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【#refereenote 】vol.5 FC東京アルトゥールシルバ選手の乱暴な行為について

ごきげんよう!
Jリーグで起きた一発退場の重要事項報告書を書いてみる #refereenote です!
前回から3週間ほど空きましたね。最近は警告2枚での退場が多く、あまり #refereenote の出番が多くなかったです。まあ、リーグにとってはいいことなのかもしれませんが笑
とは言っても、その間にもFC東京のレアンドロ選手が審判団の見えないところで相手を打つ行為で3試合出場停止になる事件がありましたね。こういうときにVARあるといいなと思います。審判団は8つの眼で捉えきれないことは判断できません。なので、隠れたところでやれば得してしまうこともあります。今回で言えば、それでレアンドロ選手に決勝点決められたら、溜まったもんじゃないよなと。
あとは、私の尊敬するレフェリーの1人家本政明さんがnoteを始めたようですね!是非、見てみて下さい!

1.今回のケースの紹介

今回は明治安田生命J1リーグ第28節FC東京 vs 横浜F・マリノス@味の素スタジアムからのご紹介です。
序盤からFC東京が攻勢に出た中で54分、56分と横浜FMが立て続けにゴールし、2点リードして迎えた61分の事象です。
⑴松原選手から右サイドに開いていたエリキ選手にパス
⑵エリキ選手は内側に向けて、持ち出すようにトラップするも、FC東京6番小川選手の足に引っ掛かり倒れる
⑶副審1の八木さんがフラッグアップし、ファールサポートをするものの主審の今村さんアドバンテージの判定
⑷そのままジュニオールサントス選手にボールが繋がり(ナイスプレーオンでしたね!)、ゴール方向へドリブル開始
⑸ペナルティーエリア前でボールを失うものの奪ったアルトゥールシルバ選手が前に持ち出したボールを即座に松原選手が奪い返す
⑹ボールは後方にいた喜田選手へ渡り、再度右サイドへ展開
⑺ボールが移動中にアルトゥールシルバ選手が松原選手の顔面を左手で乱暴に打つ
⑻横浜FMの選手はプレーを止めるも、レフェリーの死角で起きた事象で主審は視認できずプレーは続行
⑼10秒ほど横浜FMの選手がボールをキープした後に今村主審が試合を停止した

DAZNではキーモーメントにもなっていますが、1:32:43〜確認できます。
以下、該当シーンが見られるTwitterとYoutubeリンクです。

2.5W1Hで整理しよう

では、例に倣い5W1Hで整理してみます。
・Why:乱暴な行為を犯す
・When:61分35秒付近(退場を命じられたのは63分)
・Where:FC東京陣内、ペナルティーアーク約10m手前
・Who:FC東京45番アルトゥールシルバ選手→横浜F・マリノス27番松原健選手
・What:相手競技者を打つ
・How:松原選手の顔面をアルトゥールシルバ選手が左手で打った
+判定後の態度について
主審が退場を命じた後、アルトゥールシルバ選手は判定を受け入れピッチから速やかに離れた。

3.重要事項報告書

「63分FC東京45番アルトゥールシルバ選手の乱暴な行為を犯したことによる退場処分について」
63分、FC東京陣内ペナルティーアーク約10m手前でFC東京45番アルトゥールシルバ選手はボールに挑んでいないときに横浜F・マリノス27番松原健選手の顔面を左手で打ち、乱暴な行為を犯した。
この行為により、アルトゥールシルバ選手を退場処分とした。
主審が退場を命じた後、アルトゥールシルバ選手は判定を受け入れフィールドから速やかに離れた。

4. #refereenote view

非常にシンプルな報告書になっていますね。
今回の判定で個人的に取り上げたいことが2点あります。
⑴どういうプロセスで審判団はアルトゥールシルバ選手を退場にしたのか
この判定、実は非常に難しい判定なんです。個人的には担当された4人の審判団の連携は素晴らしかったと思います。
なぜ難しいかというと、今村主審の死角で起こったからです。冒頭でもお伝えした通り、VARがない今季はこれまで通り8つの眼でフィールドでの事象を監しなければなりません。そして、8つの眼の中でも主審の2つの眼は大きな役割を果たします。なぜなら、主審はその試合の一切の権限を持つからです。最終的にジャッジを下すのは常に主審です。副審や第4の審判員の役割はあくまでも「主審の援助」だからです。
今回のケースで言うと、下記動画を見る限り、主審とその他の審判員が直接会話をしている様子は見受けられません。


ここからは推測になりますが、1:02付近で今村主審が耳に手を当て、第4の審判員鶴岡さんの方向に身体を向けてインカム(審判員同士の無線コミュニケーションツール)を通じて話しているシーンで助言を受けているものとみられます。
審判団が組織で機能し、素晴らしい判定を導き出した良いシーンですね!すごいと思います…!

⑵重要事項報告書には、副審もしくは第4の審判員からの助言を採用したことは記すのか?
小題は自分の疑問です。今回であれば、今村主審は乱暴な行為を見えていなかったはず。そして、恐らく第4の審判員の助言を採用して、退場を命じたと考えられます。その際には、報告書に「自分は見えませんでした」もしくは「その他の審判員の助言を採用しました」とか書くのでしょうかね。誰か知っていたら教えて下さい!
ちなみに競技規則の第6条「その他の審判員」(=主に副審や第4の審判員、追加副審、VARなど…)にはこんな記載があります。

リザーブ副審を除く「フィールドにいる」審判員は、反則を主審より明らかに事象が見えている場合に主審を援助し、主審に見えなかった著しい不正行為やその他の出来事について、関係機関に報告書を提出しなければならない。作成した報告書については主審とその他の審判員に知らせなければならない。

この条文を読むと、審判団4人で事実を確認しながら、その他の審判員が報告書を書くのかなと思いました。真相はいかに…
詳しい方教えて下さい!もしくは今度、上級審判員に聞いてみます!

5.終わりに

約3ヶ月前に行われた7月11日に行われた山形vs水戸の試合後に水戸の秋葉監督がコメントしたセリフの一部です。

本当に今日はエキサイティングで、我々もドキドキしましたし、興奮しましたし、こういうお互いの感情や思いというのがぶつかり合うような、これが『this is football』だなというゲームができたので、山形さんに感謝していますし、こういうフットボールをみせることによってサポーターが来てくれると思いますし、サッカーのレベルや質が上がっていくと改めて感じる戦いになったと思います

このコメント好きです!素晴らしいコメントだと思います。私のようなフットボールが好きで審判をしているものとしては、この試合はどういう「タフでスピーディーで魅力的なサッカー」だったのかと聴くだけでワクワクします。
一方で、今回のアルトゥールシルバ選手の行為は『Is this football?』と問いたくなるような行為でした。がしかし、アルトゥールシルバ選手も人間なので、一瞬の感情で過ちを犯してしまうこともあります。これは今回のピッチ内だけの問題ではありません。最近、プライベートでの不祥事にも注目が集まります。今、サッカー界に存在している闇や膿、ネガティブを解決できるような仕組みを考えなければこの国における「football」から想起するものは人の心を動かすものでなくなってしまうのかなと思いました。
私は「人の心を動かす」、そして「それぞれで見方の異なるを楽しめる」のがFootballだと勝手に解釈しています!「揺らぎのある競技」だからこそ、こんなに多くの人に愛されていると思います。
Footballの素晴らしさを守り、発展させるためにいま一度考えなければならない時期に来ているのかもしれませんね。
ではまたー!

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