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うさぎの胸腺型リンパ腫の闘病おぼえがき

我が家の永遠の女王・さっちゃんさま

さっちゃん
♀/生後8か月ごろ避妊済
2014年7月12日生まれ-2022年8月16日没(8歳)
体重1450g→1180g
吾輩はニンゲンである(自認) 肝が据わってる 喧嘩が超強い

主な病歴
エンセファリトゾーン症(4か月ごろ、治療済)
急性胃拡張(4回)
胸腺型リンパ腫(2020年5月末ごろ発覚、6月に診断確定、2年2か月闘病)


リンパ腫闘病のかいつまんだ記録


記録を残すことにしたきっかけ

さっちゃんの病気が発覚してすぐに、病気のことについて調べ始めました。
うさぎの縦隔(胸部)の腫瘍についてはいくつかの種類があるなかで、
胸腺腫については闘病を記録したブログ等を残してくださっている方もいたのですが(とても参考になりましたし、助けられました!)、リンパ腫については記録がとても少なかったので、今後闘病するかもしれないうさぎさんたちにとって一つの参考となればいいなと思い記録を残すことにしました。

※患者(の飼い主)目線の覚書ですので、病気や治療内容、症状等についてはところどころ正しい記載ではない可能性や、個体差によって違ってくる箇所があると思います。正式な症例紹介ではなく闘病記ですので、あくまで一例として参考に留めていただければと思います。


発覚〜診断までの経緯

胃腸鬱滞らしき症状があり、深夜に夜間病院へ。
以前から、鬱滞ではなく胃拡張の症状で病院にかかることが多く、ガスが溜まりやすい体質なのではないかと言われていた子でした。
(もともと室温一定、食事は体重の1パーセントのペレットとひとつまみ程度の野菜以外はすべて牧草食べ放題でよく牧草を食べて生活していた子でしたが、これだけは改善することはありませんでした。同居のうさぎと比較しても明らかでした。)
レントゲン撮影の際、胃部の症状の他に、胸部に腫瘍らしきものが見えるとの指摘があり、かかりつけの病院に相談をしました。

かかりつけの病院にて、レントゲン撮影と血液検査を行い、
胸腺腫(良性腫瘍)もしくはリンパ腫(がん)であるとの診断と説明を受けました。
この時点では呼吸異常・眼球突出・食欲不振・元気消失等の症状は全くありませんでした。
(夜間・かかりつけ院共に、これまでを見ていても体質由来の部分が大きいので今回の胃拡張とは無関係であろうとの診断)

治療の方針としては、
①ステロイド単剤による緩和ケア(胸腺腫・リンパ腫共通)
 →腫瘍の一時的な縮小と進行を和らげるのが主目的。
  (リンパ腫は反応が出やすく、胸腺腫は反応が出にくい。
   リンパ腫ならできるだけ早めに投薬開始した方がよいが、
   胸腺腫の場合は最終手段に残す場合もあるとのこと)
 →副作用としては食欲増進に伴う胃腸の荒れなどがありえる
 →一度使うと耐性ができやすいため、継続服用は調整や管理が難しい。

②抗がん剤治療
 →リンパ腫であると確定した場合検討。(要細胞診)
 →効果は高いが犬猫のように有効な条件(種類や容量など)が確立していない
 →頻繁に通院し点滴による投与になるため大きなストレスがかかる
 →リンパ腫の抗がん剤治療は固形癌より難しい

ざっくり以上の説明を受けました。
確定診断のためには腫瘍に針を刺し細胞診をすることになるが、「高齢うさぎの胸部となるととてもリスクが高い(体力の問題やショック死などの可能性)ので積極的にお勧めはしない、やるとしてもより設備等の整ったうさぎ&がん治療に専門的な病院で行う方が良い」と言われました。
悩んだ末、幸い近くにあったうさぎにも癌にも詳しい病院で細胞診をしてもらうことに。
以前の病院と同様の説明を受けつつ、「まだ症状がないレベルなので、可能だと思うしやってみる価値はあると思います」とのことだったので細胞診を決断し、
胸腺型リンパ腫の診断が確定。

確定診断を希望した理由

胸腺腫とリンパ腫ともにステロイドによる治療になるため、治療自体に違いは出ないというのは前提だったため、リスクや負担をかけてでもするべきなのかととても悩みました。
ただ、もし胸腺腫であった場合、ステロイドの特性や今回のような完全な無症状の段階での投薬開始は効果的ではない可能性もあるという説明があったのと、
先生の「やるなら今やっておいた方がいい、このうさぎさんのコンディションや性格など考えて、今ならできます」というお言葉を信じて決断しました。
ここは本当にうさぎさんの性格や体質や年齢、進行具合、先生の考え方などによって全然違うと思います。さっちゃんはたまたま幸運が重なって、なんとか実現したのだと思います。

余命

リンパ腫と確定した段階で、早くて2週間程度、長くても数ヶ月とのお話でした。
ただ、うさぎのリンパ腫は珍しい(確定診断に至った事例がそもそも少ないのでは…?と思ったり)ので、前例が少ないためあまりはっきりしたことは言えないとのことでした。


闘病開始後〜一年あたりの様子

初期は二週間ごとに腫瘍の縮小具合等をみるために通院。
無症状なのもあって、少なめの量を継続的に投与する方針でした。
開始から2ヶ月ほどの間に劇的に小さくなり、心臓や気道の圧迫がみられなくなり、維持期へ。
以降2ヶ月程度に一度通院。体重も安定していました。
また、幸いなことにステロイドの副作用がいい方向に作用したのか、
5歳頃まで毎年のように繰り返していた急性胃拡張や鬱滞が全く起こりませんでした。

症状…基本は無症状。緊張状態になるとまれに瞬膜が見えるが普段は問題なし。
食欲…安定して増。
   水分があるのがいいのか、生野菜も好んで食べるようになりました。
飲水量…かなり増えました。
元気…2歳くらいの頃くらい元気で活発に。部屋中を走り回る。
排泄…飲水量が増えたので、おしっこがやや増えた程度。糞量も増。

闘病開始1年半ごろ

レントゲン上で少し変化が見え始めました。
気道は圧迫されてはいないものの、腫瘍は少し大きくなってきたとのこと。
それに伴って呼吸が少し早く、腹部の動きが少し大きくなっていました。
呼吸困難ではないものの、変化が目視で感じられるようになりました。
消費エネルギーが増えてきたのか、体重が1ヶ月につき20g程度ずつ微減。
牧草だけだと体力低下が心配だったので、ペレットを微増+週1~2回アルファルファをプラスするように。(カルシウム量が多すぎない程度)
ただし、食欲元気その他は変わりなかったので、治療内容も変化なし。

闘病開始から2年ごろ

呼吸の様子は徐々に苦しくなってはいたものの、緊急を要する呼吸困難とは程遠いといった具合だったので、引き続き緩和ケアを行なっていました。
ただし、ゆっくりとは言え進行していたので、ステロイドに対する耐性がついてきて効きが徐々に悪くなってきていたのだと思われます。

6月初旬
レントゲンにて胸水の存在を確認。
穿刺で抜くことが難しい場所と量なので、水を抜く処置は難しい。
利尿剤での水抜きはこのケースだとあまり効果的ではない可能性があり、
また循環器系に悪影響が出る可能性も指摘がありました。
いずれにしても呼吸困難など緊急性を帯びてくるまでは保留に。

8月初旬
レントゲン上は6月から変化もなく、普段の様子も元気と食欲を維持していたので
これまでの投薬治療を継続する方向で様子見。

急変

8月10日ごろ
食欲の波が少しありましたが、鬱滞というほどでもなく、牧草はしっかりと食べつつも、日によってペレットを残したりがっついたりという振れ幅が見られました。
元気は相変わらずありましたが、思えばこの波は予兆だったような気もします。

8月14日
午前中は普段通りにしていましたが、
夕方ごろから腹部の不調を訴える特有の姿勢(※腰を引いてお腹を床につけ身を捩る感じ)を見せ始め、経験的に「これは胃拡張だ!」と判断し即時救急病院へ。
リンパ腫のことも含めて総合的な診察と処置をしてもらう方向で相談。
レントゲンや血液検査、エコーの結果、やはり急性胃拡張でした。
急性胃拡張はショック状態になって助からないケースも少なくない重篤な症状なので、直ちに静脈点滴をするほかないが、もとが健康な子とは違い、胸水や腹水が比例して増えることにつながり、リンパ腫の方に悪影響が出る可能性があるとの説明を受けました。
とても治療の相性の悪い症状がバッティングしてしまったという感じでした。

ただ、いま胃拡張の処置をしなければまず助からないだろうという緊急度、一時的に回復してからのリンパ腫の治療効果の可能性を加味し、翌朝まで入院して処置→かかりつけに引き継ぎという方向を選択しました。

8月15日ー16日
胃拡張の状態はだいぶ改善され、昼頃には一時的に食欲をみせたり回復の兆しもあったのですが、やはりリンパ腫由来の胸水や腹水の影響が避けられなかったようで、深夜にかけて徐々に呼吸状態が悪化していきました。
酸素ルームの中ですら呼吸ができていない状態で病院まで連れて行くのは難しいと病院にも相談の上判断し、そこから9時間ほど懸命に頑張ってくれましたが、最後は私の部屋で「撫でてほしい」と催促し、撫でられた直後息を引き取りました。

胃拡張かリンパ腫か

改めて振り返って、胃拡張の処置を優先したこと、また処置にあたってくださった両病院の先生方のご判断は正しかったのだと思っています。
結果的に亡くなってしまいましたが、あの時あの処置と判断がなければ、家で目の前で最後を看取ることはできなかったと思っています。
胃拡張の症状が出る前に私が少しでも何か気付けていたら…とは思わずにはいられないのですが、それが難しいことはこれまでの経験で自分でも承知しています。
また、高齢・癌患者(免疫抑制治療中)であることから、胃拡張以外でも些細なことで急変する可能性はずっと先生からも聞いていました。2年2ヶ月という長い闘病生活の方が、正直信じられない奇跡だったのだと改めて思います。

最後に

やっといてよかったことメモ

①シリンジ訓練
 圧倒的にこれ!
 さっちゃんの闘病生活が長く平穏だった大きな要因はこれだと思っています。
 シリンジに普段から投薬以外で慣らしておいたおかげで、
 シリンジを見せると反射的に自分で咥えてくれるため、
 抱えたり保定したり暴れて誤嚥させてしまったりというストレスやリスクが
 全くなかったのは絶対に大きかったです。
 (吸水ボトルと同じ感覚でシリンジから水を飲むことを覚えてもらってました)

②生野菜を食べる習慣づけ
 これはうさぎさんの個体差もあると思いますが、
 生野菜を食べてくれるとペレット食べない(栄養低下・体力低下)などの時の
 保険としてすごく重宝しましたし、体調も安定しました。

③定期通院(※定期的なレントゲン検査)
 さっちゃんの場合は胃拡張のせいもあったので、
 自ずとレントゲン撮影の機会が多くなっていたのですが、
 そのおかげでリンパ腫の早期発見ができました。
 リンパ腫含め、がんは早期発見と早期治療によって予後が変わるそうなので、
 健康優良児すぎてレントゲン撮影の機会がない
同居うさぎ(れお)は
 毎年うさドックを受けるようにしました。

④酸素発生器の導入
 1年半ごろから、酸素発生器と酸素ルームを導入し、
 呼吸異常がさほどない段階からもケージにずっといる夜だけ使っていました。
 それがあったおかげで、いよいよ呼吸困難という時に慌てずにすみました。

⑤食事・体重管理
 肥満やいわゆる生活習慣病の状態にあると、普段は気にならなくても
 手術や検査、治療成績、予後にもとても影響が出るのだそうです。
 実際なくなる直前の検査では、年齢や病気や投薬状況の割に
 肝臓の値が非常に良かったからこそ持っているのだと言われました。
 今回、細胞診が可能である、と判断された理由の一つには、
 肥満でないこともあったようです。
 胃拡張の件もあったために心を鬼にして厳しい管理をしてきて、
 もっと甘やかしてもよかったかなあと思ったりしたこともあるのですが、
 今回のようなケースを考えるとやっぱりそれでよかったなと感じます。

やっておいた方がいいなと実感したことメモ

①セカンドオピニオン
 今回お世話になった病院3院ともに、
 大変素晴らしい先生方に診ていただけたなと思いました。
 ただ、やはり病院ごとに方針や得意分野などが少しずつ違うことや、
 通院にかかる時間や距離、闘病するうさぎ自身への負担なども考慮して、
 セカンドオピニオンを受けてよかったと思います。
 快く紹介や引き継ぎをしてくださった先生方のご対応に感謝しています。

②異変を感じた時の動画撮影
 診察時だと、緊張や恐怖によって症状が逆に治まってしまう…
 ということが結構ありました。
 とくにさっちゃんは先生にも毎回指摘されるほど超忍耐強かったので
 呼吸の苦しささえ診察時は誤魔化してました。ほんとうに逞しかった…。
 普段の様子や説明しにくい変化を見てもらうために、
 動画を撮って診察時に見てもらったりしました。


覚書は以上です。

発覚してから最長でも数ヶ月だろう、と宣告された余命の期間を越える頃まで、不安で押しつぶされながら毎日泣いたり血眼になって病気について調べたりしていたとき、たまたま発見した、癌を乗り越えたとあるうさぎさんの記録のブログに勇気づけられた身です。それからは、自分にできることを最大限することに集中しQOLを維持することを最大目標にすると決め、泣いて狼狽えて不安を与えるよりも、限りあるさっちゃんとの生活を一緒に全力で楽しもうと考えるようになりました。なくなる瞬間まで、さっちゃんの方がわたしの数万倍毅然としてました。本当に感謝しています。
この記録が少しでもリンパ腫闘病に対して勇気を持つ役に立てたら嬉しいです。

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