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ー安楽死を宣告された猫との35日間ー  11日目

BAKENEKO DIARY /DAY 11. ミルクの注入に苦戦

 昨日の夜、帰宅後すぐにミータは娘Sのベッドに行ったが、寝ている間に自分の手や脚があたるとコワイとSがいうので、抱き上げて私の寝室に移動させた。嫌がるかなと思ったが、なすがままという感じでぼーっとしている。朝になるとヨロヨロと起きて、ほとんど落ちそうになりながら、ゆっくりゆっくり階段を自分で降りた。そして猫ドアまで行き、しまっているのを見るとどんよりと落ち込んだ様子で座り込み、その後はもう猫ドアへは行かなくなった。目に輝きはなく、ちゅーるやクリーム状のフードを鼻先に近づけても顔をそむけ、全く食べる意欲があるように見えない。名前を呼んでも振り向かず、何を話しかけても反応はない。

 そうこうしていると、めったに鳴らない家の電話が鳴った。出てみると病院で担当してくれていた看護師さんだ。

「ミータちゃん、どうですか? ミルクの注入、問題ないですか? 先生も様子を気にされていますが。」
 
 私たちには「自宅で食道チューブからの栄養補給はできますから」と簡単そうに言われたが、やはりA先生も心配されていたらしい。どうにかやっていること、ミータが帰ってすぐに歩いたこととお礼を伝えた。
 
 ミータに与えていたミルクは、ロイヤルカナンのクリティカルリキッドという流動食。猫の生命維持に必要やカロリーや栄養素がきちんと計算されているので、短期間なら自分で流動食を作るより格段に楽。ただし、値段は1本(1日分)約1000円なので、長期間になるときつい。

 看護師さんから習った、食道チューブからの給餌方法はこうだ。ネットで探した情報や動画でもほぼ同じやり方だった。

1. ぬるめの水を15mlシリンジに入れる。
2. チューブにセットしたら、最初に少量の水を注入して、チューブに漏れがないか確認。問題なければ、そのまますべての水を注入。
3. 少しあたためたミルク40mlを2本のシリンジに分けて入れ、様子を確認しながらゆっくりと注入。
4. チューブに残ったミルクを流しきるため、最後に水15~20mlを注入する。

 簡単そうだが、これがやってみると意外に難しい。私もSも器用ではないからか、どうしても空気が入ってしまって、注入をはじめると、ミータがゲップをする。普段ならゲップくらいということころだが、何せ弱っているので、それだけで「ごめん」という気持ちになる。一度にたくさんあげると吐いてしまうので、最初は4時間おきくらいと言われたが、これに命がかかっていると思うと、時間がとても気になる。そして、ミルクは濃度があるので、少し力を入れて注入すると、シリンジがパカッとチューブから外れてしまう。こぼれたミルクがミータの背中にかかり、粘度のあるミルクがついた毛は、乾くとカチカチになった。そんな固まりがいくつもできてしまって、姿もどんどんみすぼらしくなっていく。注入を終えてミルクを入れていたコップを洗い、シリンジを水ですすいで、汚れたタオルなどの後始末をしていると、あっという間に時間が過ぎる。Sの赤ちゃん時代の授乳のようだ。

 さらにミルクの油分のせいか、数回使うとシリンジのゴムの部分がすぐに劣化して滑りが悪くなるのにも困らされた。最初にゴムにミルクをぬっておく等の方法もためしたがあまり効果はなく、滑りが悪いと力を入れて押し込むので、ますますチューブからシリンジが外れやすくなる。チューブは長いので、最後に洗浄の意味で水を流すが、それでもところどころにミルクが残り、固まって流れも悪くなる。ミータは嫌がって逃げるほどの体力はなかったのでなんとかできたが、元気があればすぐに逃げ出していただろう。約2週間、食道チューブから栄養を補給したが、その間に2回シリンジを新しいものに交換した。

IMG20201209140638トリミング

Memo
【シリンジの劣化防止のためにやったこと】
・水用、ミルク用で使い分ける(水用には”水“と書いておく)
・日のあたるところには干さない。
・最初と最後に注入する水の量を減らし、ミルクそのものを水で薄める。
【チューブが詰まったら】
・ぬるめのお湯をシリンジに入れ、チューブから繰り返し押し込む。つまりを一カ所ずつ、溶かしながら入れてしまうイメージ。
・完全に詰まってしまうと、もう再開通できないそう。ある程度試して無理ならば、早めに動物病院へ。


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