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【#refereenote 】vol.7 鹿島アントラーズ三竿選手の著しく不正なプレーについて

ごきげんよう!
シーズンも終盤戦です。コロナウイルスの影響で延期になる試合も増えてきてしまいましたね。柏、鹿島、愛媛ともはや地域やカテゴリー関係ないですね。羅患してしまった方はどうかお大事になさって下さい。
今回は土曜日の朝一番でコロナウイルス感染が陽性判定の報道が出て、試合開始3時間前まで開催が検討された首位川崎と6位鹿島の大一番からピックアップしました。
川崎はこの試合に勝てば、次節ホーム等々力で前年度覇者の横浜F・マリノスの前で優勝を決められるチャンス。一方、鹿島は天皇杯とACLの出場に向けて負けられない一戦だったが、コロナウイルスの陽性判定が複数選手に出たことでレギュラー組が隔離されるアクシデントが発生した。どのように戦うのか試されるそんな一戦。

1.今回のケース紹介

改めて、今回は明治安田生命J1リーグ第27節鹿島アントラーズ vs 川崎フロンターレ@県立カシマサッカースタジアムからのご紹介です。
1-1で迎えた90分+3の事象です。
⑴三竿選手が自陣ペナルティーアーク付近から相手陣に向かって中央付近をドリブルでボールを運ぶ
⑵相手陣に入る10mほど手前で前方にいる伊藤選手へパス
⑶伊藤選手の手前で川崎の田中選手がインターセプト
⑷インターセプトがそのまま左側にいた下田選手の足元へ
⑸下田選手が足元にきたボールをダイレクトで中央にいる大島選手へパス
⑹ボールをパスした後に遅れて三竿選手が下田選手の左足でタックル
⑺下田選手は足を抜き回転して受け身を取りながら倒れる

DAZNでは2:05:05〜から確認できます。
以下、該当シーンから始まるYoutubeリンクです。

2.5W1Hで整理しよう

では、例に倣い5W1Hで整理してみます。
・Why:著しく不正なプレー
・When:92:40(公式記録は90分+3分)
・Where:ハーフウェーラインややベンチサイドより
・Who:鹿島アントラーズ20番三竿健斗選手→川崎フロンターレ22番下田北斗選手
・What:相手競技者にタックルする
・How:三竿選手の過剰な力を用いた左足裏での遅れたタックルが下田選手の左足首付近に当たった
+判定後の態度について
主審が退場を命じた後、最初は納得しない様子も見せたが、三竿選手は判定を受け入れピッチから速やかに離れた。

3.重要事項報告書

「90分+3分鹿島アントラーズ20番三竿健斗選手の著しく不正なプレーを犯したことによる退場処分について」
90分+3分、ハーフウェーラインややベンチサイドより付近で三竿健斗選手が過剰な力を用いて、左足の裏で遅れて川崎フロンターレ22番下田北斗選手の左足首付近にタックルをして、著しく不正なプレーを犯した。
この行為により、三竿健斗選手を退場処分とした。
主審が退場を命じた後、最初は納得しない様子を見せたが、三竿選手は判定を受け入れピッチから速やかに離れた。

4. #refereenote view

主審を務めた佐藤さんはこのような報告書を書いていると思います。
今回はこのシーンにおいて、「アドバンテージを適用するべきだったのか」について書きます。
私の結論は、「アドバンテージを適用した方がよかった」です。
前提として、結果論ですし、一観客の意見ではあります。また今回、主審のジャッジはサポートされるべきです。この判定は競技規則上、何1つ間違っていません。その上で、「アドバンテージを適用してよかった」と考えています。
先に必要になる競技規則の一部を引用します。

明らかな得点の機会を除き、著しく不正なプレー、乱暴な行為、2回目の警告となる反則を含む状況では、アドバンテージを適用すべきでない。主審は、次にボールがアウトオブプレーになったとき競技者に退場を命じなければならないが、その競技者がボールをプレーする、または相手競技者に挑んだり妨害した場合、主審はプレーを停止し、その競技者を退場させ、間接フリーキックでプレーを再開する

次にプレーヤーから見た状況を整理します。
①時間は残り約1分弱、スコアは同点です。お互いにドローでも良いという気持ちは見えず最後の1秒までゴール目指して戦っています。
②以下、下田選手から大島選手にボールがつながった時の状況です。

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・ボールホルダーを含めよりボールより前方にいるフィールドプレイヤーの人数は攻撃側(川崎)4人vs守備側(鹿島)は4人です。
・サッカーにおいて、数的同数はチャンスの局面
・守備側の背後にはスペースがあり
・守備側競技者の距離感は遠い
・ボールホルダーはゴール方向へドリブルしています。
以上から、私は「残り1分で相手が10人に減るアドバンテージよりファウルを流し、ゴールを奪うチャンスを提供する方が魅力的である」と考えました。
そもそも、私はファウルを受けた側(川崎)が絶対的に利益を得るべきであると考えています。その考えに基づくと、残り時間僅かで数プレーしかできない中、これほどクリティカルな攻撃シーンが生まれるとは時間の側面からも考えにくいです。であれば、攻撃を完遂させることの方がゲームとしての優先度は高かったのではないかと考えています。
また仮に攻撃が失敗に終わっても、三竿選手がボール、プレー、相手選手に関与しようとすれば、試合を停止し、退場を命じることが許されています(間接FKから再開)。
当然、試合の空気感は微妙になるかもしれませんが、三竿選手の犯したことなので、そこで主審は責められるべきではないです。
それよりも審判的に言えば、大きなチャンスとなる攻撃の機会を提供した方がよかったと結果的には思いました。
ただ、繰り返しになりますが、これは理想論であり、主審の佐藤さんが下した判定に間違いは1つもなく、ジャッジは正しかったと思います。

5.終わりに

サッカーではしばしば、競技規則やジャッジの正しさと試合の正しさや「あるべき姿」の2つが入り混じるようなシーンがあります。今回もそんなシーンの1つだったと思います。
競技規則として正しければ、全て上手くいき試合が円滑に進むと思っている人がいたら、それは大変危険な考えだと思います。
審判としての正しさは確かに競技規則という言わば「法」で絶対的に守られています。しかし、ファン/サポーターはプレイヤーが裁かれるのを見に来ているわけではありません。プレイヤーも裁かれるためにプレーしているわけではありません。選手たちは懸命に勝利とゴールを目指し、ファン/サポーターは魅力的でワクワクするサッカーを見に来ています。
よくサッカーの現場からは「審判はルールは知っているが、サッカーをよく知らない」なんて皮肉を言われることがあります。確かに審判として絶対的に譲れない聖域を守るためにそのような批判覚悟で正しい判定を下さなきゃいけない時もあります。
それでも、主役が選手であり、ファン/サポーターである限りは審判員もサッカーを知り、最大限魅力的なサッカーを追い求める努力が必要だと私は考えています。
みなさんは今回のシーン、自分が主審の立場ならどのように判定を下しますか…?

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