誰もひとりでは生きていけない 親なき後をつなぐバトン 〜 Interview.003
インタビュー第3回目は、いぶきの仲間の親である河出さとみさん(57歳)です。
さとみさんの長女 河出あみさん(27歳)は、岐阜特別支援学校を卒業後、18歳から第二いぶきに通い始めました。まだ27歳という元気なあみさんは、自分のルールやこだわりが強いため、今はお母さんと離れて暮らすことが難しいところがあります。そんな彼女の将来を、親としてどう案じるか、地域の中でどう生きてほしいかを語っていただきました。
聴き手・文:篠田花子(ヒトノネ)
私が居ない生活は、お互い想像がつきません
娘は預けるのが難しい子なんです。というのも、朝目覚めてから眠るまでほとんどの行動に順番が決まっていて、私にもついてまわるのが好きなので、離れることが想像できないんですね。平日はいぶきにお世話になっていますが、休日は私と一緒に過ごしています。朝起きて身支度をしたあと、ドライブが好きなので私と買い物へ行くのですが、どのスーパーで何の食材を買うのかも決まっています。いつも会うレジの店員さんが、娘が商品を手に持って歩くことを知っているので「シール貼りますね」と声をかけてくださるくらい(笑)。日課が決まっているので、私が居なくなったらどうなるか……なんてことは互いに想像できないし、考えたくもないというのが現実です。
ぎりぎりまで頑張る、が親心
自分の健康管理は特に気をつけています。ストレスをなるべく溜めない。健康診断は欠かさない。娘の生活のことを考えると、風邪をひいてもいられませんから。私の体質に似たのか、ありがたいことに娘も体が丈夫です。コロナワクチンを打ったときも熱がほとんど出なくて、とにかくめっちゃくちゃ元気。エネルギーが有り余ってるので、親からしたら「ちょっとくらい落ち着いてくれんかな…」と思うくらいです。入院もできない子なので、親子それぞれ健康でいることを大事にしています。とはいえ、これは笑い話ですが、私はあみに呪いをかけていて(笑)、「あみちゃん、ママより長生きしなくていいからね」なんて冗談で話しています。私はまだ年齢的には親なき後はリアルに考えられないし、彼女を残して…ということを今は考えたくない。ダメになる直前まで頑張ろうと思ってしまうのが親の心情です。うちの娘だけでなく、いろいろな特性をもつ方によってはショートステイさえ預けられないと聞きます。そういう場合、親は本当に休む暇がなく、将来を案じて行動にうつす余裕はないだろうなと思います。
家族で未来を共有するために
とはいえ、本当にダメになってしまう前に、娘が生きていく場所がみつかるといいなと思っています。むしろ、あみの居場所を決める前には死ねないなって。兄弟たちにも頼んではあるものの、誰に決定権を託すのか、誰と一緒に人生を描いていくのかをしっかり考えないといけないと思っています。このエンディングノートプロジェクトで、ぼんやりと描いているイメージを文字に起こせば見えてくるものがあるのかなと期待しています。たとえば、今後を家族に託すとしても、あみは女の子ですから女性特有の相談事の部分は妹にお願いし、生活の大きな決定事項はお兄ちゃんにお願いしようなど、家族と話し合ういい機会にもなりそうです。まだ私も娘も若いですから、何年後かにまた見直すことになるんでしょうね。
どんな地域にも障害をもつ人が暮らしている
私たちの場合、地域の方にいつも暖かい声をかけてもらって助かっています。たとえば、娘がまだ小さい頃、彼女がひとりで近所のお菓子屋さんに行ってしまい、「あみちゃん、歩いてきたよ」と抱っこして連れてきてもらったことがありました。ご近所の方に見守られて、さりげない援助に救われることがあります。自分たちの地域にも障害をもつ人たちが暮らしているんだなって感じ取ってもらえると、ありがたいかなと思います。親なきあともずっと、家族だけでなく、地域のなかで見守られて育ってほしいと願っています。
語り手プロフィール
河出さとみさん|岐阜市在住。長女のあみさんが第二いぶきに通い始めて9年目。9年間、元気なあみさんの送迎を毎日つづけてくれています。
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