教師と子どもの「転移」と「逆転移」【交流分析for Teacher③】
この記事は以下の記事の続きとなっております。
「交流分析 for Teacher」シリーズ記事では、学校現場の事例について交流分析を通した解釈を書いています。今回は交流分析を離れますが、筆者が体験した事例を紹介します。
生徒が「どうせ言っても無理なんでしょ!」と言って怒った時、何も考えずに反応すると「その答えは認めない」とか「静かにしなさい」とか言って教師側も怒ってしまうのが、何か"普通の反応”なような気がしました。
しかしそこで「いや、そういう反応の仕方はたぶん良くないな」とチラっと思いました。そこでなんとなく「ここでは”普通とは違う”反応をしたほうが良い」と考えて上記のような反応をしたのです。
今考えると、ここで起きていたのは「転移」と「逆転移」であったと思います。
「転移」「逆転移」とは?
私は心理学を専門的に勉強したことはありません。でも、大学時代に教職課程を学んだ時に「教育心理」の分野が一番好きで興味を持っていました。
30歳くらいで教員は辞めてしまいましたが、その時点から今の仕事に移るまでに心理のことを少しずつ学んできました。
「転移」「逆転移」という言葉を初めて知ったのは、あるカウンセラーさんの講座に参加した時のことです。
講座の中で聞いたのは以下のような説明です。
具体例を挙げると、こんな感じです。
この話を聞いて私は「何かそれ、身に覚えあるな…」と思いました。
カウンセラーさんが言う「転移」「逆転移」の取り扱い方はこうです。
この話を聞いて、私は冒頭に書いた高校でのできごとを思い出していました。
そうか、「転移」「逆転移」って、普通にあることなんだ。
もしかして、人間関係あるある?
…と思ったんですが、次の瞬間にカウンセラーさんがこう言いました。
あとでよく調べて知ったんですが「転移」「逆転移」は普通の人間関係の中で起こることではなく、カウンセラーとクライアントなどの治療関係の中で起こることだと考えられているんだそうです。
あの時うまくいったのはなぜ…?
昔勉強した教職課程の本を見てみたんですが、「転移」と「逆転移」のことは詳しく書いてありませんでした。それはそうかもしれません。カウンセラーさんもおっしゃっていたように、なんかこれって一朝一夕でできるようなことではない高度なカウンセリングのワザですよね。
でも冒頭に書いた生徒とのやりとりは、カウンセラーさんが言っていたように「怒りの下に隠れている感情(わかってほしい、助けてほしいなど)にアプローチ」ができていたからうまくいったのではないかなと思います。
奇跡的にですが…
この生徒が私に投影していた人物は誰なのでしょう?
中学校の先生か、小学校の先生か、それとも親なのか。
そこまではよく分かりませんでしたが、この生徒は誰か「重要な他者」に「自分の意向を聞いてもらえない」という体験をしたのではないでしょうか。そういう過去の体験を、高校の先生を相手に再現していたのだと思います。
でもこの時「転移」や「逆転移」のことを知識として知っていたわけではないので、これはミラクルでした。その当時私はまだそれほど経験も長くなかったので、教師として実力があったわけではないと思います。だから「こんなシーンでH田先生が言いそうなこと」を瞬間的に思いついて、言ってみたんだと思います。
H田先生の記事は管理人の別アカウントに掲載しています。
この学校にはH田先生のようなスーパーティーチャーが何人もいました。先輩の先生たちからたくさん良い影響を受けて、初めは教師として全然力のなかった私がなんとかやってこれました。
「転移」「逆転移」は精神分析の用語で、基本的には治療関係の中で起こることだと考えられているようです。精神分析というとクライアントとカウンセラーが長い期間かけて1対1でずっと向き合い続けるイメージですが、転移と逆転移もそうしてじっくり向き合う中で解釈し、活用していくのが本当なのかなとは思います。
でも、学校の先生は毎日たくさんの生徒や保護者とも向き合っていますよね。精神分析のようにじっくりとはいかないまでも、逆転移が活用できる瞬間が実はたくさんあるのかもしれません。
また「転移」と「逆転移」の扱いは、交流分析の中では少し違うようです。このマガジンは「交流分析forTeacher」というシリーズですので、次の記事は交流分析における「転移」と「逆転移」を語ってみたいと思います。
最後までお読みいただきありがとうございました。