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ー安楽死を宣告された猫との35日間ー  13日目

BAKENEKO DIARY /DAY 13. 涙腺崩壊

 朝。やっとちゅーるをひとなめしてくれた! 食べた分だけ、適当にシリンジで注入するミルクを減らしていいと言われたが、これってどうなの?減らしてカロリーは足りるのだろうか?

 ミータは、こんこんと眠り続けた。猫はよく寝る動物だが、普段より多いと言うよりも、本当にずっと寝ていた。こちらが声をかけて、ようやくうっすら目を開ける、というくらい。用意したケージと寝床には全く興味を持たず、私のベッドの布団の上で。布団カバーはミルクのシミと、汚れた毛の固まりやかさぶた、顔の傷から出る分泌物などで大変に汚い。

 退院前に準備したおむつは、結局使わなかった。帰宅して丸一日以上過ぎてから、ミータは準備した猫トイレを使うようになった。
 平均的に猫は、1日に2~3回排尿、1回排便するそうで、ミータも事故前はそれくらいだったと思う。しかし今は口から食べていないせいか、おしっこが1日に1回、ウンチは2,3日に1回のペース。以前は庭の畑の一角がミータのトイレで、大小ともしっかりと穴をほってからいたし、完全に見えなくなるまで自分で土をかけていた。しかし、ミータはまだヨロヨロで、左半身には麻痺が残っている。用を足そうとしてもなかなか踏ん張ることができないし、トイレ砂といえども掘って埋め戻すのはひと苦労。特に大きい方は脚が踏ん張れず、とてもやりにくそうだ。排泄回数が少なかったのは食べてないせいもあったが、トイレに行きたくない言う理由もあったのかもしれない。

 夕方、ホームセンターにエナジーちゅーるを買いに行く。普通のちゅーるよりカロリーが高い。数種類の味を買ってみたが、食べるのは“かつお”だけ。他メーカーの類似品も食べず、こんな時でも偏食。ミータにはそれまでおやつ系のフードは与えていなかったのに、私は数日ですっかり“猫おやつ通”になっていた。

 車に乗っていて、ミータのことを考える。これからどうなっていくのだろう。私のベッドで寝ているので、夜中も何度も気になって起きるせいか、寝不足で頭がぼんやりする。このままだったらどうしよう。何だったら食べられるだろう。とりとめもなく、ミータのことばかり考えている。

 その時、車のラジオから森山直太朗の「生きてることが辛いなら」が流れてきた。何度も聴いたことのある、深くて優しい命の歌。

♪何もないとこから 何もないとこへと
何もなかったかのように 巡る生命だから♪

 あかん。涙が出る。この歌詞にミータのことを重ねるのは全く違う。自分に重ねるのもぜんぜん違う。明らかに過剰な反応だ。わかっている。でも、助かった“命”をつなぐために必死な中で聞いた命の歌は、深く心に突き刺さった。

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