農業が教えてくれた、職員集団のバージョンアップ
〜わたしたちが綴るいぶきの物語〜vol.2
未来編
edited by 森山めぐみ
(未来編には私たちの夢や願いも織り込まれています。これから生まれてくるコトについては、一緒に楽しみにしながら読んでいただければ幸いです。編集部より)
いぶき福祉会の生活介護の事業所「ごんのしまカンパニー」は、様々な障害のため生活にしづらさを抱えている人が多くいます。ここには3つのグループがあり、それぞれが別々に活動していました。
いぶき福祉会ではそのスタートより、「働けるんだ僕たちも」を合言葉にと、働くことを大切にしてきました。はじめは、やればすぐお金になる内職作業をやってきました。それは仕上がりが決まっており正確な仕事が求められます。仕事を選んだり自分なりのやり方ではできず、やらされ感のある仕事でした。製品を台無しにする可能性もあり、取り組める人が少なかったりもしました。そして、彼らが一日やっても100円にも満たない工賃でした。
そこで、もう少し自由に仕事ができるように、そして給料もアップできるようにと自然栽培の農業を取り入れました。
そんな時、一人のスタッフが体調を崩して長期に休むことになりました。そこでグループの垣根を外して、みんなで協力して仕事をしようと、3つのグループを再編成しました。最初は今まで見なくてもよかった他のグループまで見なくてはいけないと不満が出たり、やり方が違ってぶつかったりもしましたが、仲間のために何が必要かを何度も話し合う中で、他の人のやり方から学ぶ姿勢も出てきて、だんだんにまとまってきました。
百姓には百の仕事があると言われているだけあって、それぞれの仲間に合った作業が見つかります。農業グループは自分たちだけが重労働という不満ももっていましたが、他のグループが収穫物のへたをとったり、野菜を洗ったり、袋詰めしたり、道具の洗いや手入れをしてもらえることで、お互いに感謝しあう関係ができてきました。
仲間たちにとっても、収穫はわかりやすく、大根や玉ねぎ抜きは達成感があります。水を触ることが好きな仲間は農作業の道具を毎日洗うことができます。仲間たちが主体性を発揮して好きなことや得意なことを楽しそうにやる姿を見て、スタッフも仲間たちの好きなことを見つけることが上手になってきました。そしてスタッフ同士この人はこんな力を発揮したとともに喜び合う姿が増えてきました。
いつの間にか、バラバラで縦割り意識の強かった職員集団が、お互いのことを理解できるようになり、多様な部署の仕事がこなせるようになってきました。助け合うことも日常的となり、安心して休暇をとることもできるようになりました。
しかし、やはり農作業は重労働で暑さ寒さも堪えます。そんな中、環境にやさしい自然栽培が注目され、補助金が出ることになり、種まきごんべえや乗用の草刈り機、トラクター、畝たてき、マルチ張りなど、今まで手作業で行っていたことが機械で行えるようになりました。簡単な機械なら仲間も得意げに使いこなせます。そして耕作地が増え収穫量がアップし、自然栽培のお野菜やお米は飛ぶように売れました。仲間たちの給料がアップされ、ほしかったテレビやパソコンなども自由に買うことができるようになりました。
職員集団のまとまりは、仲間のがんばりや変化を集団で喜び合えるまでに成長し、えらくて汚い作業だった農業がみんなのこころをつなぐ仕事となりました。
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