1000年の記憶
1000年前に生まれた杉の木は
今日も生まれた場所に佇む
1000年前に
土と空の間に芽吹いた杉の木の始まりに出会ったあの人は
今はもういない
1000年前に
自分の足元に杉の木の始まりをみつけたあの人の
後の後の後の後にうまれた子が
1000年前に生まれた
空と土をつなぐ杉の木を
見上げる
1000年前のもっと前から
たくさんの記憶を培ってきた土が
杉の木をそっと受け止める
1000年の間
じわりじわりと
ヒトデのように土の中に広がった杉の木の根は
絡み絡まり記憶の網となる
1000年の間
いろいろな生命のかけらを受け取った根元には
深く深く
碧い宇宙が広がる
1000年先の今日
宇宙はまだそこにあるのだろうか
1000年先の今
杉の木の始まりに出会ったあの人の
後の後の後の後の後の後のまだ見ぬあの子は
どうしているのだろうか
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