、ガジェットの攻撃を封じるアプローチは変異カオスのいわゆる変異ターボと呼ばれるデッキタイプでも行われています。
サウザンド・アイズ・サクリファイスによるロックだけではガジェットが複数枚採用している地砕きのような除去や月の書によって突破されてしまうため、レベル制限B地区、グラヴィティバインド超重力の網を採用することによって対処しづらいロックカードの枚数を増やすという方法です。
もっとも、レベル制限B地区、グラヴィティバインド超重力の網によるロックも魔導戦士ブレイカー、大嵐、サイクロンのような基本的なカードに加えて、(デビル・フランケン、リミッター解除を搭載したガジェットは)ハリケーンによってロックを崩すことができ、しかもこれらのカードはすべて3枚採用できることから、レベル制限B地区、グラヴィティバインド超重力の網を入れたとしても、変異ターボのサイバーポッド、メタモルポッド、手札抹殺などの固有の手札を増やすカードがいずれも制限カードであることを踏まえると、ガジェット側に先に必要なパーツを揃えられてしまう可能性が高く、デビル・フランケン、リミッター解除、ハリケーンを入れたガジェットに対しては変異ターボは有利に戦えないものと思われます。
デビル・フランケン採用型のガジェットに有利に戦うためには、レベル制限B地区、グラヴィティバインド超重力の網だけでは不十分で、より強力なロックをかけるおジャマトリオ、大嵐やハリケーンを無効にする神の宣告、パーツが揃えられてしまう前にデビル・フランケンを使用不可能なライフポイントまで削るといった対応が必要だと考えます。それならば(ガジェットに勝つには)変異ターボである必要はなく、バーンでいいのです。

・ガジェットと同等以上にアドバンテージを稼ぎ続ける(対処法③)

例えば、聖なる魔術師で強欲な壺の回収を繰り返すことによって、ガジェットと同等以上のアドバンテージを稼ぎ続けることが出来れば、カードを1枚以上消費してガジェットを処理したとしてもアドバンテージにおいては問題になりません。
しかしながら、強欲な壺のような強力なカードは制限カードになっており、この動きは再現性が高くありません。
基本的にガジェットが存在する環境では、ガジェットのアドバンテージと同等以上のアドバンテージを稼ぐことを高い再現性をもって実現するデッキはほとんど存在しません。そのようなデッキが存在する環境であればガジェットが使われなくなるからです。


2005年~2007年頃、2011年~2012年頃に使われたガジェットは2008年~2010年頃の間はほとんど使用されませんでした。これはガジェットのアドバンテージと同等以上のアドバンテージを高い再現性をもって稼ぎ続けるデッキが環境に存在したことも一因と考えられます。
例えば、シンクロアンデ(2008年9月制限)やインフェルニティ(2010年3月制限)がその典型的なデッキだと言えます。

・ガジェットが対処不能な盤面を作り出し、勝利する(対処法④)

寒波帝などの大寒波を搭載したデッキによって行われたアプローチです。

マシンナーズやTGが登場する以前のガジェットは盤面の処理を魔法・罠に頼っているため、大寒波によって魔法・罠を抑え込むことによって対処不能な盤面を作り出し、その間にライフポイントを削り切って勝利します。
2007年頃までの大寒波を搭載した寒波帝のようなデッキであればガジェットも互角に渡り合えたかもしれません。しかしながら、ダーク・アームド・ドラゴン、裁きの龍、ダーク・ダイブ・ボンバーと強力なカードが登場していくにつれて大寒波の発動ターンとその次のターンを凌ぐことが難しくなっていったことが、ガジェットが環境から姿を消した一因ではないかと思います。
2005年3月制限においては貪欲雑貨ターボのような大寒波搭載デッキはもしかするとガジェットに対して有利に戦えるかもしれません。しかしながら、変異カオスはスケープ・ゴートを3枚搭載しているため、大寒波の発動ターンとその次のターンの2ターンで勝利することが難しく、例えガジェットに対して有利に戦えたしても変異カオスに対しては有利に戦えないものと考えられます。


2005年3月制限におけるデッキ評価

Tier1:ガジェット(デビフラ型)、バーン
Tier2:ガジェット(デビフラ型以外)、変異カオス(ターボ型)、変異カオス(サイドラお触れ)、現世と冥界の逆転等のワンキル
Tier3:RRC(ロイヤルリクルーターカオス)、MPT(雑貨貪欲ターボ)

レベル制限B地区、グラヴィティバインド超重力の網などの永続で詰みにくいデビル・フランケン搭載型のガジェットがもっとも評価が高く、ガジェットや変異カオスに対して強いバーンを評価しています。
選考会集計ヘッドライン: 遊戯王フロンティア (seesaa.net)
上記のリンクの2005年3月制限の選考会出場者のデッキにバーンは存在しません。ただこれはバーンが公認大会で使うには(メインに入っている可能性のある王宮のお触れによる負けを想定すると)ややリスクが高いデッキであることやCSのような大型非公認大会がほとんどなかったことから研究が進んでいなかったことが要因だと思います。
変異カオスはガジェットとバーンにやや不利であるため、評価を下げています。
RRCやMPTは変異カオスに対して不利であると考えられるため、評価は低くなっています。







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