感情は逸話と言う名の瞬間に支配されている
妹が飼っていたカナヘビが死んだ。
家に帰ると、誰もいない水槽に照明が照らされ、妹は抜け殻のようになっていた。
驚いたのは、私まで強い喪失感に襲われたことだ。
今日もネズミの命は自らあやめてきたというのに。
慣れ、だろうか。
いや、違う。気がする。
今喪失感が生まれたのは、エピソードがあったからだ。
妹が毎日嬉しそうに世話をしながら動画を撮っては私に自慢してきていたからだ。
昨日、ちょうど私もかわいい姿を写真に納められて、友達に自慢したからだ。
死んだと知った瞬間、昨日の記憶がすーっと脳を離れて天に浮いた感覚があった。
なんだろう、あの場面をあの時の感情で思い返すことはもうできないのだという、さみしさ。
人は、再現できないことに敏感だ。
エモさを感じる瞬間があるのもそういうことだろう。
今しかない瞬間を噛みしめたときにエモいと思うし、
何でもないはずだった瞬間が二度と来ない瞬間になったときさみしくなる。
ありがとう、カナヘビ。そして妹。
こんなこと書いてる場合じゃないんだけど、どうしても今書きたくて、書きました。