CRAの説明書〜Site Initiation〜
概要
CRA業務の一番最初の山場である、Site Initiation Visit(SIV)をどう切り抜けていくのか?結構悩んでいる方も少なくないのではないでしょうか?そういった方にむけて、簡単な説明書を書いてみました。もちろんやり方や担当する施設によってはうまくいかないこともあるかもしれませんが…
CRA1年目から3年目くらいまでの方対象にしたつもりです。長文ですがぜひ最後まで読んでいただければと思います!
説明
Site Selection Visit (SSV) 終了後からSIV)完了までの解説をします。SSV完了からSIV完了までの期間をどれだけ短縮できるのかは、その後の症例登録期間に直接影響を与えます。当たり前ですが、SIV完了が遅くなればなるほど症例登録期間は短くなり、SSVで見積もった症例数の確保が難しくなります。SIV完了までがCRA業務の中で一番最初に現れる強敵で、こいつを簡単に倒せるようになれば社内での評価は間違いなく高くなるでしょう。
期待される成果と目標
SIVを各試験で設定された期間内に完了させる手法を学びます。SIV完了までにあるタスクを理解し、各タスクを適切に処理するためのスケジューリング、方法を理解することで、SIVスペシャリスト(そんなものがあるのか…?)としてのスキルを高めましょう。
SIV完了までの道のりは?
おおざっぱに分けると、「治験実施計画書等の合意から治験契約の締結まで」と「治験ごとのSIV完了要件をそろえる」の2つの大きなフェーズがあります。治験契約の締結までは特に実施医療機関のルールによって業務量に大きな差が出てきてしまうので、いわゆるハズレ施設を引いてしまうと心身ともに疲弊してしまう可能性が高まります。ただ、一見面倒くさいハズレ施設のように見えても、SIV完了後は何も問題なく治験が進む施設があります(事前に色々つぶしてくれているので当たり前ですが)ので、腐らず将来のためと思い食いついていきましょうね。
スケジュールの確認
まずは、担当した施設の手続きスケジュールを確認します。SMOサポートのクリニック等はSMOの事務局担当に聞いてみます。SMOが入っていない施設の場合は施設のホームページ等で公開されていることが多いです。公開されていない施設は困ったものです。公開してください!
いわゆる普通の施設の場合はいいのですが、大学病院等は色々とイベントが設定されています。細かいことを確認するのが大変だったら、事務局担当に合意からIRBまでに特に時間かかるところはどこっすか?とい聞いてみるのもアリです。
よくあること:
IRB前までにヒアリング等がある
IRBの〇日前までにやるとか、治験依頼の〇日前までにやるとか決まっているとその時点でしっかりスケジュールを立てる必要があります。ヒアリング対応は後で説明します。施設固有の書類やの作成が必要
本来SIVまでにあればいい資料がなぜか事前に必要
治験実施計画書等の合意時
治験責任医師(以下、PI)との治験実施計画書等の合意時には、SSV時に説明していた治験の概要から変更になった部分を中心に説明しましょう。基本的に一から説明する必要はないと思います。ただし、SSVから期間が空いてしまっている場合は、おさらいが必要なのかも確認します。
治験を実施するにあたって、治験実施診療科以外の診療科に検査や評価をしてもらう必要がある場合は、必ずこの時点までにはその科の医師からの協力を得られるようにしておく必要があります。
治験の内容に合意が得られたら、目標症例数についても確認します。PIはSSVの時には気が大きくなっているため、多めに実施可能例数を言ってしまっているかもしれません。現実をみるように諭したうえで、今後のスケジュールから逆算された症例登録期間内に何例を目標とするのが妥当なのかを再度確認します。目標症例数の確認手法については、この後説明します。
治験実施計画書の合意時には、その合意だけだはなく、その後の治験依頼書の提出時までに揃えないといけない文書も渡しておきましょう。その時点でどこまで渡せるかは準備状況にもよりますが、出せるものは全部渡してレビューをお願いします。同意説明文書(以下、ICF)の会社案は必ず渡して施設版ICFの作成を依頼しましょう。ほとんどの場合、PIがこの時渡したICFから文章を変えてくることはありません。なので、治験依頼者のICFレビューのプロセス次第ですが、最短では合意時に施設版ICFを固定することもできなくはありません。合意のアポイントまでの間に、治験コーディネーター(以下、CRC)と施設版ICFの内容を確認しておくと良いです。
また、今後のスケジュールについても説明します。特にPI(やSI)に必要なトレーニングがある場合には先に言っておきます。早くやってくれる人もいますがなかなかトレーニングが進まないという人もまだいます。
合意のアポイント以降でPIに会える機会はスタートアップミーティング(以下、SUM)までないことが多いです。急な連絡ができるよう、PIのメールアドレスは最低限入手します。また、PIによってはCRAの携帯電話に直で電話してくる場合があります。そのためPIの携帯電話の番号もなるべくもらいましょう。名刺に書いてある場合はラッキーです。すぐに携帯電話の連絡帳に登録しましょう。
会話の流れ:
モ:今日はプロトコルの合意の面談です。選定時にも説明をしていますが、プロトコルがFixしたので、選定時から変わったところと特に重要なところを説明します。もし最初からの説明が必要でしたら言ってくださいね。
(さらっと説明する)
モ:ご質問はないですね?そしたら目標症例数についてもお伺いしたいです。(・・・後で説明しますので略)
モ:プロトコルの合意と目標症例数は確認できました。次に今後のスケジュールについて説明します。〇月のIRBで初回審議をしようと思っています。その場合、資料の提出の締め切りは〇月〇日になります。先生に作っていただくものは、これとこれ、レビューが必要なのはこれとこれです。ICFは固定前に依頼者の確認が必要で、だいたい〇日かかりますので、〇月〇日までに作成をお願いします。あと、これとこれも今後やる予定で・・・(以下略)
準備するもの:
治験実施計画書(別紙もあれば)
ICF会社案
治験薬概要書(や、それまでに出た安全性情報)
症例報告書(以下、CRF)の見本(必要時)
合意書
説明用スライド(手持ち資料)
治験依頼書に添付する書類・文書(できるだけ)
その他出せるもんはできるだけ
目標症例数の確認
目標症例数の確認は非常に重要です。少なく設定しても多く設定しても、どちらにもリスクがあります。なので、しっかりと現実的な数字がでてくるようにPIと話をしていく必要があります。SSV時の例数と変更がある場合は、管理者側に説明をできるようにきちんとヒアリングをしましょう。
一番やってはいけないのは、「とりあえず〇例から」です。
よくある光景なのですが、治験全体でそういう施設が増えてくると全体の見込みがたたず、適正な施設数で治験の実施ができなくなります。
目標症例数が少なかったら・・・
開始時点での治験全体の症例数の見込みが足りなくなるため、その分を他の施設に足すか、場合によっては施設を増やす必要がある。施設を増やすとなると予算やらリソース確保やらで大変になる。
目標症例数が多かったら・・・
一見よさそうですが、風呂敷を広げる行為は自らの首を絞めることにもなりかねません。全施設5例契約にしているなか、10例契約をしてしまうと、7例8例の登録でも目標未達で評価を下げられる可能性があります。
目標症例数はどうやって設定すればいいのでしょうか?
症例の組み入れに影響が大きい因子は、治験の対象となる患者数、症例登録期間、競合試験の3つです。他にもあるのですが、ここに絞って説明していきます。また、PIが実際に患者を診ていないケースもあるため、対象疾患を誰が診ているのかはきちんと確認する必要があります。もしも別の医師が診ている場合は当然治験分担医師(以下、SI)になるはずですので、もしPIの言葉があいまいだったら、別途そのSIに時間をもらって確認する必要があります。
治験の対象となる患者数
SSV時には選択基準や除外基準が全てそろっているわけではありません。治験実施計画書がFixされたときにその基準を満たす患者がどれくらいいるのかは確認する必要があります。希少疾患など、特殊なケースを除くとPIやSIは全ての患者の情報が頭に入っていると思ってはいけません。SSV時にカルテスクリーニングがされていればその情報も参考にしましょう。
ここでの確認が、実際に症例登録期間が始まったあとに活きてきますので、できるかぎり時間を使いたいところです。
治験によっては同意取得時に併用薬の条件が設定されています。例えば、「同意取得時点で〇と〇を30日以上使用している」とか「同意取得前〇日以内は〇を使用していない」とかです。この場合は、将来の治験参加を見据えた●●●●(ピー)も必要になってきます。来る患者に声をかけるだけの治験ならばそこまで気にする必要はないのですが、そういったお手当てが必要なケースがあることも覚えておきましょう。
確認方法は、すでに通院されていて症状が安定している患者を対象とするのか、悪化した患者や新患を対象にするのかでも異なります。具体的にいうと、毎月定期的に通っているような患者が対象であれば、カルテスクリーニングをしてしまえば母数はわかります。たいていはSSV時にこれはできているので大きく変わることはないでしょう。
症例登録期間
症例登録期間はできる限り長くしたいですね。でも登録期間の「おしり」は治験開始時に決まってしまっています。結局はがんばってSIVを完了させることしかありません。このSIVの説明書をみていただき、実践をすることで必ず期間を長くすることができます。
競合試験
最後は競合試験です。いくら対象となる患者数が多くても、競合試験が多くなれば患者の取り合いになってしまいます。特にSSV時に見えていなかった競合試験があると大変です。合意時には、競合試験の有無は必ず確認しましょう。競合試験が予定されている場合は、可能な限り自分治験と組み入れ基準がどう違うのか?いつごろ開始する予定なのか?患者をどう振り分けるのか?を確認しましょう。
会話の流れ:
モ:今回の対象となるのは65歳以下の高血圧の患者さんです。1か月以上3剤使用してても血圧が高い人が対象になります。各施設10例ずつの登録をお願いしているのですが、どうでしょうか?今のスケジュール感ですと登録機関は3か月くらいになりそうです。
PI:月3例ずつでしょ?余裕だよ。10例でいいよ。
モ:今って高血圧の人月に何人くらい通院しているんですか?
PI:月100人は来てる。大丈夫よ。
モ:65歳以下でも?あと3剤使ってて効果イマイチな人って・・・?
PI:あー爺さん婆さんが多いわ。65歳以下だと半分以下かも・・・しかも3剤かぁ。月10人もいるかなぁ。
モ:選定時にはこの基準がなかったのですが、これの影響は・・・?
PI:うわ、それダメになったの?そしたら・・・
モ:ちなみにIRBの議事録みたら1件競合試験の審議がかかってました。これだと開始時期ダダかぶりです。どうやってふりわけます?登録期間のかぶり具合はどうなんでしょうか・・・?
PI:月5名の患者さんを半々に割って、あっちとこっちに順番で入れるわ。月2-3例は入れれるから3か月で10例はがんばればなんとか。
モ:わかりました。
治験依頼書の提出準備
合意が済んだら治験依頼書の提出準備です。
治験依頼書の提出準備では、それぞれの書類の作成に誰がどのようにかかわっているのかをまず確認しましょう。
必要最低限の添付資料は、書式の添付資料一覧(下図)をみるとわかりますね。面倒くさいのは、これに加えて「治験依頼者として審議依頼してほしいもの」と「施設が提出してほしいもの」があることです。いくつか資料をピックアップしてその対応方法について説明します。
ICF
ICFの作成は治験依頼書提出までで最も面倒くさいタスクの一つです。表面上はGCPでも記載があるとおりPIに作成責任があるのですが、PIがICF会社案から勝手に作ってくれることはなく、かといって施設のスタッフ(CRCや治験事務局担当者)が代わりにやるわけでもなく。一部の施設はPIやCRCが対応してくれるところもありますが、割合でいったら2割もないでしょう。なので、残念ながらICF施設版の作成はCRAが中心にならざるを得ないのが現状です。しかも、施設ひな形という凶悪なものもあります。
まずは、スケジュールの確認です。ICFは治験依頼者のレビュー・承認が必要な場合がほとんどですから、その手順も考慮します。依頼者レビューがどれくらいかかるのかも事前に確認しましょう。治験依頼書の提出予定日から起算して、どのタイミングまでにどこまで進めていくのか?を決めていきます。
大切なのはICF作成には多くの人がかかわっているということです。それぞれの人に余裕をもったスケジュールでバトンを渡していきたいですね。特に海外のグローバル本社の確認が必要な場合には普段より多くの時間を要することがあります。
スケジュールの確認(例):
治験依頼書の提出(10月20日)
↑(印刷・郵送が必要ならその日数)
PI確認(10月18日)
↑(7日間):グローバル本社の確認があるなら時差も考える
依頼者レビュー(10月11日)
↑
PI確認(10月10日)
↑(何日使えるかな・・・)
ICFの作成(今ここ!)
さて、ICFの社内レビュー依頼時に気を付けていただきたいことがあります。
それはレビューワーがレビューしやすい状態になっているかを意識することです。特に注意が必要なのは、ICF施設版ひな形を使用するときです。ICF会社案とICF施設版ひな型では、各項の順番や項だてが違うことが多いです。しかし、治験依頼者側はICF会社案にある内容をそのまま使ってほしいと考えています。そのため、ICF会社案には「変更不可箇所」というものが設定されている場合があります。そうすると、施設のひな形に当てはめるときに、切り貼りしてICF施設版を作成することになります。そうしてできあがったICF施設版をレビューしようとすると、「会社案のあの項目はどこにいった?」「あれ、ここは文章が違ってきているな」といつもよりも時間がかかってしまいます。そうならないように、「会社案のこの項目は、ここに移動しました。文章はかわっていません。」とかわかるようにしておくとレビューワーが助かります。自分たちがICFを作成するときにも漏れがなくなりますしね。
治験の費用の負担について説明した文書
これは主に治験参加中の被験者の同種同効薬や検査代(保険外併用療養費の支給外の費用)、被験者負担軽減費用について説明した文書です。治験の保険外併用療養費制度の説明は割愛しますが、施設によってはこの制度を超えた費用の負担を依頼者に求めてきます。具体的にいうと、治験薬を投与していないスクリーニング期間やフォローアップ期間についても、その費用を負担しろということです。このあたりは、治験依頼者側の考えと施設側の要求のすり合わせが必要になってきますので、時間を要することがあります。ここでの取り決めがそのまま治験契約書の費用の支払いについても反映されてくるので、「依頼者押印済み治験契約書」を治験依頼時に出せという鬼畜施設の場合は、早め早めに動いておく必要があります。
その他の注意事項
ごくまれに、治験依頼書を提出時に審議対象とならない資料、例えば治験薬管理手順書や併用禁止薬一覧を提出してほしいと要望されることがあります。ところがそういう資料は事前に出来上がっていないケースがあるので、審議対象でないものの事前提出が本当にその時点で必要なのか?を施設側と協議をしましょう。間違っても、なにも確認せずに「施設が提出しろといっているので早く提供してください」と治験依頼者に要望してはいけません。
治験依頼書提出~治験契約締結まで
治験依頼書を無事に提出できました。少なくともIRBの日にちがずれることはく、契約日もよほどのことがなければいつぐらいになるのかは予測ができている頃です。治験依頼書の提出から治験契約締結までは3-4週間はあります。この期間を無駄にするのは非常にもったいないです。この間にできることは何でしょうか?もちろん、CRAの人たちは1施設しか担当していないということはありませんので、その期間は別の施設の作業時間に充てるかもしれません。でも、施設の人たちにやってもらうことをお伝えするくらいはできますよね?SIVの早期完了に向けてがんばって走っていきましょう。
SUM実施日の設定
SUMの実施がたいていの場合SIV完了日になることが多いですね。個人的にはすべての要件を満たしたときがSIV完了だと思うのでどうかと思いますが、なんとなくそうなっています。トレーニングや書類の入手をその日にまとめてやるからなのでしょうが、ぶっちゃけSUMって本当にいるの?と疑問に思っています。ただ、その日をSIV完了とするのであれば、日付は早いうちから決めてしまうべきです。出席者が多くなればなるほど調整が難しいですからね。
契約書のレビュー
契約書の治験依頼者のレビューはどれくらいの日数が必要でしょうか。よほどのことがなければ、2週間もかかりません。まれに1か月かかるような場合もあるので、IRB開催日すぐにハンコがおせるように準備しておきましょう。
施設スタッフのトレーニング
近年、施設スタッフのトレーニング要件が複雑になり、トレーニングもE-learningが主流になってきています。トレーニングサイトのアカウントの発行は済んでいますか?トレーニングは「受けるのは施設スタッフ」ですから、代わりにやることができません。つまりやってもらわなければならないので、どのトレーニングをいつまでに受けてほしいのかをきちんと説明しましょう。トレーニングログが必要なのであれば事前に提供しておきます。
トレーニングは契約締結後でないとできないという場合もありますが、その場合でもアカウントの発行等できるところまでは準備しておきましょう。
デリゲーションログ
スタッフのトレーニングに前後して、デリゲーションログのサインも必要になります。特に登場人物が多い場合には、ログのサインで相当な時間がかかることになります。あらかじめログに記載が必要な役割を特定し、早めにログの作成を依頼しましょう。
ログに記載が必要な人はできる限り少なくするように交渉しましょう。ログに記載する=トレーニングも必要となるので必要最低限にします。SIVを早めに完了するために、初回のログ作成時のみ記載する人を少なくするなども有効です。治験分担医師・治験協力者リストとの相違をどの程度許容するかは治験依頼者の考え方次第ですが、リストとログで差があっても良いと考えます。
治験薬搬入の要件の確認
治験薬搬入の要件には、たいてい治験契約書等の必須文書の入手等が設定されています。要件の確認にも治験依頼者側で必要な日数がありますので、事前に確認しておきましょう。
ICFの印刷
IRBで承認されたらICFの印刷発注を行います。たまに、先に印刷してできる限り早めに施設に提供したいという人がいますが、間違いのもとですので、必ず承認後に発注しましょう。
原資料の特定とデータ入力までのプロセスの確認
CRFの各項目に、原資料のどこからデータを入力していくのかを特定していきます。通常のバイタル等であれば治験を普段から実施している施設では原資料からデータ入力までのプロセスの特定はできているはずです。それを確認します。実施する治験に固有な項目がある場合には、きちんと原資料と入力プロセスを確認しましょう。
貸与資材の搬入
治験薬の保管庫等、施設から貸与を希望されているものがある場合は、治験契約書の締結と同時に搬入依頼ができるように施設に搬入希望日を確認します。搬入まで4週間程度要することもあるので、場合によってはこれも早めに対応が必要です。そもそも貸与しないと治験できないのはどうなの?とは思いますが・・・
SIV完了
ここまでで、ほとんどの準備はできているはずです。SUMをSIV完了とするのなら、それまでに残っている要件をすべて達成しなければなりませんが、実は上記の「治験依頼書提出~治験契約締結まで」で適切にスケジュールを組んでいれば、ほぼやることはありません。
SUM
SUMの目的は何でしょうか?一般的には、被験者の来院後にそれぞれのスタッフが何をどうやるのかの認識のすり合わせや対象症例の周知になります。まさか、ここで「これはできない」ということにはなりませんよね?
スタッフが何をどうするか
ここはCRAがどうこうということはありません。CRCが院内のルールについて各スタッフに説明します。看護師がやるのは・・・臨床検査技師がやるのは・・・医事課がやるのは・・・みたいな感じです。
対象症例の理解
PIはどういう症例が対象かは理解しているはずです。はずなんですが、たまに、いや結構抜けていることもあります。また、SIがいるときにはここで初めましてになる場合もあります。治験実施計画書の細かいところまで説明をする必要はありませんが、医師にどういう目線で候補者を探してほしいのかはここでしっかり理解していただく必要があります。
SUVが終わればSIVの完了です。でもせっかくなら完了の翌日には最初の患者の来院(FPFV)が欲しいですよね。ではどうやってそれを達成しましょうか。
FPFV
治験全体のFPFVは治験の大きなKey Milestoneです。もしどの施設よりも早くSIVを達成したのならゲットできる可能性があります。それを達成したからボーナスが出るということは聞いたことはないですが、名誉なことには変わりありません。できれば達成したいところです。これを達成するには対象となる疾患に応じて事前の仕込みが必要になります。仕込みを含めて、症例登録をどう進めていくかは別の章で詳しく説明します。
来院スケジュールの確認
当たり前ですが、患者がこないことにはFPFVなど達成できるわけはありません。急性期の疾患であれば、患者がいつ来るのかはわからないのでどうにも難しいです。逆に、慢性疾患が対象の場合は、患者は定期的に来院をしているので、いつ来るのかは把握しやすいですね。来院日の前の週にがんばってSUMを設定しましょう。
慢性疾患の場合
事前に医師やCRCにカルテスクリーニングを依頼しておきましょう。カルテスクリーニングができれば、対象になりそうな患者のリストができるので、次の来院予定を予測できます。来た時には見逃さずに同意取得(IC)をトライしてもうようにお願いしましょう。患者を見逃さない工夫についても協議しておきます。例えば、当日の予約患者を朝CRCに全チェックしてもらい付箋等でしるしをつけることなども有効かもしれません。
CRCがカルテスクリーニングをできない施設もあるので、その場合は医師にお願いをします。でもカルテスクリーニングを医師がすることなんて聞いたことがありません(じゃあなぜお願いするのか・・・)。この治験を忘れないように、外来机などに目立つものを置いておくとかもいいかもしれません。慢性疾患の急性期(例えば統合失調症で悪化した患者が対象の治験等)でも役に立つかもしれませんね。
急性期疾患の場合
急性疾患の場合は、当然何らかの症状の悪化等、選択基準に該当したタイミングでICをとれる仕組みをどう構築するか次第です。対象となる患者が医療機関でどういう導線(どの診療科が入口なのか、どこでどの基準を確認するのか等)を辿って実施診療科にくるのかをきちんと確認しましょう。導線上にいるスタッフに対する治験の周知が非常に大事になってきます。ICをとるまでの仕組みを作れればあとは天に祈ります。
さいごに
さて、いかがでしたか?時代が変われば色々とやり方は変わることがあるかもしれませんが、ここで書いたことは割と普遍的であまり時代に流されないことかなとは思います。
Site Initiationさえしっかりできれば、一人前のCRAの第一歩がしっかり踏めるようになっていると思います。みなさん、がんばってください!
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