『ズッコケ三人組』の希望
7月22日、那須正幹先生の訃報が流れた。
ちょうどその日はコバケン騒動の真っ只中で、もう何だかクタクタになった。
ズッコケ三人組を読み始めたのはいつだったのか、もう覚えてない。多分小学校4年生くらいの時だったと思う。
父親から「怪人二十面相が面白い」と言われたので、小学校の図書館で借りて読んでみたのだが、何を言ってるのか全くわからず早々に断念した。
そして真っ黒い背表紙の怪人二十面相が並ぶ棚の下の段に、真っ黄色のズッコケ三人組が並んでいた。
広島で育ったからか、何となく「ズッコケ三人組」という音は知っていたし、黒→黄色というギャップが、怪人二十面相の読めなさにちょっとショックを受けていた自分にちょうど良かったのかもしれない。
とにかく借りて読んでみた。(何を最初に読んだかももう覚えてない。)
そこから、図書館にある分を片っ端から読み漁った。
小4から小6まで、多分ほとんどズッコケしか読んでない。
自分の父親が4歳くらいの頃に始まり、自分が4歳くらいのときに完結した作品なので(めちゃくちゃすごい)、
よくわからない部分や明らかに古い描写もあったが、
シリーズ全体に通底する、子供の生活の延長線上にある夢みたいなのに強く惹かれた。
タイムスリップしたり、海底の王国に旅したりと非現実的な作品も多くあるのだが、それらも、夏休みの出来事だったりして、あくまで「生活の延長線上」なのだ。
株式会社を作って金を稼ぎまくる姿にはもちろん憧れたし(ネットで調べたらやっぱり1番の人気作だった)、調子づいて友達に「株式会社作ろうぜ!」と誘ったら、「ズッコケ三人組読んだでしょ?」と返され、非常に恥ずかしい思いをした。そしてそいつとはまだ親友(と思ってる)関係にある。
家出して大阪まで行く話では、社会からはみ出した人(そうならざるを得なかった人)に関する話が出てくるんだけど、その内容が大学で社会学を学ぶきっかけになった気もする。
書きながら整理をしていたら、ちょっと色々思い出してきた。
今の自分を構成する要素の多くのルーツは「アルコ&ピースのオールナイトニッポン」にあると思っていたんだけど、そのさらに下にある地層は「ズッコケ三人組」なような気がする。
夏休みに地元に帰ったときに、献花をしようと思っていたのだけれど、コロナ禍でそうもいかず。むーんとしたまま久しぶりに何冊か読み返したらやっぱり面白かった。
面白い作品は多分ずっと面白いから、それはある意味で長いこと続く希望なんだと思う。
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