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ー安楽死を宣告された猫との35日間ー  31日目

BAKENEKO DIARY /DAY 31. やっぱり猫って自由だね


 新年の朝が来た。夫Pの実家に行って、義父母とお雑煮でお祝いするので、朝ご飯は食べない。ミータには、おせち代わりに少し上等なウェットフードといつものカリカリをあげる。あとは…トイレをさせておかなくちゃ。嫌がるミータになんとかリードを装着。一緒に外の出ると、コートとマフラーで防備しても、元旦の朝はやっぱり寒い。30分ほどして、ミータを家の中に入れようと抱きかかえた。

「ウー」
「え? ミータ、怒った?」
「ウー」

 ミータは、普段、人間には決してうなったりしない。それなのに、まだ家に入りたくないと威嚇してきた。もう少し外にいさせてあげたいが、早く出発しないといけない。足をふんばって嫌がるミータに「ごめん、ごめん」とあやまり、無理矢理抱きかかえて家に入れ、車で実家に向かった。

 実家で和やかにおせち料理を食べ、テレビを見て過ごす。2,3時間すると、お酒が入ったPは寝てしまった。娘のSはテレビに夢中。このまま夜までゆっくりしてもいいんだけど、ミータが気になるな… 少ししか外にいられなくて怒ってたしな… 家までは車で20分ほどの距離。そうだ、私が一度家に帰り、ミータの散歩をしてから戻ってくれば、夜までゆっくりしていられるじゃないかと思い立ち、一人で自宅へ向かった。

 玄関を開けてリビングに入って青ざめた。リビングの掃出し窓が開いている!ミータは昔から、軽い引き戸なら自分で開ける。掃出し窓の鍵がしまっておらず、ミータが自分で開けて外に出たのだ。大変だ大変だ。かなり回復したとは言え、庭の南側にはかなり高い段差もある。あの段差を跳んで空き地の方まで行ってしまったら、帰ってこられるのか? 仲の悪い猫に追いかけられたら、遠くまで行ってしまうかもしれない。ケンカしても今ならすぐに負けてしまう。開いている窓を見た一瞬の間に、いろんなことが頭に浮かんだ。

「ミータ! ミータ! ミータいる!? ミータ!」

どうしよう。せっかく回復したのに、どうしよう。と後ろを振り向くと。

あれ、ミータ、いる…

窓を開けて自分で外に出たミータは、どれくらい外で過ごしたのか、すでに家に戻って涼しい顔でくつろいでいた。

「なんで…ちゃんといるやん…」
 
 過保護な飼い主が、一匹で外に出すのをためらっているのを横目に、ミータは自分でさっさと自由散歩を決行していた。自分の身体の声をちゃんと聞くミータが、決して無茶をしないのはよくわかっていたはずなのに。今朝まで必死にリードをつけて散歩させ、嫌がるのを押さえつけて家に入れていた自分が馬鹿らしくて笑ってしまった。

 実家に戻り、PとSにミータが勝手に外に出ていたことを話すと、ふたりとも驚いていた。けれどその後、Sは言った。

「ミータは自由じゃないとダメだから。もう外に出すしかないね。」

2021年元旦、ミータとの生活の再スタートだ。

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