あなたも明日からできる「好きな〇〇」の処世術

「好きな〇〇は何?」という質問は、日常生活、特に初対面から時間があまり経っていない人との間でなされることが多い。
誰にでも好きな/嫌いなものはあるから、答えに困らないし、もしそれらが一致していた場合は、話を一気に進めることができる。加えて、その人のことをまず簡単にではあるが理解できるから、コミュニケーションの煩雑さを少しではあるが取り除くことができる。

初対面で繰り出すには無難な割にメリットが大きい。コスパのいい質問である


これが苦手だ。その答えから、自分という人間が見透かされている気がしてならない。

きっとそれは、自分が他人の答えから勝手に色々想像しているから。


「好きな色は金、好きな食べ物はステーキ、好きな動物はライオン」
なんていう人がいたら、この人は成金とか小金持ちなんだろうなと思ってしまうし、

「好きな色は赤、好きな食べ物はハンバーグ、好きな動物は象」
なんていう人がいたら、この人の感性小学生みたいだなと思ってしまう。



『他人からダサいと思われたくない』という最大目標を掲げ、人生をサバイブしている人間なので、この類の質問にはいつも細心の注意を払い、それとなくセンスがある人が出しそうな答えを用意している。


とはいえ、嘘はつけない。その人との関係が発展した場合、バレてしまう可能性が高い。(「あの時のあれは嘘だったんだよ。」と自分からバラすこともできるだろうけど、その時の自分のプライドの具合がわからないので得策ではない。未来を担保にしていいことはあまりない。)


つまり、「本当に好きな物をいかにコーティングしてそれっぽく見せるか」という、なかなか難しいことをしているわけだ。


そりゃ人と話した後が一番疲れるわな。



例を示そう。

「好きな食べ物は何?」


答えはこうだ。


「パンとハンバーガーと冷麺」


まずパン。

誰もが食べたことがあるのが強い。パンの中にも種類がたくさんあったり、「ご飯派とパン派、どっち?」の話に持って行けたりするから、話が膨らみやすい。

あとパンはなんとなくオシャレなイメージを持っているのもありがたい。
都会的で洋風で。かといってお高く止まってる感はあまりでない。
ここで「オシャレなパン屋さんとかもそうですけど、コンビニのパンも美味しいですよね。」とか付け加えれば完璧だ。


次にハンバーガー。

チェーン店であることを強調するのがポイント。
「ハンバーガーに2千円とか払うの、あんまり理解でないんですよね〜。」とでもいえば、非常に庶民的な金銭感覚をそれとなくアピールできる。

そこからチェーンのハンバーガーでどれが好きか、の話に持ち込み、話を展開していく。


最後に冷麺。

ここまでの2つに比べてややマニアックな料理。
ちゃんとこだわりたい部分にはこだわる人感が伝わる。

ここで「ラーメン」なんて言ってしまったら終わりだ。ポピュラーすぎるし話すのに必要とされる知識が多い。
その点、冷麺に関する知識を豊富に持っている人なんて少ないから、よく行くお店の冷麺が美味しい、みたいな話をした後に、「コンビニの冷麺はあんまりね…。」と言えば即席冷麺王の出来上がりである。


繰り返しになるが、どれも嘘ではない。

パンも、ハンバーガーも、冷麺も本当に好きである。ただそれを話の種にしようと思った時、多少の演出はさせてもらう。話し相手であるあなたに楽しんでもらうためだ。

エンターテイメントである。


お分かりいただけただろうか。

普段私はこんなことを考えながら、時には事前に準備して、コミュニケーションの場に臨んでいる。

もし共感してくださる方がいるのであれば、「好きな〇〇は何?」に対する模範解答は、

『自分が本当に好きなもののなかで、ポップとマニアックの中間から、少しマニアックに寄った部分にあるものを答え、それに対する理由でカッコつける』

であることをお伝えしたい。


共感できないという方。


あなたはきっとコミュニケーションが得意な方だ。



羨ましい限りです。今度コツ教えてください。


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