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電車の中を走っても、目的地には早く着かない

今年初めの話、幕張に住む友人の家で、お酒とか、
おつまみを持ち込んでのパーティ、
英語でいうところのポットラック・パーティ、
フランス語でいうところの、ラ・モチコミ・ド・パーティ、
韓国語でいうところの、サケトツマミヲモチコムニダ、
ということになった。

友人の家は千葉の幕張、ボクの住む藤沢からは、
電車で二時間の結構な距離である。
もう、十二分にぶらり途中下車の旅ができる距離である。
「あらあら、阿藤さん、また、つまみ食いですか?」
な距離である。

しかし、いかなくてはならない。
なぜなら、今日のメインデッシュ、ロシア生まれの妖精、
が待っているのだから。
シャラポアの付け乳首も何のその、お取り寄せしたタラバガニ
が頬を紅く染め、待っているのだから。

ボクの用意したものはというと、実家から持ってきた、
生ハムとローストビーフ、デザートの抹茶チョコレイト。
もう、まさに酒の友、北斗の拳で言えば、酒の好敵手(とも)
といったチョイス。
友情・努力・勝利のジャンプ三原則といったチョイス。
かばんに、件の品々と、道中の退屈しのぎにと、CDを入れ、
いざ幕張へ。

道中、途中下車することもなく、何事もなく幕張に到着。
駅から、友人の家への道すがら、ビールを購入。
そして、程なく友人宅へ到着。
そこには、麗しのほんのり頬を赤く染めた、
ニクいアンチキショウが。

そして、挨拶もそこそこに、ビールを掲げ、乾杯するや、
さっそく、しゃぶしゃぶっとして、カニをむさぼりつく。
カニ、ビール、生ハム、ビール、ビール、ローストビーフと、
さんざん、食べて、飲んで、笑って、
ふと時計をみると、あっという間に、午後十一時前。
そろそろ、バイバイしなければ、家までたどり着けない
時間帯。ロスタイム3分といった具合。

バイバイもそこそこに、駅まで早足。
西田敏行のサンキュー先生のごとく競歩スタイルで。
と、駅の階段の下あたりで、電車がホームに入ってくるのが
見えた。
そこから一気にダッ~シュッッッ。
いや~、走った。走るに走った。
腕の振り、ももの上げ方、すべて完璧、気分はジョイナー。
頭の中では明石家さんまが歌う。
「草津いいとこ~、一度は~おいで~、ジョイナ、ジョイナ」
と、八十年代を謳歌したものにしか、わからない、
ひょうきん族ネタが駆け巡る。

ともあれ、改札を駆け抜けた。
筋肉番付のボタンを押すと、上からボールが
落ちてくるやつみたいに、
すごい勢いで自動改札にSuicaをたたきつけ、
すごい勢いで走りぬけた。
ホームにたどり着いたときには、電車の扉は今まさに
閉まろうとしていた。
松坂大輔ゆずりのフィールディングの良さを発揮し、
扉に左足をはさまれつつも、何とか総武線各駅停車に
ライドーン。
息を整える間もなく、電車は次の駅に到着。
そこで、快速電車に乗り換えた。

夜の快速電車は、ほどよく空いていて、ゆったり座って、
リラクシーン。
さて、ひと眠りして、起きる頃には藤沢、と、
なんて有効な時間の使い方、
やりくり上手、なんて伊東家の食卓では、
到底採用されないであろう、時間有効術を披露。

で、なんとは無しに覗いた鞄の中、何か足りない気配。
何が違う?行きと帰りで何が違う?
読売新聞日曜版の間違い探しのごとく、間違いを探してみた。
違いの分かる男、ゴールドブレンドなボク、
マナカナの違いはわからないけど、
かばんの中身ならわかるはず。

ローストビーフ→食べた。
生ハム→食べた。
チョコ→食べた。
CD→聞いている。
想い出→心の中。
定期券→あっ!ない。

探し物はなんですか?見つけにくいものですか?
鞄の中も、鞄の中も探したけれどみつからないのに・・・。
ということで、定期券を落した、多分、最初に乗った
電車の中で。

どうしよう、どうしようと、思案するも、もどっても、
終電ないしぃ、とか思って、最後の手段、一眠り。
起きたら、案外、鞄の中にもどっていたりして、

「そんな奇跡、信じてみませんか?」

「キミとなら、信じられると思う。」

と、奇跡を信じてみた。

東京駅くらいでフト目覚め、鞄の中を見た。

「奇跡ってそうそう起こらないから、奇跡なんだよ、ね。」

やはり、ない、定期、と倒置法使いつつ、うーん、と、
再び考えるも、

「まいっか、いっとけ、まいっか」

って心の中のEAST END×YURIが歌ってたので諦めて帰るの巻。

そんなこんなで、翌日、JRにTELしてみたら、
定期届いてますよ、って、軽い口調が受話器の無効から。
小さくガッツポーズ。

「どこに?」

「津田沼に。」

と、JR職員の職員然とした口調。

よりにもよって、津田沼?千葉も千葉、えらい千葉ですよ。
新宿でないの?せめて、御茶ノ水で、お願いしますよ。
ということで、泣く泣く、往復四時間の小さな旅、再び。
これで、半日つぶれてしまう。
嗚呼、これほどまでに不毛という言葉が似合うことはない、
と思う、
これほどまでに無毛という言葉が似合うことはない、
ボクがココニイルコト。

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