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ー安楽死を宣告された猫との35日間ー  17日目

BAKENEKO DIARY /DAY 17. 猫時間を一緒に過ごす

 外に出るようになって、ミータはすぐに室内の猫トイレを使うのをやめた。土の方が弱った脚でも踏ん張れる。朝や午後遅くに起きてくるとすぐに猫ドアの前で待つようになったので、できるだけ外に出してやることにした。
 リードを付けて猫を散歩。こんな田舎で、野良猫出身のミータを。まさかこんな日がくるなんてな~と思う。天気はいいし、12月にしてはそこまで寒くない。でも実際は、散歩と言ってもミータにほぼ動きはない。ウッドデッキや畑でただ景色を眺め、じっと座っている。まだそんなにたくさんは歩けない。動かないので、杭を地面に刺して、リードをひっかけておく。要は、走り出したり、つかまえられない所に入り込んだりしなければいいのだ。外に出すと1時間はぼーっと周囲を眺めているので、私はその間、文庫本を読んだり、気になる場所の雑草を抜いたり。娘のSがいるときは、5回に1回くらい、私の代わりに付き添ってくれることもあった。

外でミータと一緒にいて気が付いたことがあった。時間の流れかたが人間とは違う。猫時間、とでも言おうか。地面を這うアリ、風に揺れる草、流れていく雲、鳥の声。人の目には「何もない」ように見える景色のなかに、ミータはいろんなものを見ているに違いない。
 
 左半身の麻痺は、後ろ脚はかなり良くなってきた。階段の上り下りも、少しは安定してきた気がする。ただ前脚をそろえて座ったり、香箱座りをするときには、左手が妙な方向にくにゃっと曲がってしまっていることがあった。気が付いた時は、そっと正しい角度に戻す。ジャンプ力に関しては、40センチくらいの高さなら飛び上がれるようになってきていた。
少しずつ食べられる量も増えてきたので、チューブから入れるミルクを減らすようにした。ウェットフードは食べやすいように子猫用や高齢猫用もあげたけが、看護師さんによると子猫用を大人の猫にあたえるとお腹をこわすことあるので、注意しながらあげてくださいとのことだった。

 ひとつ困ったのは、ミータがとても臭くなったこと。毛繕いもできないし、ミルクがこぼれてあちこち背中の毛が固まっているし。蒸しタオルで時々拭いたけどもあまり効果がない。食道チューブの挿入口を保護する包帯に、毎日塗っている薬がついて蓄積されているせいもあったかもしれない。外に出るときは、少しでも太陽光をあびて匂いがましになるといいなあとも思っていた。

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